26・夏祭り③
委員長と一緒に、射的屋で景品をゲットしたり、金魚すくいで大量に金魚を取りまくって、お店の人から出入り禁止になったりと、楽しい時間を過ごしました。現在、私と委員長は長い参道の脇道にある人気のない場所で、屋台で買った、たこ焼きや綿あめや唐揚げを食べています。
「委員長って射的、上手なんだね」
「夏祭りに来ると必ずやるからさ、それにシューティングゲームとか好きだし」
「銃を両手に2つ持って、腕をクロスさせて撃ったら、かっこよかったのに」
「この歳で、それは恥ずかしいよ!というか、その考え方、中二病!」
中二病の委員長、想像したら笑えてきた。おっとと、手には金魚すくいで取った2匹の金魚がいたんだ。袋から落とさないようにしないと。すっかり金魚のことを忘れてたかも。
「それにしても、金魚すくいで、まさかの出入り禁止になるとは思わなかったな」
「本当、委員長が取りまくるからダメだったんだよ」
「いや、出入り禁止になったのは宮川さんだからね」
「そうだったかな?」
でも、まぁ、確かにあれはやり過ぎたかな。久しぶりにやるもんだから、ついと力が入って本気でやったんだよね。そしたら、案の定、取り過ぎちゃって金魚はいなくなりーの、お店の人からは出入り禁止だって言われーの大変だったな。
でもちゃんと、金魚は2匹くれたよ。
「参道の真ん中あたりまで来たと思うけど、まだ、あいつらには会わないな」
「本殿の方にいるのかな?」
「本殿かぁ」
委員長は眩しそうに目を細めながら本殿の方を見ました。私は本殿からの神々しい光に慣れたみたいで、初めの頃よりかはだいぶマシになってきましたね。
「流石、土地神様だけあって、力が強いんだろうね。色々な物の怪が集まって来るし、何よりあの神々しい光」
「土地神様の力が強いと、物の怪とか集まってくるの?」
「うん、知り合いのお坊さんから教えてもらった事なんだけどね。土地神様の力が強いと、物の怪とか幽霊とかが集まりやすいし、何より本殿からの神々しい光が象徴みたい。それに土地神様を視れるのは霊感が強い人だけなんだって」
辺りを見回すと、もふもふといた白い毛みたいな物の怪が本殿の方に向かっていたり、空を浮遊する火の玉や幽霊も本殿の方に向かっています。
「成る程」
「それに、お盆の時期も重なってるから、今は特にだよね」
空を飛ぶ幽霊や火の玉は、まるで流れ星の様です。でも火の玉が流れ星だなんて、それはなんか嫌だな。
「神楽もあるからかな?」
「神楽?」
「あぁ」
委員長は腕時計の時間を確認しています。
「今は7時48分だから、あと、12分」
「神楽と何か関係あるの?」
「8時から本殿でここの巫女さんが神楽を踊るんだ」
巫女さんですか!巫女って赤袴の可愛い女の子のあれですか。しかも神楽って、それは見たい、絶対に見たい。だって神楽を生でみるのは初めてなんだもん。
「水戸部とか村瀬さん達もいるかもしれないから、行こうか」
「うん」
私は、食べていたたこ焼きを完食して、委員長が差し出してくれた手を取り、歩き始めました。委員長ってエスコート上手いよね。さりげなく、食べたゴミを持ってくれているし。申し訳ないから、ゴミはもらおう。
「ゴミくらい別にいいよ」
「委員長に持たせるのは悪いから」
そんなやり取りを、何回かしましたが、委員長がなかなか譲ってくれませんので、ここは委員長にお任せしました。
* * *
人混みの中、はぐれないように委員長と手を繋いで歩いていると、後ろから誰かに突撃されました。
「おねぇちゃん!」
「萌香ちゃんも来ていたんだね」
後ろを振り返ると、そこにいたのはククリちゃんと蓮さんでした。




