127・父、襲来
後書きにイラストを描いて下さった方々についてお話させて下さい
12月の下旬。
いつものようにご飯を食べて鬼さんと一緒に食器を洗っていると部屋のチャイムが鳴りました。今は大体、夜の7時30分。最近は大家さんとの交流があったから、もしかして、夏休みの時みたいにお腹を空かせた大家さんがやって来たのかな?
そんな風に思いながら元気良くドアを開けると。そこにいたのは大家さんではなく、6月くらいにイタリアのマフィア同士の喧嘩に巻き込まれ全治何ヶ月と言う重傷を負って回復した宮川 春人。つまり、私のお父さんがいたのです。
「萌香!会いたかったよ〜」
「ちょっ!えっぁ」
両腕を広げたお父さんに思いっきり抱きしめられお次は子供のように高い高いされました。高い高いですよ!高い高い。流石にこの歳にもなって幼稚園児にするような高い高いを普通、娘にしますか?って、その前に。
「来るなら連絡の一つ入れなさーい!」
私が玄関でドタバタしていると部屋の奥の方から鬼さんがひょっこりと出てきました。すかさず、私は目で鬼さんにあなたの妖力を使ってこのハイテンションなお父さんをなんとかしてと、頼んだのですが。
「スーツ着ないと」
「ちょい待て。どうしたらそんな解釈をした!その前になんでスーツを着る必要があるの!結婚を申し込む彼氏じゃないんだからね!」
「萌香、どうしたんだ?」
「えっあぁううん。なんでもないよお父さん。その前に高い高いを止めて私を床に下ろしてくれない?」
そうだった。私のお父さんは私と違って視えないんだ。鬼さんと一緒に暮らしているのが当たり前になっていて、つい普通に喋っちゃったよ。いかんいかん、お父さんの前では普通に良い子にしないと、心配なんて掛けちゃダメだ。
「とりあえず、中に入ろう。夕飯ならまだ少し残ってるけど食べる?」
「もちろんさ!愛娘の手作りなんだから食べないとダメだろ!」
親指を立ててドヤ顔のお父さん。あーぁ、分かった。お父さん、久振りに私と会えたからテンションが異様に高くなっちゃったんだ。いつもなら落ち着いていて仕事ができる優男な感じなのに。とにかく、私はお父さんを連れて部屋に入ります。きっと、今の私の目は死んだ魚のような目なんだろう。
「萌香の匂いだハスハス」
「ちょっとまてーい!お父さん⁉︎何かに取り憑かれているの⁉︎大丈夫?ねぇ、頭、大丈夫⁉︎」
親に向かってその口はなんだと言われそうなセリフだけど今は仕方が無い。だって、お父さんが一歩間違えたら二度と元には戻らない道に今から入りそうなんだもん。これは、娘として止めなければ。
「冗談だよ」
「良かった〜」
ほっと一息も束の間、今度は台所に行ったお父さん。何かと思って付いて行ったら、台所のシンクには洗いかけの食器が2つ。そう、お父さんには私が1人暮らしをしていると伝えてある。だから、食器が2つあるのはおかしい事なんだ。
「誰がいるのか?」
「さっき、友達が遊びに来てて一緒に夕飯を作って食べたんだ。でも、その友達は塾があって直ぐに帰ったの」
頭の中でイメージしたのはゆいちゃん。そして、夕飯作りは事実。ただ、一緒に作ったのかゆいちゃんじゃなくて鬼さんであって。まぁ、今はそんな事は良いや。
「そうか、萌香の友達か」
「オレ、友達扱いなのか」
「そう友達だよ」
色々、面倒くさいのでここは友達扱いにまとめました。すると、久し振りに鬼さんの頭にキノコが生えていてた。私が視えないフリをしていた時、鬼さんがへこむとよく頭にキノコが生えていてな。それにしてもキノコは妖力で生やすのかな?
* * *
私はお父さんを猫型座布団の上に座ってもらって、ささっと食器を洗ってからまだ残っている夕飯を出しました。ちなみに、今日の夕飯のおかずは鯵の南蛮漬けと冬瓜の味噌汁などなど。
「美味いな」
「料理だけは自信あるからね」
現在、私はご飯を食べているお父さんの目の前に座っています。鬼さんは私の隣、一見すれば結婚を申し込むような雰囲気だけど、今はそうじゃない。
「もう、本当に来るなら連絡してよ。びっくりしたからね」
「感動の再会にサプライズがいると思って」
いや、感動の再会はノーマルでいいよ。サプライズなんかいらない、普通に会いたいから。そこで、ふと気付いたこと。お父さんの手荷物が少ない、仕事用のカバンとお土産の袋が1つ、泊まる用の服がないって言うことは、もしかして、すぐに帰るってことだと思う。
「お父さん、明日にはイタリアへ帰るの?」
「明日と言うか3時間後?」
「なぜ、疑問形」
ここ火ノ江町の近くには空港なんてないから移動するが大変。多分、ここから空港まで40分くらいは掛かるから実際居られるのは10時近くまで。そうだよね、お父さんは今まで仕事を休んでいた分、働かないといけないんだよね。
「ごちそうさまでした」
食べた食器はお父さんが洗います。私がやるよと言ったのにも関わらず、引かないお父さん。ちょっとここでプチ喧嘩。でも、喧嘩はすぐに終わってります。
「頑固な所はお父さんにそっくりだ」
「鬼さん、私って頑固なの?」
「たまにね」
鬼さんとひそひそ話してから、食器を洗い終わって猫型座布団に座ったお父さんと会話がスタートしました。成績はどうだとかお母さんとの関係はどうだ等。成績については世界史以外、良い成績です。お母さんとは手紙でやり取りしているよと伝えると満面の笑みで良かったーと言われました。
「薄紫の便箋をもらってからだけど」
「萌香、書いてくれないかと思って」
お父さん、泣くマネをしないでくれ。それに、演技が下手ですから。すると、鬼さんが私とお父さんを見比べてくすくす笑っています。気になったからお父さんには聞こえない小声で話すと。
「演技が下手な所も似てる」
「私の演技が下手ならなんで昔、鬼さんは私が視えないフリをしていることに気付かなかったんだろうね」
一撃!鬼さんに99のダメージを与えた。隣では鬼さんが胸を押さえて倒れているけどそこはスルーして、お父さんと会話を続けます。
「1人暮らしさせてごめんな。寂しいだろ」
「急にシリアスになったね。大丈夫、今回の学校は桃ケ丘とは違って雰囲気も良いし、友達もたくさんいる」
私は伏せ目になっているお父さんを安心させるように言いました。それに、これは事実だし。あと、学校の他にバイトの事や秋くらいに知り合いのお坊さんのお寺に友達と行ったよと伝えました。
反対にお父さんからは、長くにわたる病院生活と仲間と共に病院から脱走した時の話を聞いたりお土産をもらったり私は始終、ツッコミを入れ続けました。基本、ボケとツッコミの両方担当だけど、ここまで来ると疲れるよ。
「漫才みたい」
鬼さんがぼそりと呟きました。確かに今までのやり取りは漫才みたいだよね。さて、楽しい時間と言うものはとても過ぎるのが早くて、何気無く時計を見るともうそろそろお父さんが空港に向かわなければならない時間となりました。
「お父さん、ここに住む」
「別に良いけどイタリアに残した荷物とかどうするの?」
「あっ」
そこまで考えてなかったようです。本当は空港まで見送ると言ったけどお父さんは八幡荘の前までで良いよと言われました。携帯電話を使い、部屋の中でタクシーを呼び10分後、外に出てさようなら。いくらなんでも早すぎやしません?タクシーが来たので鬼さんと共に外に出ると雪がちらちらと降っていました。なるほど、だから寒いのか。
「〜空港までお願いします」
本当は空港まで見送りたかったのにと、頬を膨らませているとお父さんが訳を話してくれました。それは、それはとても簡単な理由でして。
「空港まで見送られると萌香もイタリアへ連れて行きそうだから」
「さみしいのか」
「当たり前だろ。だから毎日、電話するよ!」
「お父さんはどこぞの彼氏か!」
そして、私は家にあった和菓子屋二階堂から貰ったお菓子とお土産になるような物を詰めた袋をお父さんに渡します。大した物は入ってないけどせめてもの気持ちね。私から袋を受け取ったお父さんはタクシーに乗り込むと空港へ行ってしまいました。
「慌ただしいお父さんだな」
「でしょ!」
私はお父さんが乗ったタクシーが見えなくなるまで手を振り続けました。お父さんも後部座席から手を振ってくれます。そして、今更になって気付いたこと、それは、お母さんが出所してからどうやって暮らすのかと言うことを聞き忘れてしまいました。
「やらかしたぁ!」
「どうしたんだ?」
「まぁ良いか」
別の話で盛り上がっていて忘れてた。でも、連絡先は分かっているし聞くのは後にしよう。とにかく今は寒いので早く部屋の中に入ってぬくぬくしたい。
「鬼さん、早く行こう」
生まれたての子鹿のように震える私の手を取った鬼さんの手は温かくて眠ってしまいそうです。短い時間だったけどお父さんに会えて一安心、本音を言えばもう少しいて欲しかったけど、お父さんの都合もあるからわがままなんて言えない。
強いてわがままを言うなら今後、マフィアとの喧嘩に巻き込まれて瀕死になるようなことはならないでって言いたいかな。
実は気付くのが遅くなってしまったのですが、この度12月4日に『みてみん』というイラストを投稿するサイトに『203号室の人外さん』のイラストを描いて下さった方々がおります。
名前をあげて申し訳ございません
絵を描いて下さったのは
・笛さま
・かりぽんさま
・放浪者ろにーさま
絵を描いて下さりありがとうございます
本当は個々にお礼をお伝えしたいのですが、どうやってコンタクトを取れば良いのか分からず、この様な形でお礼をお伝えすることとなりました
挿絵の方は私の活動報告に載せてあります。
お手数ですが、もしよろしければ見て下さい。
重々ですが、絵を描いて下さった
・笛さま
・かりぽんさま
・放浪者ろにーさま
本当にありがとうございました。




