31・お父さんからの手紙
8月中旬、もうそろそろ下旬になる頃
我楽多屋のバイトが終わって家に帰ってくるとポストには中身がパンパンに入った封筒が入っていました。宛先は私に、そして送り主は私のお父さんからです。メールじゃなくて手紙⁉︎とりあえず、家に入ってから見よう。
急いで、部屋に入りバイトに行く用のカバンをベッドに放り投げ、手紙を読み始めます。カバンがベッドに座っていた鬼さんに当たったのは気にしない、気にしない。
「うわっ、多い!」
封筒を開けると、中には10枚の手紙と、6枚の写真が入っていました。写真は後から見るとして、まずは手紙です。
最初の6枚には、私が元気にしているかとか、ご飯は食べているかなどの安否確認の内容でした。そして残りの4枚を読もうとした時、6枚目の最後の行に、ここから先は、写真を見てから読んでくれと書いてありました。
1枚目、イタリアにあるトレヴィの泉とサン・ピエトロ大聖堂の写真。
2枚目、イタリアの国旗と共にお父さんがイタリア人の仕事仲間と共に働いている写真。この事から、お父さんは今、イタリアで仕事をしている事が分かりますね。
3枚目、これまた会社の仲間と一緒にどこかのお店で仲良く、ピザを食べている写真。美味しそうだな。
4枚目、さっきと同じピザを食べている写真だけど、今度は人数が増えています。多分、飲んだり食べている途中で他の人と仲良くなったんだね。
5枚目、激しい銃撃戦の写真。
6枚目、病院のベッドで寝ながらピースサインをしている写真。
「って、えぇ!」
「うわっ!」
一体何があったの⁉︎しかも写真には日付が載っていて5枚目までは6月の半ばまでの写真で、最後の6枚目だけは、ついこの前の日付の写真。突然の事にパニックになりながらも、私は自分を落ちつかせて、残りの3枚の手紙を読むと、そこにはすごく重要な事が書いてありました。
仕事仲間と一緒にピザを食べた後、どうやら、マフィア同士の銃撃戦に巻き込まれたみたい。その際に携帯が壊れ、私からの連絡が取れなかったとの事。そして、お父さんは巻き込まれた銃撃戦で重症になり、やっとこの前、ようやく意識を取り戻したそうです。でも、早く見積もっても全治は、今年の12月までかかるみたい。
うん、ちょっと待って、色々とツッコミたいことがたくさんあるんだけど。文章から見ると、お父さんは写真に載ってある日付の、6月の半ばから今の今まで意識が無かったってことだよね。どうしよう、今更ながら、血の気が引いてきた。
「萌香そっくり」
そう、このサラサラの髪は現在刑務所中のお母さん譲りで、顔のパーツ、特に顔の作りとたれ目は、お父さん譲りなんです。って、今はそれどころじゃなくて、お父さんが心配です。手紙の続きを読みますと、手術の方は問題なく終わったから、後は回復に向かうのみで、携帯は今すぐに変えられないから、当分の連絡は手紙で行うそうです。
「はぁ」
それにしても、まさかお父さんが病院のベッドで寝ているとは思いもしなかったな。とにかく、無事で何よりです。あっ!お父さんに手紙の返事をしないといけないね。便箋は家に無かったから、明日、買いに行こう。
『鬼さんの観察日記』・『夜の我楽多屋』
その他、203号室の人外さんに出てくるモブ妖怪たちが主役のお話を新連載として投稿しました。
題名は『203号室の皆さん』
投稿するのは不定期ですがよろしくお願いします




