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138・悪魔の宣告

萌香視点に戻って

約100話越しの再会『34・悪魔の依頼』

に出てきた悪魔のベリトが出てきます

本格的にマズイなと思ったのは私が余命を宣告された人ってこんな感じなんだろうねと言った後、その時から心臓というか肺というかその辺りが締め付けられるように痛くて苦しかったのを覚えている。


それからはよく覚えていない。蓮さんと鬼さんとククリちゃんが話し込んでいる間、話を聞きつつこの痛みに耐えていた。でも、それも限界に近づいた時からは俯いていて、必死に痛みに耐える顔を隠そうとしていた。


鬼さんに息が吸えないのかと聞かれた時はとっさの行動で嘘をついてしまった。そんな自分に嫌気が差す。辛いなら言えばいいのに誰かに助けを求めれば良いのに。でも、そんなことを思う反面、なかなか言い出せない自分がいる。


それに、心臓辺りの痛みは時が経つに連れ酷くなり、鬼さんが蓮さんに死期が近いってどれくらいしでしょうか?と言った言葉を最後に突然、目眩がして私は痛む心臓と共に目を閉じた。




* * *




次に目を覚ますと、心臓の痛みは完全に消えていたけど、目の前が遮る物が一つもない果てしなく続く不気味で程静な薄暗い世界だった。もしかして、これは私の夢かと思ったけど、いや、夢であって欲しいと願ったけど。さっき、目を閉じる前の心臓の痛みと言い、この言われのないような不安から明らかにここは夢じゃなさそうな気がする。


「いや、夢ですように夢ですように」


頬を引っ張っても目は覚めない、ただ単に頬が痛いだけだった。ねぇ、ちょっと、嘘でしょ。まさか、そんな事はないよね?私はその場にへたり込んで頭を抱えた。


「嫌だ…嫌だよ」


そう言ったって現状は変わらない。目の前が急に明るくなるわけでもなくただ、薄暗い世界が広がっているだけだった。って、そもそもここはどこ?妖怪界(むこうのせかい)でもないし、当たり前だけど人間界(もとのせかい)じゃない。


「はぁ」


こうなったのは私から寿命を奪った黒鬼のせいだけど、こんな風になるまで誰にも言わず黙っていた私のせいだ。もし、あの時鬼さんや蓮さんや知り合いのお坊さんに言っていればこうはならなかったのかな?


「はぁ」


ため息しかでない。分かってるよ、分かってますよ、なんで自分が頑なに鬼さんや蓮さんに言わなかったのかを。


一人で、何もない頭上を見上げていると左側の方から馬が駆ける足音が聞こえた。しかも、音の大きさからしてこっちに向かっているみたい。目を凝らして音のする方を見ると地平線から現れるように赤い馬が出てきた。


「馬って茶色じゃないの?」


その赤い馬は乗馬していた人によって、私の真横に真横に止まる。白馬の王子様ならぬ赤馬の王子様。なんて言葉が私の頭の中に出てきたけど乗馬していたのは王子様でもなく、赤い衣服と王冠を身につけた兵士。それに、鼻が魔女みたいに曲がっていて太いつり眉毛、見た目から人相が悪そう。


「あの、あなたは?」


その人?は馬から降りることもなくただ私をまるで変な物を見るような目で見下ろしてきた。性格悪そうなエセ王様って思ったけど口にしない。言わぬが仏って言葉があるからね。


「おい、つるぺた小娘。我輩に名を聞く時はまずは自分から名乗るのが常識だろ?これだから、下等な生き物は困る」


殴ってもいいかな?

おっと危ない、危ない。もう少しで私の右手が勝手に動きそうだったよ。とりあえず、言い方に腹が立つけど、もしかしたら、ここから出られる方法を知っている重要なエセ王様だと思ったから私は大人しく素直に名乗ることにした。


「宮川 萌香と申します」


エセ王様はわざとらしく頷くと、こっちがイラつくようなうざったいドヤ顔で名乗った。おまけに、真っ赤なマントを自分で翻している。


「我輩はイギリスの古城に住む26の悪魔軍団を率いる序列28番、地獄の公爵ベリトだ!」


エセ王様ではなくベリトさんか。それに、悪魔だったんだ。確かに見たから悪魔っぽいよね。傲慢なところとか赤い馬に乗っているとかさ。あっ、そうだ。今はそんな事を思っている場合じゃなくて。


「あの!ここはどこですか!私、気が付いたらここにいて。私、こんなところにいる場合じゃないのです!それにどうやったらここから出れるのですか!教えて下さいっ!お願いしますっ!」

「自分で考えろ」


しれっと言われ、面倒事はごめんとばかりに素早くこの場から立ち去ろうとするベリトさん。例え相手が悪魔だろうが私はここで引き下がらない。私はベリトさんが手綱を握った瞬間、赤い馬の前に立ちはだかり、両腕を大きく広げた。


露骨に嫌な顔をしたベリトさんが馬の右横から顔を出す。そして、暫くの間お互いに見合い静かな時間が過ぎた後。ベリトさんの口が動く。


「ここは、死んだ人間があの世に行く一歩手前の場所である」

「えっ」


ベリトさん曰く、私たちが住むのは人間界。あの世は亡くなってしまった人たちが行く場所。そして、妖怪界はその2つの間くらいにある、化け物たちによる化け物たちの世界と教えてくれたけど、今の私の耳にそんな情報は一切、入ってこなかった。


「嘘、でしょ」


いや、何となくは予想していた。していたけども。


「嘘ではない。まぁ、正確に言えばお前は死んでいると言うよりも死にかけだな」

「なんで、そんな事まで」

「ほれ、自分の足先を見ろ」


私は自分の体の異変に気付いた。ベリトさんから言われた通り足先を見ると薄っすらと透けていた。足先だけじゃない、じわじわと脚まで透明になりつつある。その事実に私は思わず手で口を押さえてしまった。


「体が全て消えたらお前は完全にあの世行き決定だ」


最後の爆弾。悪魔の宣告はデュラハンに血を掛けられた時よりも蓮さんからデュラハンが来た意味を教えてもらった時よりも深く、胸の奥に突き刺さった。





萌香の病名:虚血性心疾(きょけつせいしんしっかん)


私もネットで調べただけなので上手く説明が出来ないのですが、簡単に言うと心臓に十分、血が行き渡っていない状態のことらしいです。

突然死の原因となりうる病の1つだとか

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