表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/150

148・鬼の隠し子 ~幽鬼~

妖稚園のお迎えにお父さんが来たと思ったら、なんとお父さんは熱があって風邪をひいていた。僕はお父さんと二人暮らし、お母さんは生まれた頃にお父さんと何かあったらしくて今は一緒に住んでいないから看病するのは僕だけになる。


「僕が看病するよ!」

「ありがとう。でもな幽鬼はもう少しで妖稚園のお遊戯会だろ?だから、風邪を移したくはないんだ」


それからお父さんはすごく唸った後、僕にこう言った。風を一晩で治すからその代わり少しの間だけ知り合いの家に泊まってくれないか?って、最初は嫌だって泣いて言ったんだけどお父さんから風邪を移さないためだと何度も言われて仕方がなくそのお父さんの知り合いの家に行くことになった。


「明日までには絶対に治す。だから今晩だけ頼む!」

「分かった」

「お父さん、早く治ってね」

「あぁ、もちろん。ゆうき、ちゃんと良い子にしてるんだぞ」


お父さんの知り合いはソウキと言う鬼だった。歳は分からないけど見た目はカッコ良くてテレビで言っていた爽やかイケメンみたい。でも、お父さんよりかはカッコ良くないけどね。


「ソウキの家はどこ?」

人間界(むこうのせかい)にあって人間の女の子と一緒に暮らしているんだ」


家に行くまで僕はソウキとたくさん話した。僕の名前の由来とかソウキが言う人間の女の子、というか彼女のお話。まぁ、ほぼ彼女の話ばかりだったけど。その話を聞くうちにソウキの彼女はどんな人なのかなって気になってきた。でも、いくらお父さんの知り合いのだと言っても家に行くことに少し不安はある。


「ただいま」

「たーま」


玄関を開けて少ししたら小さな女の子が出てきた。この人がソウキの言っていた彼女?それにしても優しそうでかわいい小さなお姉ちゃんだね。部屋の中に入ると僕は猫の形をした座布団の上におろされてお姉ちゃんの名前を聞いた。



「私は萌香」


もえか、かぁ。それから、僕はソウキともえかが話しているのを聞いていると突然、もえかがエプロンのポケットからピンとゴムを取り出して僕の長い前髪をあげてくれた。前からうっとおしいと思っていたけど、お父さんは忙しいし、切ってってお願いできなかったから、こうして、もえかがやってくれたことが嬉しい。


「よろしくね」


頭を撫でられながらはっきり見えたもえかの笑顔につられて僕も笑う。すると、もえかは僕のほっぺをぷにぷにと突き始めた。いつもならお父さんや妖稚園の先生にやられても嫌だって突き飛ばすけど、もえかにやられても全然、嫌じゃなくて、もっとぷにぷにしても良いよって言いたくなってきた。


「もえか」


少し甘えた声で名前を呼んで見上げるともえかは口を手で押さえてから僕を抱き上げる。


「ゆうき君!好きな食べ物は何?お姉ちゃん作っちゃうよ!」


家に着くまでソウキから聞いたけどもえかは料理が得意らしい。それに、好きな食べ物を作ってくれるって言われたから、僕はオムライスって答えた。


「ぼくもやる」

「いやいやっ!ゆうき君は鬼さんと遊んでて良いんだよ?」

「ダメ?」


何度もお父さんと一緒に作ったことがあるから出来るんだよ?かわいく首を傾げてお願してみるればもえかはまた、口を手で押さえてオーケーしてくれた。




もえかと一緒にオムライスを作るのはお父さんと一緒に作るのと同じくらい楽しかった。教え方も妖稚園の先生より上手だし、なにより料理をしている時のもえかは凄い料理人みたいでお父さんよりもかっこいい。


途中でソウキも手伝ってくれたけど。

うん…妖怪にも得意不得意があるんだ。


「はい、あーん」

「あーん」


上手くできたオムライスをもえかにあーんするともえかも僕に食べさせてくれた。ここに来る前は不安があったけど、もえかと一緒にいるうちにそんな不安はなくなっていて気が付けばもえかの真似をしていた。


「ゆうきずるい。萌香、オレにもあーんして」

「鬼さんは子供じゃないでしょ?」

「でしょ?」

「ねー!」

「ねー!」


僕があまりにも、もえかと仲良くしているからソウキが拗ねた。だからと言って僕はもえかの側を離れるわけがないんだけど。それに、ソウキは僕よりも大人なのに子供みたいに拗ねるなんてちょっと面白かった。


「萌香、冷たい」

「だって鬼さんならいつでもあーんが出来るし」


あっ、また口を手で押さえて顔を赤くしてる。照れてるもえか、かわいいな。ソウキを見ると口をへの字にしてにやけていた。ソウキも、もえかも本当にあつあつだね。これが、えーと、バカップルって言うんだっけ?


「もえか、あつあつ」

「ゆ、ゆうき君!」


もえかは怒っているように見えるけど全然、怖くない、反対にかわいいなって思う。




* * *




夕ご飯を食べた後、もえかはお風呂に入ると言ったから僕も一緒に入ると言った。別にそれくらい良いのにソウキはまた拗ねたと言うかダメって怒られた。それから、何かよく分からないけれどぐたぐた長い理由を並べて、どうしても僕ともえかを一緒にさせないようにしてきた。



「男女差別ですか?うわー、サイテー。考え古くさー」

「ふるくさー」

「別にゆうき君は男の子でもかわいいし、そんな疚しい事を考える鬼さんとは違うのですよーだっ!もう、子供は子供同士で入りましょうねー」

「ねー」


もえかに手を繋がれてお風呂場に行こうとするとソウキは僕の腋に手を入れて抱き上げた。もう!ここまで来てまだ僕ともえかの邪魔をする気なの?ソウキはいつも、もえかと一緒にいられるんだろ?それなら、別に今日くらいいいじゃん!僕ともえかは今日しか一緒にいられないんだからねっ!


「オレ、ゆうき君と仲良くなりたいから」

「はい、見え透いた嘘をつく鬼はさよなら」


今度はもえかに抱っこされてお風呂場に行く。もえかの肩に顎を乗せて後ろにいるソウキを見た。すると、ソウキの顔は今にも泣きそうで複雑だった。あーあ、もえかに嘘をつくから罰が当たったんだよ。



もえかは服を脱いで体に長いタオルを巻きつけて、僕は腰にタオルを巻いてお風呂に入った。もえかに頭を洗ってもらったから僕はそのお礼にミニタオルを使ってもえかの背中を流そうとする。


でも、もえかは初め、やらなくても良いよって言ったけど僕がどうしてもってお願いすると困ったような嬉しそうな顔で僕に背中を向けてくれた。


「もえか、ほそいよ?ちゃんとごはんたべてるの?」

「大丈夫だよ」

「えー」


ボディソープを付けて泡立てたミニタオルでもえかの背中を洗いつつ、もえかの綺麗な肌に触る。初めは柔らかく突つくだけだったけどそのうちにくすぐったり、触るか触らないくらいの力加減でもえかが怒らない程度に触る。


「やっ、くすぐったい。ちょっダメ」

「もえか、やわらかいね」

「ふぁっ」


そして、背筋を人差し指でなぞった時、もえかから女の子らしいかわいい声が出た。すると、勢い良くお風呂場のドアが開いてソウキが邪魔をしに来た。


「おいっ!ゆゔっいた」

「バカ!勝手に覗くな!この変態鬼ガッ」


漫画に出て来るようにソウキは後ろへ転ぶ。すぐにドアを閉めたもえかは唇を尖らして僕に怒った。もちろん、理由はさっきの事。僕は言い訳にもえかの背中を洗っただけと言ったら。


「ゆうき君?」


ドス黒いオーラを出しながら笑顔で名前を呼ばれた。その、オーラに僕は怖くなってすぐに謝る。うん、わざとやったしこれは僕が悪い、でも、もえかがかわいい声を出すから悪いんだよ。


「ごめんね」

「よろしい」


お風呂から上がると僕はもえかに膝抱っこしてもらいながらテレビを見ていたけど、だんだん眠くなって来て、僕はもえかの膝の上で目を瞑った。


なんだか、もえかがお母さんみたいに思えてきた。僕にはお母さんがいないけど、もしいたらきっとこんな感じなのかな?暖かくて柔らかくてなにより安心出来る。そう思いながら僕は眠った。




* * *




朝起きると僕はソウキともえかに挟まれてベッドで寝ていた。いつの間に寝たんだろうと思ったけど今はそんなのは関係ない。ソウキは別に良いとしてもえかの寝顔がかわいかった。


「もえかかわいい」

「だろ?」

「あっ、ソウキおはよう」


ちょうど、今、起きたらしいソウキにおはようと言って、僕とソウキはベッドからおりる。そこからは時間が過ぎるのが早くて気が付けばもう、もえかとさよならする時間になっていた。もう、これで会えなるなると思うと悲しくなる。


「ゆうき君、またついでも遊びに来てね」

「うん!」


違う、これでお別れなんかじゃない。もえかが言ってくれたことに僕は嬉しくなった。あと、ソウキにも、またここに来て良いのか聞いてみると、当たり前だと答えてくれた。


ピンポーン


部屋のチャイムが鳴る。あっ、お父さんが迎えにきてくれたんだ。もえかとソウキと一緒に玄関に出てきてドアを開けるとそこには元気になったお父さんがいた。と言うことはあと少しでお別れしちゃうな。そうだ!良いこと思いついた。これなら、次に会う時まで僕のことを忘れないでくれるよね?


「うちの息子がご迷惑をおかけしました」

「いえいえ」

「もえかっ!」

「なーに?どうしたの?」


最後に僕はもえかの名前を呼ぶ。

すると、すぐにしゃがんで僕と同じくらいになったもえかに僕は。


「ちゅっ!」


ほっぺにキスをした。そして大きな声で顔を赤くしたもえかとわなわなと震えているソウキを見て言う。


「昨日はありがとう、楽しかった。またいつか遊びに来るね」


うーん、今度はいつになるのかな?よし、次に会える日まで楽しみにしてようっと。こうして僕は迎えにきてくれたお父さんと手を繋ぎながら203号室を離れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ