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121・噂の萌香

後書きにちょっとしたお話を載せています

今回、様々な妖怪が出てきますが

飛頭蛮・蓮さん・ククリちゃん・萌香以外モブです。飛頭蛮は41話62話70話82話に出ています

鬼さんが働く28部署にはメリーさんや飛頭蛮さんやキィさんがいると、鬼さんから教えてもらいました。そんな修学旅行を終えてしばらくぶりの我楽多屋でバイト中の事。


「へぇ、ソウキ君と同じ部署だったんだね」

「そうなんですよ!いぬがみさまから、私の部署にソウキ後輩が入ってくると教えて頂いた時は驚きましたよ!」


今、蓮さんと話しているのは仕事の休憩時間を使ってコピー機のインクを買いに来た飛頭蛮(ひとうばん)さん。本当に我楽多屋って何でもあるよねーと思いつつ店内を見回すと店の中には人間のお客様は一人も見えず、代わりに見えるのはたくさんの妖怪や幽霊達だけ。


あれー?妖怪専門の『夜の我楽多屋』に変わるのは確か夜の9時からだったはずなのになんで今の時間にこんなにも大勢の妖怪や幽霊達がいるんだろう?今いるべきなのは人間のお客様なのにね。


「蓮さん、いつから夜の我楽多屋が始まる時間を早くしたのですか?」

「いや〜。早くした覚えはないんだけどね」


レジで飛頭蛮さんのインクのお会計をしつつ、隣で紅芋タルトを食べているククリちゃんを膝の上に乗せて椅子に座っている蓮さんに聞いたけど、曖昧な答えを返されました。しかも、店内にいる妖怪や幽霊達は全員スーツを着ていてある意味不気味です。


「スーツ祭りですかね?」

「みんな、いぬがみコーポレーションの仕事仲間だよ」


私の質問に答えたのは飛頭蛮さん。買い物を終えてレジの近くにあったパイプ椅子に座ったので、どうやらここに長居する気らしいです。しまったな、蓮さん達には沖縄のお土産を渡したけどまさか今日、飛頭蛮さんに会えると思ってなかったからお土産を持って来てないや。そうだ、せっかく鬼さんと同じ部署なんだから鬼さんから渡してもらおう。


「こんなにも大勢が⁉︎」


すると、2番テーブルから注文の声が聞こえました。私はメモ帳とシャープペンを片手に急いで向かいます。2番テーブルに座っていたのはこれまたスーツを着た男の猫型獣人2人組。正確に言えば猫又です。


「マタタビ入りクッキー2皿とコーヒーのブラックとレモンティーですね」

「へぇ、君が噂の萌香ちゃん?」

「えっと、はい。萌香と言います」


レモンティーを頼んだ猫又が私に質問してきました。私としては『噂の』と言う単語が気になって仕方がないです。噂って何だろう。猫又をしっかりと見ると幸せそうなカップルを見るような生温かい目をしていて、なぜか背筋がゾクっとしました。


「ソウキから話は聞いてるよ」

「ソウキから?あの、その話とは一体、なんでしょうか?」


丁寧に聞いてみるも、猫又2人組はニヤニヤするだけです。私は助けを求めるように蓮さんとククリちゃん飛頭蛮さんに視線を向けましたが、蓮さんとククリちゃんは紅芋タルトを食べる事に集中していて私の視線に気付いてない。でも、飛頭蛮さんは私の視線に気付いてくれました。そして、口パクで『あとで』と笑顔で言われたので、とりあえず私は猫又に頼まれた品を届けてさっさとレジに戻ります。


「飛頭蛮さん、教えてください」

「もっちろん!壁に耳あり障子に目あり噂話に飛頭蛮ありですよっ!」


まだ、中国から来て日が浅いのかな?おかしな話し方をする飛頭蛮さんは待ってましたと言わんばかりに目をキラキラと輝かせながら話始めました。


「その前に今、ソウキ後輩の現状についてお話しますね」


胸ポケットから赤いフレームのメガネを取り出して装着。そしていつの間にか飛頭蛮さんの右手には黒い水性ペンがあり背後にはホワイトボードが現れています。


さらさららら〜っと。飛頭蛮さんはホワイトボードにソウキと私のデフォルメ絵を描いて説明し始めました。


「新しく入社してきたソウキ後輩は仕事を真面目に取り組み、尚且つ、女妖怪に紳士的で爽やかイケメン!」


絵、描くの上手いなー。それに今の飛頭蛮さんは口調と言いスーツ姿もあってか学校先生みたい。おっと、他事考えないでちゃんと聞かないと飛頭蛮さんに失礼だよね。私は改めて背筋を伸ばしました。まだまだ話は続きます。


「そんなソウキ後輩の噂は瞬く間に他の部署へと広まり、いつの間にかソウキ後輩を狙う女妖怪が数多くいるようになりました。入社してすぐですよ!すごくないですか⁉︎」

「へー…狙うんだ」


自分で驚いた!なんせ今出た声は地を這うような低くて怖い声色だったから。それに、この反応をすると他所から嫉妬していると勘違いされそうです。べ、別に嫉妬なんてしてないからね!だって、鬼さんが好きなのは私だし、他の子に目が行くとかあり得ないし。と、謎のツンデレが脳内で行われました。


「嫉妬する萌香ちゃんかわいい」

「おねぇちゃん、素直じゃないね」

「若いって良いね」


蓮さん、ククリちゃん、飛頭蛮さん、それに店にいる全員が私のことを生温かい目で見てきました。あーもう、嫌っ。なんでこうもすぐに表に出るんだろう。


「で、この前、ついにソウキ後輩に告白した女妖怪がいるんですよ」

「えっ」


何それ、告白?この前って何?私そんな話、鬼さんの口から今の今まで聞いたことないけど。あの鬼、私の事はよく聞いてくるくせに自分の事はなかなか喋らないからって、あっ、熱くなりすぎちゃった落ち着け落ち着け。


飛頭蛮さんが次にホワイトボードに描いたのは告白したと考えられる女妖怪のデフォルメ絵。首が長いからろくろっ首かな?


「よく知っていますね」

「偶々、他の部署の子と一緒に告白シーンを見ちゃったから」


そうなんだ。それから飛頭蛮さんのお話を聞くと、告白したろくろっ首さんは鬼さんに『彼女がいるからごめんなさい』とフられたそうです。そこで、ろくろっ首さんは定番のように彼女さんの事を聞いてきました。つまり、私のことを聞いてきたと言うこと。


「そりゃぁ、気になりますよね」

「うんうん」


簡単なお話、ろくろっ首さんの前で鬼さんは惚気たそうです。そこで、鬼さんには人間の彼女がいると判明。そして、その話は飛頭蛮さん達の他に聞いていた幽霊達によって電光石火のように社内に広がりました。どうやら、彼女が人間だけあって話が広まる勢いは尋常じゃなかったらしい。


「まさか、幽霊達も聞いていたなんて驚きましたよ」


話を聞いた社員達はもちろんその話が気になって鬼さんに確認します。えぇ、そうです、そうです、そうですよ。またも鬼さんはそこで惚気たわけですよ。


「ソウキ後輩が萌香ちゃんが我楽多屋で働いていることも言ったらしくて」


あっ、話が見えてきたぞ。


「だから、ソウキ後輩の彼女を一目みようとみんなが我楽多屋に集まっているのです」


飛頭蛮さんから話を聞くだけが、どうして我楽多屋に大勢のいぬがみコーポレーションの社員がいる理由も教えてもらいました。



「飛頭蛮さん、ありがとうございます」

「いえいえ〜」


こうして私が飛頭蛮さんと話している間にもスーツ姿の妖怪や幽霊達は溢れる水の如く湧いてきます。ある者は普通に入り口のドアから、またある者は我楽多屋と蓮さんの家をつなぐ通路から様々です。


これだけ、集まると妖気が濃くて人体に何かしらの影響が出てきてしまいます。私は昔から知り合いのお坊さんのお寺で大勢の妖怪達と暮らしてきたけど、あれは広い場所で大勢の妖怪。でも、今は狭い場所に大勢の妖怪、妖気の密度が違って流石の私も今、気分が悪いです。例えるなら、冬場、暖房を入れて窓を閉めきった教室で授業をしているみたい。


「蓮さんは大丈夫ですか?」

「僕は慣れてるから良いけど萌香ちゃんこそ大丈夫?」

「ちょっと気分が悪いです」


それと、私を見てくる妖怪達や幽霊達の視線も痛いです。うーんこれは、窓を開ければ良い問題じゃないし、どうしたものかと悩んでいると蓮さんが助け舟を出してくれました。


「早い時間だけどもう上がった方が良いね」

「おねぇちゃん大丈夫?」


紅芋タルトを口元に付けながらククリちゃんが心配してくれた!本当は大丈夫って言いたいけど、このままこの濃い妖気の中に入れば近いうちに気持ち悪くて倒れる自信があるので、私は蓮さんのお言葉に甘えて早く帰ることにしました。


「鬼さんが帰ってきたら色々、聞かなくちゃ」


私の独り言は吐く息の白さと共に12月の寒空へと消えていきました。


【おまけ小話】

題名・鬼さん28部署に入社する


◯月×日


ソウキがいぬがみコーポレーション28部署に新しく入ってくると、簡単な自己紹介をした。それに続き28部署の仲間も自己紹介をする。自己紹介が終わったところでお次は雑談タイムへと入った。


「いぬがみさんから聞いていましたけど、萌香ちゃんの同居人なんですよね?」

「そうだけど。もしかして、萌香の知り合い?あっ、そう言えば萌香が電話でメリーさんとか言ってたような」


最初に話しかけてきたのは今、巷で流行りのギターガールであるメリーさん。


「萌香さんの同居人⁉︎えっ!それは一つ屋根の下で…えっ、どゆことですか⁉︎」

「そのままの意味だけど」


次は28部署の全員がスーツ姿なのに一人だけメイド服のキィがソウキに話しかける。


「で、萌香ちゃんとは良い感じで?」

「あぁ」

「おおっ!」


メリーさんとキィの話が終わったところでぐいぐい突っ込んできたのは、アニメ・ボカロ・声優好きな中国から来た飛頭蛮。


「と言うか何で萌香を知ってるんだ?」

「電話友&リア友ですから」

「私もメリー先輩と同じく」

「ご主人様と友人関係ですから」


ソウキは壁に手を置いて心臓辺りを抑えながら、なぜか沈んでいる。


「萌香、オレの知らないところで、こんなにも…」

(この3人って、萌香がオレのことを視えないフリしている時に出来た友達なんだよな。キィについては知らないけど、メリーさんについては萌香と電話で話している時に声が聞こえたし、飛頭蛮はメリーさんと萌香との会話でちょろっと出てきたし…)


自分の知らないところでこんなにも妖の友人を作っていたんだと知ったソウキは改めて悲しくなってきた。


〜おしまい〜


最後の鬼さんの( )のセリフは『78・鬼の困惑』が少し関係します。

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