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29・お泊まり会①

とある土曜日の夕方


「おじゃましまーす」


元気よく玄関を開けて中に入って来たのは、お泊まり道具を詰めたカバンを持ったゆいちゃんでした。


「どうぞー」

「萌香の友達?」


そんなゆいちゃんを私と鬼さんでお出迎え。鬼さんは突然の訪問者に驚いています。そうだよね、今までこの部屋に入れたのは大家さんくらいしかいないもんね。それで、えーと、なんで今日、ゆいちゃんが私の部屋に泊まることになったかと言うと、それは今日の夕方のこと。




* * *




今日は、ゆいちゃんと一緒に大型ショッピングモールでお買い物をしてきました。私が買ったものは夏祭りで取った金魚の水槽です。買い物を終えた後は、アニメイトに行ってアニくじを引いたり、漫画や小説を見てきました。ちなみに、アニくじを2回引いたら、1つは缶バッチで、もう1つはキーホルダーでした。普段から節約しているから、これくらいの自分へのご褒美はいいよね。


「この、缶バッチとキーホルダーカバンに付けようかな」

「それいいよ!まだたくさんあるんだし通学カバンにも付けたら?」

「そうだね」


今、私が持っているカバンは、バイトに行く時に使うカバンです。それにしても、夕方なのに蒸し暑いな。


「今日、もえちゃんの家に泊まってもいい?」

「急だね!」

「実はさ、お母さんとお父さんが今日、家に帰ってこなくて、私1人なんだよね」

「お仕事が忙しいとか」

「うん、それに私ひとりっ子で家に誰もいなくて」


うーん、誰もいない部屋に1人は寂しいよね。それに、手を顔の前で合わせて頼み込まれたら断れないよ。ゆいちゃんは私みたいに霊感とかないから、鬼さんの事は見えない。それなら大丈夫だ。


「うん、いいよ」

「じゃぁ、今から家に帰って用意してくるね!それからもえちゃんの家に行くから」

「でも、私の家どこにあるか知らないよね?」

「もえちゃんの家なら、あやのちゃんから聞いたから大丈夫だよ」


あやのちゃん、一体いつ、ゆいちゃんに教えたのかな?


「あっ、夕飯は一緒に作ろう!」

「いいね。じゃぁ買い出しは私の家に来てからにしようか」

「うん、それじゃぁまた後でね」


そう言って、ゆいちゃんと別れました。



〜回想終わり〜


* * *




家に来たゆいちゃんと一緒に商店街でカレーの具材を買ったあと、いよいよ料理開始です。鬼さんが私ではなくゆいちゃんの事をガッツリ観察しています。そりゃそうだよね、なんせ始めてのお客様だもん。


「もえちゃん手際いいね、主婦だ」

「そうかな?」


いや、ただ単にジャガイモとニンジンを切っているだけなんだけどね。一方、ゆいちゃんはと言うと、涙目になりながら玉ねぎを切っていました。


「ゆいちゃん、代わりに玉ねぎ切ってるから、冷蔵庫からカレー粉だしてくれるかな?」

「うん」


涙を拭きながら冷蔵庫にあるカレー粉を探しています。確かに玉ねぎは目に染みるよね。


「もえちゃん、冷蔵庫に生クリームがいっぱいあるよ。これどうしたの?」

「それは、商店街にあるケーキ屋のお姉さんから貰ったり、バイト先で貰ったして増えたんだ」

「1、2、3…6パックっ!」


そうです。1パックは和菓子屋二階堂からの頂き物で、その他の5パックは商店街にあるケーキ屋のお姉さんからの頂き物です。実は、ここに住んでから食料品とかを商店街で買っているため、常連さんとなった私は、揚げ物を売っているおばちゃんからコロッケをサービスしてもらったり、魚屋では値引きをしてもらっています。


「カレー粉あった」

「よし、煮込もう」


カレーを煮込んでいる間に、ご飯を炊飯器で炊きます。


「もえちゃん、一緒にお風呂入ろう」


ピクッ

鬼さんがお風呂という単語に反応しました。これは、あれだな。


「ゆいちゃん、ここのお風呂は狭くてね、2人同時は難しいんだ」

「無理かー」

「うん、じゃぁ、先にお風呂入っていいよ」

「えっ、良いの?」

「いいよいいよ」


そうして、私はゆいちゃんをお風呂へと向かわせました。本当は2人同時に入れる程の広さはあるけど。その、私のつるぺたが気になるし、何より鬼さんの事が気になります。


案の定、鬼さんはゆいちゃんの後を追って、そろそろとお風呂場に行くではありませんか、これは私が最初にここの部屋に来た時と同じです。覗きは許さない!


「あっ、こんなところにハエがいたー(超棒読み)」

「うぐっ!」


テレビのリモコンを片手に持ち、鬼さんの前に先回りして、思いっきり、リモコンをみぞおちに突いてやりました。もはやハエを叩く姿勢ではないよね。鬼さんは痛みで床に転がっています。追い打ちをかけようかどうか迷いましたが、相当痛かったみたいで、動きません。そして私は後悔していません。ここは心を鬼にしないといけませんからね。


「もえちゃん、どうしたの?」

「なんでもないよ」


さて、ゆいちゃんはお風呂に入っているし、後は鬼さんが覗きをしないかどうか見張っているだけ。


「いったぁ」


覗きをする鬼さんが悪い、自業自得です。

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