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27・夏祭り④

本日は2本だてです。

後書きに、鬼さんとの七夕のお話を載せています


人通りの真ん中で話すのは、他の人の迷惑になるので、少し参道から離れた場所に移動しました。


「おねぇちゃん、可愛いね」

「ありがとう」

「宮川さん、その子は知り合い?」

「この子はククリちゃん」

「君もククリが視えるのかい?」

「えっ、視えるのかいって」


あっ、この感じ前にもあった気がする。確か、私が初めてククリちゃんに会った時と同じだ。それに蓮さんの質問も懐かしいな。委員長は、まるであの時の私みたいに色々と考え込み中、頭に上にたくさんの疑問符がみえるよ。


「それはつまり」

「ククリは座敷童なの!」

「座敷童⁉︎宮川さん、それ本当?」

「本当だよ」

「お兄ちゃんもククリの事が視えるんだ。わーい、おねぇちゃんと同じだ」


ククリちゃんは自分の事を視える人が増えて嬉しそう。委員長はまだ驚いているのかな、石みたいに固まってる。カッチーン、コンコン、ツンツン。


「セキセイ・イインチョウ」

「はっ!僕は鳥じゃない」


どうやら、セキセイ・イインチョウって言う言葉は委員長を動かす魔法の言葉だね。それから私は委員長に、蓮さんとククリちゃんの紹介をしました。私がバイトしている事は委員長も知っているから、紹介しやすかったな。


「委員長はおねぇちゃんと同じ学校なんだね」

「委員長……うん、もう委員長でいいよ」


本名を言うのは諦めたみたい。でも、ここまで来たら委員長は委員長のままでいいよね。蓮さんは委員長を我楽多屋で働かないかと誘っているし、ククリちゃんは私が持っている金魚に夢中です。そう言えば委員長が8時から本殿で神楽が始まるって言ってたよね。まだ大丈夫かな?気になって携帯の時計を見ると8時まで残りわずかとなっていました。急がないと、本殿でやる神楽に見遅れちゃう。


「委員長、急がないと神楽が始まっちゃうよ」

「えっ、もうそんな時間」

「蓮さん達も一緒に神楽見に行きませんか?」

「僕たちはこれから、用事があってね」

「ククリも蓮の友達にあってくるの」

「そうだったんだ」

「一緒に行けなくてごめんね」

「いえいえ」

「それと、委員長君も頑張ってね」


委員長が頑張る?バイトの勧誘の話から一体どんな話に変わっていたのかな。気になることろだけど、本当に神楽が始まる時間に間に合わなくなるから、私達は蓮さんとククリちゃんとここで、別れました。


本殿に近づくに連れて人はさらに増えています。もうここは人の海ですよ。うわ、人酔いしそう。というかもう人酔いしてるかも。


「宮川さん、こっち来て」

「うん?」


委員長に手を引かれて、私は人混みの中を抜け出しました。それでも、委員長の足は止まりません。どこに向かってるのかな?


「委員長、どこに行くの?」

「本殿が見やすい場所、少し遠いけどいいかな」

「了解です」


参道の辺りにある鎮守の森に入ってしばらく進むと、少し開けた場所に出ました。すると、そこは本殿を真横から見られる場所でした。すでに本殿の前はたくさんの人で溢れかえっています。


「委員長、こんな良い場所よく知ってるね」

「小さい頃、ここの夏祭りに来た時、道に迷ってていたら、またまたここに辿り着いて知ったんだ」


道に迷うことは案外悪くはないかな。本殿の前には前左右から見られる大きな土台がありました。その辺りに人が集まっていたり、土台の上には、和楽器を持った人達が複数見えるので、おそらく、そこで神楽はやるのかな。あっ、もう少しで始まるね。


「演奏が始まった」

「巫女さんが出てきたよ。あの髪ってウイッグかな?綺麗な白髪だね」


腰まである綺麗な白髪を揺らしながら、音楽に合わせて出て来た巫女さんは、顔を能面で隠していましたが、それでも美人さんと分かるほど綺麗な人でした。おまけに身長が高いです。羨ましい。


「おぉ」


巫女さんが優雅に踊り舞うたび、あの綺麗な白髪も揺れます。そして、巫女さんが持っている鈴を鳴らすたびに、辺りの空気が清浄されるように感じます。


シャンシャン、シャンシャン


その綺麗な動きに思わず見惚れてしまいました。流石、土地神様に使える巫女さんですね。もう完璧です。ふと、辺りを見回すと、そこら中にいた幽霊達が巫女さんの鈴の音によって浄化して行くではありませんか、巫女さんパワー凄い!ついでに小物の物の怪達は鈴の音を聞いて、涙を流していました。もしかして、感動したのかな。というか浄化しないんだ。


「んっ?あれは」


何気なく空を見ると、本殿の上、つまり瓦屋根に誰かがいました。月明かりで逆光になっているので見にくいですが、よーく目を凝らして見て見ると、小物の物の怪や妖怪とは違う、オーラを放っている人ではない者が瓦屋根から人を見下すような姿勢で、私たちのことを見下ろしていました。


妖怪?いや違うな。妖怪だったら、あんな綺麗なオーラが出てないし、それに、今、踊っている巫女さんと同じ綺麗な白髪で狐のような耳が頭の上についています。あっ、尻尾もあるみたい。ここから見える特徴はこれくらいかな。


さらに、瓦屋根の上にいるガン見していると、なんだかあの狐の正体が分かってきました。多分、あの狐の妖怪じゃなくて神様だと思う。それもここの土地神様ね。だって、あの気品溢れる姿とオーラがその証拠です。女物の着物を着ている事から、性別は女かな。


「委員長、上見て上」

「えっ、何?」

「あの、瓦屋根の上に土地神様いるよ」

「どこどこ」

「ほら、あそこ」


しばらく時間が経っても、委員長は土地神様の姿を見ることは出来ませんでした。


「ゴメン、分からないや」

「いやいや、委員長が気にする事はないよ!」


そういえば、土地神様を見ることの出来る人は滅多にいないって、知り合いのお坊さんから教えてもらったのを思い出しました。正確には霊感が強いか弱いかのどちらかだけど。


神楽を踊っている巫女さんを見つつ、瓦屋根の上にいる土地神様を見ていると、見下ろしていた土地神様と目が合いました。いや、合ったのかな?自分が合ったと思っても相手が気付かなければ合った事にはならないよね。うーん、よく分からないから、ここは無難に会釈はしておこう。


「宮川さん、何してるの?」

「土地神様に挨拶しているの」


頭を上げると、土地神様はまだ私のことを見ていました。そして、口元を高く引きつらせると、陽炎のようにゆらりと消えてしまいました。神様って気まぐれですよね。さて、土地神様もいなくなったので、私は巫女さんの神楽を見ることに専念しましょうか。






* * *







神楽が終わると、巫女さんは能面を取り深々とお辞儀をして、本殿の中に入ってしまいました。やっぱり、能面を外した巫女さんはモデルをやっていますか?と質問したくなるくらいに美人さんでした。


「巫女さん綺麗だったね、って委員長!」

「みや、宮川さん」

「ちょっと待ってて、今払うから」


隣を見ると、またも委員長が小物の物の怪や妖怪達にくっ付かれ身動きが取れない状況でした。本日2度目は可哀想なのですぐに手で払ってあげましたよ。


「宮川さん、ありがとう」

「委員長って、物の怪に好かれやすいのかな?」

「どうだろう」


すると、ここで聞き覚えのある声が聞こえてきました。声のする方を見ると、そこは狛犬が置いてある場所から聞こえてきました。この声は、ゆいちゃん!それに男の人の声も聞こえてきます。


「水戸部か」

「委員長、行こう」

「そうだね」


草を掻き分けて、委員長と一緒にゆいちゃん達の元へと歩き始めます。あっ、委員長の友達の水戸部さんと芹沢さんもゆいちゃん達と一緒にいるね。


「おーい!」

「あっ、もえちゃん!…と委員長?」

「委員長!お前、宮川さんと手ぇ繋いで」

「水戸部、探したんだぞっ」

「委員長のくせに宮川さんに触るだなんて卑怯者!」

「はっ?」

「委員長!もえちゃんから離れなさい」

「ちょっとゆいちゃん!委員長をいじめないの」

「おぉ、凄いことになったな」

「本当だね」

「二人とも、やめなさい」


ほのかちゃんとめいちゃんと芹沢さんは私たちを見て、楽しそうに笑っているだけで、あやのちゃんは、おろおろしながら、委員長に食いかかるゆいちゃんと水戸部さんの止めを頑張っています。


ぐちゃぐちゃだけど、なんだか楽しいかも。おっと、また本殿の上、瓦屋根から視線を感じました。気になって、見上げると、あぐらをかいて、土地神様が私のことを見下ろしていました。今度は確実に私と目が合っています。神様だし悪いやつではないので、一応挨拶。本日2度目の会釈です。


顔を上げると、まだ土地神様が私のことを見下ろしていました。ここで、目を逸らすのも悪い気がするので、じーと見つめあいます。


「もえちゃん、聞いてる?」

「えっ、何?」


土地神様に気を取られていてゆいちゃんの話を聞いていなかった。また目を瓦屋根に向けると、土地神様はいなくなっていました。


「これから、みんなで屋台とか行こうって話なんだ。もえちゃんはどうかな?」

「それいいね。賛成だよ」

「よしっ!宮川さんも良いって言ってるし、みんなで遊ぶか」


水戸部さんの言葉に全員が賛成しました。さっき委員長と一緒に屋台を見回ったけど、大勢で行くのも楽しそうだよね。それに、まだ行っていない、金魚すくい屋にも行かないと。ふふふ、腕がなりますよ!


「宮川さん、金魚すくいの出入り禁止はもう、やめてね」

「委員長にバレた!」


委員長に苦笑いされました。時間はまだたくさんあります。よーし、これから夏祭りを楽しむぞ!

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


【後書き】

今日は7月7日、七夕です

七夕のネタを投稿するのを忘れてて、活動報告に載せようかと考えていましたが、悩んだ挙句、後書きに投稿しようと思い付きました。

時間的には

7・イワシ&柊の葉で実験

8・萌香の夏風邪

の間です


それではここから先は七夕のお話です

短いですよ


〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


【7.5・七夕の夜】


今日は7月7日、七夕の日です。七夕と言うことで、大家さんから貰った、小さい竹を窓際に立て掛けて置きました。そして、カーテンを開けて外を見ます。


うーん、天候は土砂降りの雨、これでは七夕とは言えませんね。というか七夕の日って大抵は雨か曇りだよね。


「雨かぁ」


鬼さんも残念そうに私の隣で眉を下げています。うん、わかるよその気持ち。晴れて欲しい時に晴れてくれないってショックだよね。しかも七夕という大事なイベントだし、尚更だよ。


「晴れますように〜」


鬼さんが手を顔の前で合わせて祈ってますが、さらに雨は酷くなるばかり、鬼さんが祈ったせいで、雨が酷くなったんじゃないかな?まぁ、それは置いといて。


せっかく大家さんからミニ竹と短冊を貰ったから、使わないわけにはいかないよね。私は筆箱からボールペンをだして、短冊に願いを書こうと考えました。何を書こうかな?


「うーん」


悩んでいる隣で鬼さんは私の短冊を覗いています。そりゃぁ、何を書くか気になるよね。でも、隣、しかも近くで見られたら、書きにくいことこの上ないですよ。


「おもしろそう」


おっ、どうやら鬼さんも短冊に興味が湧いたみたい。さりげなく、もう1つの短冊とボールペンを鬼さんの目の前に差し出すと、鬼さんは私と同じように、ボールペンを持って考え込みました。というか今の行動は私が鬼さんの事を視えるって分かるヒントみたいなものだったけど。でも、鈍感な鬼さんだから気付かないか。




どれくらい時間が経ったのかは分かりませんが、だいぶ時間が経ったのは確かかな?鬼さんはさっきからボールペンでペン回しをしたり簡易テーブルにコンコンと叩いたり、相当悩んでいるご様子です。


「よしっ!」


無難に、これで良いや。私が書いたのは、健康第一、それを笹の葉に付けます。


「萌香らしいな」


後ろを振り返ると、鬼さんも短冊に願い事を書いていました。そして、その短冊を私の短冊の隣に付けます。何気に鬼さんの願い事を見ると短冊の一面に大きく願い事が1つ書かれていました。


しかも、綺麗な字ですね。これは、鬼さんの観察日記にも書き留めておかないといけないな。


えーと、鬼さんが書いた願い事はっと。

『萌香が、僕のことを視えるように』

だそうです。……えーと、私が想像していた願い事とは全く180度違うので驚いています。まさかこんな願い事だったとは。


部屋に飾るのも悪くはないけど、やっぱり竹は外で飾るのが一番だよね。そう思ってベランダの窓を開けると。


「あっ、晴れた」

「星空が」


さっきの土砂降りがまるで嘘のように止んで、今は、この大きな夜空に満点の星々が輝いています。


「あっ、天の川だ!」


鬼さんの発見に私も天の川を探すと、ありました。星がたくさん集まって1つの川となっています。それにしても、晴れてよかったぁ。


こうして今年の七夕は、鬼さんと一緒に短冊に願いを書いて夜空を見上げて幕を閉じました。

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