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14・ホラー映画

ゆいちゃんと映画を見に行った後は、ウィンドウショッピングをしたり、フードコートでお昼を食べたりと土曜日を満喫。そうしているうちに、時間はあっという間に過ぎて只今、午後4時。


「うっ、悪魔が私を連れ去る時間になってしまった」

「ゆいちゃん、何かに目覚めたの?もしかして、中学生がかかる不治の病とか」

「違うよう。もうすぐで、お母さんが向かえに来て私を塾に送り込もうとしているの」


つまり、この後にある塾が嫌なんだね。ゆいちゃん頑張れ。ショッピングモールの西口からでると、目の前に赤色の車が止まっていました。なんとなく、ゆいちゃんの顔色を伺うと。


「はぁ」

「あの赤い車ってゆいちゃんのお母さんの車なんだね?」

「うん」


ビンゴです。


「ゆいちゃん。塾、頑張ってね!ゆいちゃんはやれば出来る子だよ。ファイトー」

「もえちゃん、ありがとう。私をやってくるね」


戦場に行くかのように背景がメラメラと燃えて気合が入ってます。ついでに守護霊さんもゆいちゃんを応援しているようです。




ゆいちゃんを見送った後、私も家に帰るため駅に向かいます。久しぶりにホラー映画をみたら、他のホラー映画を見たくなったな。確か、駅までにレンタルショップがあったはず。そこで、ホラー映画でも借りようかな。





* * *




夕飯を食べ終えて食器の洗い物をしながら、テレビを見ていると、私のベッドの上に座って、携帯を弄っている鬼さんの姿が見えました。あれ、あの携帯、私のじゃないよね?パジャマのズボンのポケットを触って確認。ありました。


私の携帯はここにあるし、よーく鬼さんの携帯を見ると青色のカバーがしてあったから違うか、私はピンク色のカバーだからね。それにしても、いつの間に携帯を持ってたの?今まで使っていたところは見ていないから、誰かから貰ったとかかな?


とりあえず、鬼さんの観察日記に書き留めておこう。




* * *





私が借りたホラー映画は、ある事件をきっかけに学校に忍び込んだ数名の高校生が、人ではない者に追いかけられながら、ドアや窓が開かない閉鎖された学校からなんとか出るというお話。

DVDをセットして再生ボタンをポチッとな。あら、鬼さんもベッドから降りてきて私の右隣に座りました。これから何が始まるのかな?という顔をしています。


クーラーを少し低めに設定して、本当は部屋の電気を消してDVDを見たいけど、目に悪いから電気は付けておきます。暗い中で見ると雰囲気が出るから好きなんだけどね。


さぁ、始まりました。

誰もいなくなった夜の学校で、とある男子生徒が学校に忍び込んだ、そのまま男子生徒は職員室に向かいます。しかし、その時、職員室から赤ん坊の泣き声が聞こえてきました。慌てて引き返そうと男子生徒は来た道を戻ろうと後ろを振り返る。次の瞬間、廊下の奥に人影が見えました。男子生徒の頭は真っ白、足がガクガク震えて動けません。その人影はゆっくりと男子生徒の方に近づいて来ます。ちょうど、窓から漏れる月明かりに照らされて、人影の姿があらわー。


「あれ?」


突然、テレビの画面が真っ暗になりました。

故障じゃ……ないな。だって、鬼さんの人差し指が簡易テーブルに置いてあったリモコンの電源ボタンに触っていたの。それに、鬼さんの安心したような表情。怖かったのかっ!鬼のくせに幽霊を怖がるなよ。仮にも鬼でしょ?あの、泣く子も黙る鬼よ。鬼ごときが幽霊の、しかも映画の中に出てくる作り物の幽霊に怖がっていてどうする。ヘタレかっ、これからヘタレ鬼って呼ぶぞ!


「よかった〜」


よかった?こっちは見たくて借りたDVDなのに、なんで鬼さんが怖いからっていう理由で見られなくなるのよ。幸いにも、鬼さんの人差し指は電源ボタンから離れています。今だっ!


「えっ」


鬼さんの驚きの声と共にテレビは復活しました。テレビの中では、月明かり照らされた人影が足元から徐々に、その姿が露わします。そして、肝心の顔に差し掛かった時、またも鬼さんの人差し指がリモコンの電源ボタンに置かれテレビは真っ暗、そこからは。


付ける

消す

付ける

消す


流石の私も学習はしますよ。このままだと、付けたり消したりのエンドレス、キリがありません。それにテレビが壊れそうです。

ですから私はテレビの電源を付けたら、鬼さんに触られる前に、リモコンを奪って服の中に入れました。どうだ、これなら取れないだろ。隣では私のお腹部分を唖然としながら見る鬼さんがいました。


ようやく、月明かりで顔が浮き彫りになった人影は、それはそれは、とてもおぞましい幽霊でした。目は真っ黒で白い肌からは目も当てられないような傷だらけ、普通なら怖がるところですが、何せ毎日、年中無休四六時中、幽霊や妖怪を見ている私には特殊メイク凄いなとしか思えません。


一方、鬼さんは目を閉じて耳を塞いでいます。ここで、ちょっとした意地悪。耳を塞いでいても少しは音が聞こえるよね?だから、鬼さんの耳にも音が聞こえるように音量を上げました。なんと言いますか、怖がる子を見ていると余計に怖がらせたくなる、これって人の心理だよね。

案の定、鬼さんは耳を抑える力を強くして、唸ってます。


「あー、あー、聞こえなーい聞こえなーい」


そう言っても無駄、本当は聞こえてるくせに。更に音を大きくしようとしたその時、テレビ画面が突然、砂画像になって、クーラーは切れるわ部屋の電気は付いたり消えたり。


えっ、何これ、ホラー映画見てたら本当に幽霊が来てポルターガイストが起こったとか?いや、でもこれは違う、この感じは幽霊の仕業じゃない、そうこれは。


「あー、こんなところに虫がいるなぁ」


スパンッ


「痛っ!」


虫を叩くふりをして、リモコンで鬼さんの頭を思いっきり叩きました。すると、砂画像は元の画面に戻り、部屋の電気は付いて、クーラーは切れたままだけど、一応、戻の部屋に戻りました。


やっぱり、鬼さんこの部屋に妖気を当てたでしょ?この感じ知ってるよ。だって、小さい頃、私が一人で留守番をしていた時によく起こった現象だ。それに、こういう時は原因である元を叩かないと収まらないことを、知り合いのお坊さんに教えてもらった事がある。


「はぁ」


今のため息は私です。いくらホラー映画が怖いからって、妖気を当ててまで止めることはないでしょ?もうなんだか、ホラー映画を見る気がなくなりました。

テレビを消してもう寝ます。とりあえず、エアコンを消したまま寝るのはこの熱帯夜、酷なのでエアコン専用のリモコンで付けます。


カチッ

あれ?エアコンが付かない、もう一度。

カチッ

ん?

カチッ

付いてない

カチッ

えっ、まさか

カチッ


エアコンのリモコンを簡易テーブルの上に置いて、長い物差しを使ってエアコン本体を突っついてみました。それでもエアコンは付きません、うんともすんとも言いません。認めたくない、こんな事実は認めたくないけど。


「エアコン壊れたー!!」

「嘘でしょっ⁉︎」


嘘じゃないよ。妖気を当てたせいでエアコンが壊れてしまったではないか、どうするの⁉︎この熱帯夜、どう切り抜くの⁉︎この部屋にはエアコン以外、扇風機もないんだよ!それを分かってて何をやってるの?


鬼さんは何度もリモコンの電源ボタンを押しています。鬼さん、何度も押しても付かないものは付かないんだよ、諦めなさい。


「この家から出て行こうかな」


冗談ですよ、これはエアコンを壊した鬼さんへの八つ当たりです。しばしの沈黙。あれ、鬼さんが固まってる。これは予想以上に効いたのかな?


「嫌だー!出て行かないでー!!」

「出て行くわけ無いでしょ?」

「えっ」


しまった!


「もう、こんな夜遅いから電話に出てくれるわけ無いよね、修理屋さん。はぁ、今日は散々だわ、ホラー映画を見ようとしたらポルターガイストは起こるし、これはきっと大家さんが言っていた、この部屋に住む幽霊の仕業なのかしら?私は霊感とか無いから視えないけど。はぁ、もう寝ましょ。寝るが勝ちと昔から言いますからね」


鬼さんが『えっ』と言った後、私はすぐ、ポケットに入っていた携帯を取り出し耳に当て、さも、修理屋さんに電話したけど出てくれなくて困っている女の子を演じました。口調がいつもと違うけどそこは見逃して!私も必死だったんだよ。


ですが、鬼さんは私の目の前に来ました。流石にこれはバレたか?そん思いながら鬼さんの行動を観察していると、目の前で変顔をされました。

これは……あれか?変顔をして私が笑ったら、鬼さんのことが見えていると確信が付くので、その確認のために変顔をしているのかな?とりあえず、ここはよく分からないからスルーしておきましょう。


「やっぱり、視えてないか」


鬼さんに尻尾があったら、シュンと垂れていることでしょうね。そのくらい鬼さんはガッカリしていました。というか、やっぱりあの変顔で私が視えているかどうかを確認しようとしてたんだね。


それから私は、窓を開け、部屋の電気を消してからベッドに入りました。鬼さんは床で寝ようとしています。その様子を見送った私はマクラに顔を押しつけて声が漏れないように叫びました。





やらかしたぁぁ!!!!

つい、いつものノリで返しちゃったよ。バレてないよね?ないよね?はぁ、あの時は一体どうなるかと思ったぁ。よかった、本当に良かった。もう生きた心地がしなかったよ。口から心臓が飛び出るかと思った。


それと、改めて思ったんだけど、鬼さんって鈍感だよね。普通なら感ずくのに。まぁ、そのおかげで、今回は助かったから良しとするか。


本当に、今日は疲れた。もう寝よう、おやすみなさい

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