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38・これは、犬?


ククリ×ケルベロスのお話


後半は37話と少し、繋がっています

とある夏の下旬


今日も暑いなー。とか思いつつ我楽多屋でバイト中です。蓮さんは2時間前に買い物に行くと言って以来帰って来ません。もちろん止めたんだけど、どうしても用事があるんだとか言って行ってしまいましたね。


ついでに言うと、今の我楽多屋にはお客様がいません。ついさっきまでは、常連のおばさま達がいたんだけど、夕飯を作る時間だとか言って帰ってしまいました。旦那がどうのこうの、息子が結婚しないとか、隣の奥さんがあーやこーや。聞いているのは楽しいですが、たまに話題を振って来る時があるので答えるのが難しい。やめてー、まだ私は15歳の娘ですー。でも、お客様とのコミュニケーションは大事なので、しどろもどろになりながらも答えているのが現状。


「おねぇちゃん!見て見て!」


突然、後ろから声をかけて来たのはククリちゃん。私は、どうしたの?と言いながら振り返ると。


「庭で子犬拾ったよ。可愛いでしょ?」


両手で犬の胴体を掴んで私に見せてくれました。その子犬は黒いツルツルの肌で愛らしく潤んだ赤色の目で私を見つめて来ます。大きさは子犬のチワワよりも少し大き目の感じかな。


「うわー」


うわー、可愛いには可愛いんだけど。何で頭が3つもあるんだろう。普通の子犬って頭は1つだよね。私の見間違えかな?でも、何度も(まばた)きしても頭が3つから1つになることはなかった。これって、犬じゃなくてケルベロスだと思うんだけど。


「ねっ!可愛いよね」


確かに、頭が3つを除けば、人懐っこい子犬に見えるけど、ケルベロス。しかもそれが蓮さんの家の庭で見つかったみたいだから、ある意味すごいよね。


「うん、可愛いよ」

「はい」

「おぉ⁉︎」


なんと、ククリちゃんはケルベロスを私に押し付けて来たではありませんか。つぶらな瞳が特徴で可愛いけど、怖いよ。だって、仔犬ながらにしてその威圧感はヤクザのボス級。見た目に惑わされてガブッて手を食べられそう。


「ほらほら、抱いてあげて?」


私は恐る恐る、ククリちゃんから渡さたケルベロスを抱きます。見た目よりも重くて、腕が痛い。


「ハッハッ、ハッハッ」


ケルベロスが尻尾をこれでもかって程、振っています。ここら辺は普通の犬とは変わらないんだね。そう言えば、犬の祖先はケルベロスなのかな?いや、犬の祖先はオオカミだった。やだ、私ったらまだ、動揺してる。


「ククリちゃん、パス」

「おいでー」


ケルベロスはククリちゃんの腕の中で騒がず、鳴かずお利口に尻尾を振っていました。あぁ、今はこんなに小さいけど、数年後には大きくなるんだろうね。そして、この可愛らしさからかけ離れた風貌に変わるのか。そう思うと、ケルベロスって残念だよね。


「その、ケルベロスお庭で遊ばせたら?」

「うん!行ってくる」


そうして、ククリちゃんはケルベロスを抱えたまま、蓮さんの家の庭に行きました。


「人生初のケルベロスかぁ」


知り合いのお坊さんのお寺にも柴犬がいたな。よく、参拝に来た人には吠えないけど、幽霊や妖怪に対して、吠えていたのが懐かしい。今でも、元気かな。きっと、あの柴犬のことだから長生きしてそうだな。


チャララーチャラララララーン


おっと、ここでポケットの中に入っている携帯が鳴り響きました。画面を見ると、そこに表示されていたのは蓮さんではなく、メリーさん。ん?今日は金曜日でもないし、夜でもない。ちゃんと私と約束を守って金曜日の夜以外は電話をかけてこないから、今電話が鳴るのはおかしい。もしかして、メリーさんに何かあったのかな?


「もしもし、宮川です」

『萌香ちゃん!やっと、やっと』

「ど、どうしたんですか⁉︎」


電話の向こうのメリーさんはかなり焦っている様子。でも、声が嬉しそう。何があったのかな。ここは詳しく聞かないとね。


『私、ついに音楽番組に出ることが決まったの』

「ということは、デビューって事ですか?」

『うん、路上ライブやってて、そしたら、音楽事務所の人にスカウトされて、そこから練習とかして、やっと、やっとテレビ番組にも出られて』


とにかく、嬉しそう。もっと詳しく話を聞くとメリーさんは妖怪の世界で今人気のアニメのOPを歌ったらしく、それが、爆発的にヒット。透き通るクリアボイスが私の耳を刺激します。


「おめでとうございます」

『うん、仕事との両立で忙しいけど、私、頑張るわ!あの時、私の背中を押ししてくれてありがとう』


そこで、電話は切れてしまいました。いやー、ついこの前、メリーさんに説教 (まが)いなことをしたのに、それからもう日が過ぎている。時間が経つのは早いね。あと少しで夏休みも終わりだ。

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