35・あの子を捜して国外に
カッパ×妖精のお話
今回のお話はいつもよりも短いです
登場人物?登場妖怪は久しぶりのカッパ
話し方が『〜ッス』の体育会系のあいつです
11話と12話に出て以来出番が少なかったので
忘れられているかも……
とある夜のハワイのビーチにて
「い…いないッス」
現在、カッパは夜のハワイのビーチで、海に映る月を見ながら憂いていた。その理由は、7月下旬頃に自分を助けてくれた女の子を捜して日本全国を捜したが見つからず、海外までに足を運び捜したが、未だに見つかっていないからだ。
「アイルランド、ベルギー、ネパール、カナダ、キューバ、オーストラリア、ケニア。うぅ、どこを捜してもいないッス」
海を見ながら泣いていると、辺りに小さな光が集まって来ていた。カッパはその光をよく見る。
「蛍ッスか?」
「蛍じゃねぇよ、俺らは妖精だ」
カッパの問いかけに答えたのは、近くにいた、僅か3cmにも満たない男の妖精だった。そして、その光は妖精の羽から出ていた。
「おぉ、なんと。妖精だったッスか」
「そうそう、この尖った耳を見てみろ!蛍じゃねぇだろ?」
妖精はカッパの目の前に来ると、被っていた緑色の帽子を外し、金髪から覗く大きく尖った耳をカッパに見せる。
「間違えてごめんなさいッス」
「それでよろしい」
妖精は満足そうに頷き、薄ピンクの瞳を大きく見開きながらカッパの事を観察するように見た。
「俺はレシオンって言う名の妖精だ。お前の名は?」
「ワシは、カッパと言うッス」
「カッパ?初めて聞いたな。外から来たのか?」
「日本から来たッスよ。日本、言い換えるならジャパンッスね」
「ジャパンか!」
その場にいた他の妖精達はジャパンについて語り始めた。
「スシ」
「キョート」
「サムライ」
「ニンジャ」
「ゲイシャ」
たくさんの妖精が口々に言うものだから、辺りはガヤガヤとうるさくなった。そんな中、レシオンはカッパに質問を投げかける。
「日本から来たってことは観光か?」
「違うッス。ワシは今、人捜しをしているッス」
「へぇ、どんな人なんだ?」
「それはそれは、もう小柄で可愛い女の子で品があって優しくて、ワシを助けてくれた命の恩人なんッスよ!」
「命の恩人なら捜さねぇとダメだな」
その瞬間、カッパは意識がなくなったように、体育座りのまま横に倒れた。
「おい!大丈夫か?」
「それが、まだ見つからないッス。うぅ、どこを捜しても、会えず。うぅ」
「ほぉ」
レシオンは顎に指を当てて何かを考えているようだ。そして、指を鳴らすとカッパに一つの提案をした。
「ここで出会ったのも何かの縁だ。俺がその女の子を捜してやる」
「えぇ!本当ッスか!」
「まぁ、住んでいる地域しか分からねぇが」
「ありがとうッス」
「とりあえず、カッパの記憶を覗いて探すから、頭貸せ」
レシオンはカッパの額に自分の額をくっ付ける。そして、カッパと女の子が出会った時の記憶を覗いた。
「この子か」
「どうッスか?」
レシオンはカッパの額から離れると目を閉じて神経を澄ませた。すると、レシオンの体から真っ赤な粉が溢れ出る。
「だっ、大丈夫ッスか⁉︎」
「レシオンは能力使うと、赤い粉を出すの」
カッパの肩に乗っていた妖精が教えてくれた。
「見えた。場所は、日本」
「日本だったんッスか!」
「看板が見える。あれはヒノエチョウ」
「ヒノエチョウ……火ノ江町⁉︎」
「分かるのか」
カッパは首が千切れる勢いで縦に振った。
「ありがとうッス!」
「おーう。ほら、ジャパンで言うと善は急げだ」
「お礼は」
「いらねぇよ」
レシオンは歯を見せて笑う。
「早く会いに行ってやれよ。それじゃぁ、俺らは、これから仕事だから」
レシオンに続き、その他の妖精達が月へと向かって飛んで行った。
「ありがとうッスー」
カッパはレシオン達が見えなくなるまで手を振った。
「よーし!今、会いに行くッスよー。待っていて下さい、ワシの嫁さーん!」
カッパの大声は、ハワイの海に響いた。
* * *
カッパが叫んでいたその頃、火ノ江町にある八幡荘の203号室に住む萌香は。
「くしゅんっ!あれ、誰か噂しているのかな?」




