3・委員長は視える人
今回は後書きに委員長と友達のゆいちゃん
のキャラ容姿設定を載せてあります
只今、窓際の前から3番目に座って6限目の授業を受けています。今日の6限目の教科は古典、おじいちゃん先生の声が眠気を誘って私は半分寝かけ中。
「これをことごとく掃き捨ててんげり。残れる枝、散れる木の葉をかき集めて、風すさまじかりける朝なれば〜」
イントネーションも心地良くて、あぁもうダメ。ギブアップ、残り5分で授業が終わるけど別にいいよね。
目を閉じかけたその時、私は驚きのあまりに今までの眠気が嘘のようにどこかへと、飛んで行きました。だって、おじいちゃん先生の後ろの黒板から、目と鼻の位置がくぼんで口だけがにやぁって、笑っている大きな顔が出て来るんだよ!
見た目はのっぺらぼうの口ありバージョンを想像すれば分かり易いかな。にしても、この学校は幽霊とか妖怪がたくさんいるよね。今日の昼休みだって、中庭に2体くらい黒い影がいたしさ。黒い影だとあれは多分、幽霊とかの類かな。
でも、ここは私お得意のスルースキルで視なかったことにしよう。
ガタンッ!
後ろの方で誰かが倒れる音がした。どうせ寝かけてた子が机からずり落ちたんだろうな。
「委員長、大丈夫かっ!」
委員長?確か私のクラスの委員長は男子だよね。しかもおじいちゃん先生の慌てぶり、これは相当なことが起こったのかな。後ろの方を振り返ると委員長が床に倒れてました。えっ、熱中症?でもまだ6月の半ばだし、それに今日はあまり暑くないよ。
「委員長、どうしたんだろ?」
「んぅ、おはよう。どうしたのみんな後ろ見て。あれ、また委員長倒れたの?」
「ゆいちゃん、おはよう。ってまた?」
「うん、もえちゃんが転校して来る前からよく倒れてたの。だからほら、水戸部君と芹沢君が委員長を運んでるでしょ。あれはもうお決まりなことだよ。」
友達のゆいちゃんが指を差す方には丁度、水戸部君と芹沢君が委員長を担いでいた。
「貧血とか?」
「うーん、詳しい事はよく分からないんだ。聞いても曖昧にしか答えてくれなくてね」
今みたいに話している時でも、さっきの、のっぺらぼうもどきは教室をぐーるぐると優雅に回って窓から外へと出ていった。
* * *
HRが終わり、下校の用意をしていると担任が誰かのカバンを私の方に差し出してきた。
「宮川、すまんがこのカバンを保健室にいる委員長に渡してくれないか?」
「いいですよ」
「ありがとうな」
まだ、部活もやってないしこの後、特に用事がないから断る理由はないよね。でも、1人じゃぁ、心細いからゆいちゃんにも一緒にって頼んだけど、どうやら今日の放課後に数学の補習があるみたいでダメだった。
ほのかちゃん、あやのちゃん、めいちゃんにも声を掛けたけど、どうやら部活だったり追試や補習があって、全員に断られてしまった。
しょうがない、1人で行くか。
「失礼しまーす」
保健室のドアを開けて中に入ると保健の先生はいなくて代わりに窓際にあるベッドに横になって窓の外を見ていた委員長がいた。
あっ、メガネ外してる。委員長ってメガネを掛けている時よりも外している方がかっこいいな。こういう人って稀にいるよね。メガネ外したら美形でしたって、まさに委員長がそれかも。
「委員長、カバンです」
「えっと、あぁ宮川さんか。わざわざごめんね。持って来てくれてありがとう」
「いいですよ」
委員長は外して隣の机に置いてあったメガネを掛けて起き上がった。実のところ私は、クラスのみんなが委員長って呼んでるから、委員長の本名を知らないんだよね。でもこの際だから委員長で通しちゃお。
「委員長、体は大丈夫ですか?もしかして体弱いとか」
「体は弱くないよ。これまで風邪とかあまり引かなかったし、部活もバスケ部なんだ」
「じゃぁ、貧血とかですか?」
「ううん、それも違うんだ」
ゆいちゃんが言ってた通り、倒れた理由を聞くと曖昧にしか答えてくれないっていう話は本当だった。曖昧にしか答えられないってことは答えられない答えなのかな。
委員長はため息をついてまた窓の外を見る。黄昏る委員長はかっこいいな。写真に収めたら高く売れるかも。
冗談ですよ?私も委員長と同じく窓の外を見ると。
あっ!
私と委員長の体が同時にビクついた。なぜなら、今日の6限目に視た、のっぺらぼうが保健室のドアをすり抜けて入って来る姿が窓ガラスに写っていたからだ。
「またかっ!」
委員長の声に反応したようにのっぺらぼうが窓ガラス越しに私たちを見てきた。そして、ゆっくりと近づいてきたではないか。何をしているんだ委員長さんよぉー!
んっ?またってことはもしかして、委員長、私と同じ視えるのかな。
なんにせよここは、のっぺらぼうがどこか行くまでなんとか凌がなければいけない。委員長はまだガラス越しにのっぺらぼうを見てるし、あぁもうここはやるしかない。
「委員長、ごめんね」
「えっ、宮川さん?っとぉ!」
私は委員長のベッドに乗って上からメガネを奪い目を塞いで押し倒した。つまり、お恥ずかしながら、私は委員長の上に馬乗りとなっているわけですよ。しかも委員長の目を目隠しをしてね。
「えっ、何して」
「委員長はSMプレイがお好きですか?」
「エッS、って宮川さんなに言ってるの⁉︎」
委員長、顔が真っ赤ですよ。
「私、委員長の名前知らないんですよね」
「今度は名前⁉︎」
「あっ、分かりました。委員長の名前はセキセイ・イインチョウですね」
「セキセイインコみたいな名前にしないでくれ!」
「じゃぁ、ロベルト・ガリア・ダクトォーン・イインチョウはどうでしょう?」
「僕は日本人だよ!」
「一人称は『僕』なんですね」
「えっ、そこ⁉︎」
「この際ですから、もう名前はセキセイ・イインチョウでいいと思いますよ?」
「勝手に改名しないでくれ!」
「委員長、もういいですよ?」
「いいってなにが?」
「だから、もう行きましたよ」
「行ったって、あれか!」
「のっぺらぼうもどきの事です」
私は委員長にメガネを返して馬乗りの状態から降りるとベッドの隣にあったパイプ椅子に腰掛けた。
「えーと、その。宮川さん、ありがとう」
「いいですよ。それに委員長がなんで倒れたかが分かりましたし。委員長も私と同じで、あの、のっぺらぼうもどきを見て気絶したんですよね」
「宮川さんも視えるの?」
「そうですよ」
委員長は驚きを隠せないらしい、しきりに瞼をパチパチしてる。そして、私も委員長が視える事に驚き中。まさかこんなところに私と同じ視える人がいたなんて
「宮川さんは、ああいうの視て驚かない?」
「驚きますけど、相手に気付かれないようにしてますよ。だって幽霊とか妖怪は私達が視えたことに気付いたらさっきみたいに近寄ってきますよね」
「うん、確かに」
「でも、さっき私がやったみたいに話を逸らして、さも、見えてませんよオーラを放っていると幽霊とか妖怪はどこかに行くものです」
それが16年間、生きてきて分かったこと。
「僕は、2年前、祖母が亡くなってから視えるようになったんだ」
「私は、物心ついた時からですよ」
「早っ!えっ最初に視たものってなんだった?」
「それはですね……」
私と同じ視える人がいて驚きと嬉しさが混ざりに混ざって、つい長話をしちゃった。気付けば夕方の6時前。その間に保健室の先生は1度も来なかった。
おいおいおい、保健室の先生がいなくてどうするんだよ。もしかしたらこの間に怪我をした生徒が来るかもしれないだろ?
「幽霊とかは出来るだけ視たくないんだよね」
「それなら」
私は委員長が掛けている黒縁メガネを外した。再びイケメンさんのご登場です。
「メガネを外した方がいいと思いますよ。鏡とかレンズって、幽霊とか妖怪を写しやすいって知り合いのお坊さんが言ってました」
「それは初耳かも」
「それに、委員長はメガネを外した方が、かっこいいですよ?」
おや?委員長の頬が綺麗な赤色に染まっていくね。私、委員長の顔を赤くするような言葉を言ったかな?
「宮川さんは天然なのかな?」
「それは、どういう意味でしょうか?」
「まぁ、まぁそれは置いといて今更なんだけどさ、なんで同級生なのに敬語なの?」
「えーと、委員長だからかな?」
「委員長だからって」
「女の子、幽霊、妖怪、小さい男の子なら敬語じゃなくて普通に話せますけど、うーん、どうしてでしょうか?男子になると敬語になってしまうのですよ」
「それって、意識すれば直せるものかな?」
「はい多分ですけど」
私にもなんで男子になると敬語で話すのかよく分からないんだよね。別に男性恐怖症でもないし
「せめて、僕と話す時は敬語やめてもらえるかな?なんか距離があるように思えて」
「分かりましっ、じゃなくて。うん!わかったよ」
危ない危ない、危うく敬語になりそうだったよ。それに委員長とは話が合うし友達になりたいな。
「委員長、今更だけどいいかな?」
「なに?」
「私と友達になってくれる?」
「えっ、もう友達と思ってたの僕だけだった!」
「いいのっ!」
「いいのって、うん改めてよろしくね」
驚かれました。おぉやった委員長が友達になってくれるって言ってくれた。すごく嬉しいな。今まで男子と友達になったのはこれが初めてだ。
帰りは途中まで委員長と一緒に帰った。同じ視える者同士話すことは久しぶりだな。それに委員長に友達だって言ってもらって嬉しかったな。
【村瀬 唯】
・萌香の友達
・身長158cm
・髪型はボブカット
・瞳もまた髪の色と同様、つり目
・胸が大きい
・柔らかい口調が特徴的
【委員長】
・名前はこれからの物語で発表
・男子生徒
・身長170cmの細身
・黒髪、黒目でメガネを掛けている
・メガネを外すとイケメンさん
・萌香と同じ幽霊や妖怪が視える
・クラス委員長
・主にからかわれる、そして、ツッコミ役