115・修学旅行3日目 ~後編~
萌香のクラスは1年2組!
後書きにちょっとしたお話があります
結局、鬼さんへのお土産はサトウキビにしました。1袋に大きくて長いサトウキビが4本入っていて値段もお手頃だし、何より鬼さんは甘党だからこれで良いでしょ。
「ふぅー」
それにしても、たくさん買ったな。一応、家計には響かない程度に買ったつもりだけど。ゆいちゃんたちを見てみると私と同じく両手に大きな袋を持っていました。
「全員いるかー?」
現在、バスの中で担任が点呼中。これからの予定は至極簡単で、今日泊まる旅館に行くだけの話。修学旅行に行く前、ネットで調べたけど、とても綺麗で趣のある旅館でした。
「委員長はキィさんに何を買ったの?」
旅館に行く道中、私は隣の席に座っている委員長に聞いてみました。だって、委員長と私の欲しかったお土産は小さな女の子に渡しちゃったから、代わりに何を買ったのかなと思ってさ。
「琉球ガラスのコップ」
「あっ、それもあったか!」
「買い忘れた?」
「ううん、それもありかと思ったんだだけだよ」
琉球ガラスかぁー、国際通りでも売っていたよね。綺麗だったけど、お土産にするならお菓子だと決め付けていたから全然、琉球ガラスの琉の字なんで考えてなかったよ。
「それにしても、宮川さんその量」
委員長の視線が私の足元に置かれている大小様々なお土産の袋に向けられました。別に委員長が心配するような程、買ってはないと思うんだけどなー。なんて、それは冗談として。
「お土産を渡す相手が多くて、気付いたらこうなってたの」
確かにこの量は、小柄な私が持ったら歩けなくなると思わせるような荷物の量だけど、これが意外にも持てるんだよね。やっぱり、我楽多屋と和菓子屋二階堂でバイトをしているお陰かな。
「バイト先の人とか?」
「そうだね。後はキィさんとメリーさんと飛頭蛮さんといぬがみさんとお父さんと蓮さんと、ククリちゃん。火ノ江先輩かな」
「多いね。あれっ、鬼さんって言うかソウキさんは?」
「あっ、言い忘れてたけどちゃんと買ったよ」
私はお土産袋の中からガサゴソとサトウキビと民泊先で作ったタカラガイのブレスレットを委員長に見せました。どゃー!ブレスレット上手く作れたでしょ。これが、一番の自信作で青色と白色の琉球ガラスのとんぼ玉が入った綺麗なブレスレット。民泊先の千鶴さんも上手いねと褒めてくれたんだよ。
「ちなみに、宿泊先にいたキジムナーにも作ってあげたんだ」
「そうなんだ」
うーん、委員長の表情が固いな。前もそうだったけど鬼さん絡みの話になると委員長って苦笑いとかこまった表情になるんだよね。
もしかして、鬼さんが苦手なのか、それとも…
* * *
ともあれ、道中はなんの事故も無く今夜泊まる旅館に着きました。ネットで調べていた以上に旅館は大きく品があって、なによりたくさんの人影が右往左往しています。人影と言うのは幽霊のこと。やっぱり老舗だけあってこんなにたくさんいるのも無理はないよね。
「部屋番号は203号室なの!」
「そうだよ」
部屋長のほのかちゃんが203号室の部屋鍵を鍵穴に差しながら教えてくれました。今夜、泊まる部屋割りは2日目の民泊した時と同じメンバーなので、ゆいちゃんたちと一緒。部屋に入れば6畳と8畳の2つの部屋と広縁がありました。
「ザ・旅館だね!」
「めいちゃん、ここは旅館なんだから当たり前だよ」
荷物を部屋の片隅に置いて広縁から外の海景色を見ます。今はちょうど夕日が海に沈む頃で、とても絵になるような綺麗な景色でした。
「お風呂の時間は8時30分からからからだって」
「大浴場かぁ」
修学旅行の栞を見るあやのちゃんに教えてもらうと私は部屋にある時計を見て今、何時なのかを確認します。そうだね、今は5時くらい。確か修学旅行の栞にはお風呂の前に夕飯の時間もある。
でも、それまでまだ時間はたくさんあるし、今から何をしていようかなとみんなで話していると、突然、部屋のドアが勢い良くノックされました。
「出てくる〜」
めいちゃんが、ドアの鍵を開けるとそこにいたのは私たち以外の1年2組の女子が集まっていて、クラスでのリーダー的女子の安藤さんから今すぐにでも砂浜でクラス写真を撮ろうとのお誘いを受けたのです。
「今なら夕日が綺麗だし、撮るなら今なんだ!」
『今』という単語を強調して言われました。もちろん、断るわけがないよね。と言うことで、私たちは急ぎ足で旅館を出て少し離れた海岸に到着。まだ、日は完全に沈んでいない。あっ、でももう少しで完全に沈んじゃうから危ないかも。
「すいませーん、撮影お願いしまーす」
誘ってくれた安藤さんが、砂浜を歩いていた4人家族のお父さんに写真を撮ってもらうよう、お願いをしている間、私たちは夕日が海に沈みかけるのを背景に、担任を真ん中にして男子左、女子右の3列になって並びます。並び方はバラバラなので、私はゆいちゃんたちと同じ3列目に決めました。
「萌香はちっちゃいから3列目で大丈夫かな?」
「ほのかちゃん酷い、私だって背が低くても写るよ!」
1列目はしゃがんで、2列目は中腰、3列目は立つから、背が低い私でもちゃんと写真に写ります。今、私が立っているのはちょうど女子と男子がくっ付くところで。
「委員長、身長少し分けてくれないかな」
右隣にいる委員長に頼むとやんわりと断られてしまいました。そんな事をしている間に、撮影の準備は整ったようです。撮影してくれるお父さんが安藤さんの携帯を横にして大きな声で一言。
「はい、シーサー!」
カシャリ
あっ、やっぱり掛け声は『はい、シーサー』なんだ。この方が沖縄っぽいよね。それから、ポーズを変えてもう2〜3枚撮り撮影は終了。撮れた写真は安藤さんの携帯から私たちの携帯に送られるのと安藤さんが写真にして、後日渡してくれる2枚です。
「安藤さんの家は写真屋だからね」
「そうなんだ」
あやのちゃんからプチ情報をゲット。安藤さんから携帯に送られてきた写真を見ると良い感じの逆光具合で見惚れてしまいました。しかも、制服ってところがまた良いよね。
「私たちも撮ろうよ」
「さんせーいっ!」
「飛んだ瞬間を撮ってもらうのは?」
「それ良いね!」
あやのちゃんの提案で私たち、いつものメンバーはクラスが解散した後も砂浜に残り、タイミング良くいた担任に写真撮影をお願いしました。
「二階堂、これを押せば良いのか?」
「はい、そうです。連写機能ですから失敗はないはずですよ。」
写真撮影はあやのちゃんの携帯のカメラで撮ります。面白い事にこれまた、担任も写真を撮る時の掛け声は『はい、シーサー』でした。それと同時に私たちは手を繋いで高く飛び上がり、砂浜に着地。
「まだ、撮るか?」
「「「「「お願いします!」」」」」
この後、私たちは辺りが暗くなるまで写真を撮ってもらいました。
* * *
夕飯は旅館らしく、大広間で全クラスが集まり、海の幸がこれでもかと詰め込まれたコース料理を食べた後、8時30分から私のクラスが大浴場に入りました。そして、大浴場から上がった私はその場から少し離れた場所にある卓球場へと紅坂高校の体操服を着てから向かいます。
今、目の前ではゆいちゃんとめいちゃんが卓球で体を動かしていてめいちゃんが審判をお務め中。そして、私とあやのちゃんはその様子を近場の椅子で観戦中です。
「若者は元気だねぇ〜」
「もえかちゃんも若いでしょ」
「まぁ、まだ15歳だけど」
「知ってるよ、後少しで誕生日だよね。えーと、12月13日だっけ?」
「うん」
あれっ?私、あやのちゃんに自分の誕生日なんて言った覚えないんだけど。でも、覚えていてくれて嬉しいな。そう言えば、あやのちゃんの誕生日がいつか知らないんだよね。と言うことで、あやのちゃんに聞いてみたら4月5日と答えてくれました。
「まだ、その時は会っていないよね」
お互いに笑いあって、ゆいちゃんとほのかちゃんたちの激戦を見ていると、ふいにあやのちゃんが話しかけてきました。内容は誕生日の話しとは一切違って私の恋愛事情です。
「話変わるけど、一昨日もえかちゃん、好きな人いるっていったよね。それって片思い?それとも両想い?」
「両想いだよ」
「そっかー。両想いなら幸せだね」
卓球の激戦を見ながら話すあやのちゃんの横顔を見ると、どこか寂しそうな、嬉しそうな、そんな複雑な感情が読み取れるような表情をしていました。
「あやのちゃんはいるの?」
「好きな人?どうかな〜?いるかな〜いないかな〜」
にやにやと含み笑いを持たせて焦らすあやのちゃんに、私はズバリ聞いてみます。
「水戸部さんとか」
「ははっ!だから、それは無いよー!中学は同じだったけど、水戸部君にそんな感情はなしい。ただ単に同じ目的を持った者同士が集まっただけだからね」
「同じ中学だったの⁉︎」
「そうだよ。でも、私の中学はマンモス校だったから、1学年にどんな子がいたのか知らないまま卒業した子がほとんどで、水戸部君と3年間一度もクラス同じになった事ないから、向こうも私が同じ中学だったて知らないと思うよ」
へぇー、あやのちゃんって水戸部さんと同じ中学だったんだ。初耳で驚いています。それと、一昨日も気になったんだけど『同じ目的を持った者同士』ってどんな意味が込められてるのかな?
「歳上なんだよね。あっ、もしかして同じ学校の人?」
「違うよ」
「じゃぁ、大学生とか」
「違うなー」
「えっ、じゃぁ大人の人⁉︎」
うーん。鬼さんは一応、大人に入るのかな。だってお酒飲めるし、何千年も生きてるから大人だよね。
「そう言うことになるかな」
「大人と高校生の恋って…小説に出てきそう」
大人と高校生の恋ってと言うよりも私たちは多分、異類婚姻譚の部類だと思う。
そう言えば修学旅行中に鬼さんから電話掛かってきてないな。掛かってきてないと言うことは元気にしているのかな?夕飯ちゃんと食べてるのかな?あー、ダメだ一度気になると止まらないや。
「3泊4日って長いね」
「突然、どうしたの⁉︎」
本音を言えば鬼さんの声聞きたいな〜。だなんて、恥ずかしくて口が裂けても言えないや。
こりゃ、重症ですわ。
と、その時、私のズボンの右ポケットから電話の着信音が聞こえてきました。
チャッチャラチャラララン、チャッチャッー
「おっ、噂をすれば」
「もしかして、彼氏さん?」
「うん!」
「ほぉ〜」
しまった!つい、声が弾んじゃった。携帯で口元を隠してもあやのちゃんのにやにやは増すばかりで、こっちはすごく今の自分が恥ずかしいです。
「あっ、切れちゃった」
「ここを出て、右の廊下を進むとテラスみたいなところがあるよ。この時間帯なら人はあまりいないかな」
目だけで『いってらっしゃい』と言っているのが伝わってきました。
「ありがとう」
お言葉に甘えて行ってきます。もとい、話してきます。
* * *
あやのちゃんに言われた通り卓球場の部屋を出て右に曲がり突き当たりまで行くと綺麗な夜の海が一望出来るテラスに出ました。
「人がいない」
人がいなくて良かった。もし人がいたら話しにくいもんね。そして、私は着信履歴から鬼さんに電話を掛け直します。
「もしもし」
『もしもし、今、寝てた?』
「まだ9時30分だし、寝てないよ。それで、どうしたの?」
『声聞きたいなーとか思って』
うわぉ!なんと言うシンクロニシティ!
『それと、萌香に謝らないといけないことがあるんだけど…』
「えっ!何?」
『実は食器を洗っている最中に萌香の大事な猫柄のマグカップを割ってしまい…』
「鬼さん!大っ嫌い!」
電話の向こうからすごい大きな音が聞こえた。何かをぶつけるような痛そうな音です。もしかして、今ので動揺したのかな。そりゃぁまぁ割ったことはショックだけど、大っ嫌いと言うのは冗談です。
『萌香!許して!』
「じゃぁ、代わりにお揃いのマグカップ買ってくれたら許してあげます」
『よっしゃ!』
それから、どれだけ時間が過ぎたのは知らないけれど私と鬼さんは長く話していたと思う。
『好き!おやすみ』
「はいはい、おやすみなさいです」
鬼さんとの電話を終え、私は海の向こう側にいる鬼さんに向かって呟くように言いました。
「私も好きです」
コンコンッ!音がする方を見ると、入ってきたドアが誰かによって叩かれました。暗くてよく見えない。誰だろう?旅行客の人かな?それとも先生とか。
そして、ドアがゆっくりと開きテラスに入ってきたのは。
「宮川さん、今って時間ある?」
儚げに微笑む委員長でした。
応援組:水戸部&あやの
現在、委員長と萌香を物陰からひっそりと見守っている状況
水戸部「ついに、委員長が告白するのか!」
(ドキドキ…ドキドキ…バスの中でも水族館でも土産屋でも良い感じだったし、後は勇気だけだぜ!頑張れ隼人!)
あやの「さぁ?…」
(この雰囲気は絶対に告白だよ。うわー…こっちは結果が分かってるから辛いよぉ。でも、応援組として最後まで見届けないといけないし…隣にいる水戸部君に今、もえかちゃんに彼氏がいるだなんて言えない。言ったらきっと…はぁ、辛い)
* * *
本当の後書き
今回の題名は修学旅行編3日目 ~後編~ですが
まだまだ修学旅行編は続きます
次回は委員長視点のお話です




