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25・夏祭り②

どうしましょ。と言うかここはどこ?人混みの中から少し外れて空いているスペースに移動して辺りを見回すと、左側に本殿が見えて、右側にあやのちゃんと一緒に来た入り口の鳥居が見えた。そうだね、大体、本殿と鳥居の間くらいかな。


それにしても火ノ江神社の参道は長いな。とりあえず、本殿の方に行ってみるか、もしかしたら、ゆいちゃんやあやのちゃんに会えるかもしれないからね。そのためには、まず、この人混みに入らなければなりません。うわぁ、飛び込みたくないな。でも、行かないと。ここは女の度胸で飛び込みたした。


ドンッ

「うわっ!」

バタンッ

「おっとと」

足を踏み

「ごっ、ごめんなさい!」

足を踏まれ

「痛っ」

頭にぶつかり

「し、身長差ぁ」


そして、着きました……鳥居に。

あれー、本殿に向かったはずなのになぁ、どうしてだろう、なんで最初に戻ってるの?これはゲームじゃないんだからさ。そんなことを思っても状況は変わりません。いやぁ、本当に人混みは怖いわ。


「ふぅ、どうやって攻略しようか」


鳥居の柱の近く、一人で唸っていると、反対側の柱に私の知った顔がありました。あれは、委員長だ。委員長は浴衣姿じゃなくて白いシャツに膝までのジーパン、そしてメガネを掛けていました。意外ととオシャレさんなのですね。この前、ショッピングモールで会った時もこんな感じでしたし。


気付いてもらおうと私が手を振っても委員長は無反応、向かい合いにいるんだから、何かしら反応はあるはずなんだけどな。よくよく見ると委員長の顔は青ざめていて、おまけに、ピクリとも動きません。人混みで少し見にくいけれど、この距離なら気付くはず。どうしたんだろう。


「委員長ー」


声を掛けながら委員長に近づくと、なんで委員長がピクリとも動かない理由が分かりました。それは、委員長の肩や背中、いや全身に小物の物の怪が取り憑いていたからです。白くてふわふわした毛玉みたいなやつが肩に乗っかっていたり、足には犬?猫?両方にも見える、すねこすりが纏わり付いていたり、とにかく大量の物の怪が委員長にくっ付いていましてね。


これなら、動けないわ。幸いにも、今、委員長に取り憑いている小物の物の怪は人に害をもたらす悪い奴らじゃないので安心です。が、委員長は今にも失神しそうな勢い。


「委員長、百鬼夜行作り頑張って下さい。私、委員長の事に陰から見守って応援しています」


親指を立てて、応援したら、委員長がぷるぷる震えながら大量の物の怪と一緒に私の方を見ました。おぉ、やっと気付いてくれましたよ。


「宮川…さん。これ、どうすれば…いいかな?」

「諦めましょう」

「そんなっ!」


私の冗談を本気にしてしまうとは、余程切羽詰まってたみたい。可哀想だから、私は委員長の周りに取り憑いていた物の怪を手で払いました。すると、物の怪はすぐにどこかへ行ってしまいました。めでた、しめでたし。


「宮川さん、ありがとう」

「いーよ。いーよ。困ってる時はお互い様だもんね。それと、委員長?委員長は今日の夏祭りに1人で来たの?」

「いや、水戸部とか芹沢とかと一緒に来たんだけど、はぐれて今は1人なんだ、連絡しても繋がらないし、困ってここで考えていたら、いつの間にか大量に囲まれていて」


なんと、私と同じでした。よかったぁ、ここにも仲間がいたよ。迷子は私、1人だけじゃなかったよ。


「私もゆいちゃん達とはぐれたの」

「宮川さんもだったんだ」

「うん、これからどうしようかと考え中」


委員長に会ったのは良いとして、肝心のゆいちゃんやあやのちゃん達に会わなければ意味がないよね。うーん、本当にこれからどうしよう。


「もし、良かったら、村瀬さん達を探すついでに、屋台とか一緒に見回らない?」

「んっ?」

「いや、別に嫌だったら、それはそれて良いんだけどさ」

「確かに、まだ屋台とかもゆっくり見てないし、ヨーヨー釣りとか綿菓子とか食べたい、あっ、屋台といえばたこ焼きだよね」

「うっ、うん」

「委員長、ナイスです!一緒に見回りましょう!」




* * *



と言うことで、長い参道を歩きながら。委員長と一緒に屋台を見回ることにしました。もちろん、ゆいちゃんやあやのちゃん達を探すことは忘れていませんよ。


「みてみて、あのお面ほしい」

「しょうがないなぁ」

「夏祭り、楽しいね」

「また来年も一緒に来ような」

「約束だよ、忘れたりしたらダメなんだからね」

「忘れるわけないだろ」

「もー」


普通の男女達なら、こんな風にお話をしますが、視える私たちの会話は普通の人とは違いました。


「みてみて、委員長、提灯の中に提灯お化けが紛れているよ」

「本当だ、いたね。最近はお盆だからかな、メガネを外してても、変なものがたくさん視えるんだよ」

「お盆だからしょうがないよね」

「あっ、人魂も飛んでる。というか空見て空」

「んっ、あっ凄い。人魂とか幽霊がたくさん飛んでいるね」

「ある意味、綺麗だよな」

「うん、花火よりも綺麗かも、人魂のくせにやってくれるぜっ!」

「人魂のくせにって」


委員長が笑いました。委員長スマイルは良いですね。写真に収めたいくらい、かっこいいですよ。


「委員長、あそこに、たこ焼き屋があったよ」

「買う?」

「綿菓子も、お好み焼きも」

「とりあえず、お店に並ぼうか」

「うんっ!って、あっ」


余所見をしてたせいか、私は人とぶつかって、よろけてしまい、人ごみの中に飲み込まれそうになりました。


「宮川さんっ!」


その時、委員長が私の名前を呼んで、私が伸ばした右手を掴んでくれました。


「委員長、ありがとう」


お礼の気持ちも含めて、とびっきりの笑顔でありがとうと言ったら、委員長は驚いたのか顔が赤くなっていました。


「また、人混みに流れそうだから手はこのままでいいかな?私、流される自信があって」

「手はこのままで良いよ。はぐれないようにしないといけないからね」

「委員長!男前です」


私は、はぐれないように、委員長と手を繋ぎながら、人混みの参道を一緒に歩きました。

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