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114・修学旅行3日目 ~前編~

修学旅行3日目、3泊4日の修学旅行も残り僅かとなってきました。今日の予定は午前中、民泊先によってやることは変わるけど、千鶴さんと夫の源次郎さんと一緒に、漁に使う網の補修作業を体験したり農作業を手伝います。そして、午後からは沖縄国際通りでお土産を買い旅館に泊まると言う予定。


と、現在、千鶴さんの畑で野菜を収穫しているんだけど、私の両肩に乗っている2体のキジムナーが意外と重い事で頭がいっぱいです。昨日までは重いともなんとも思ってなかったけどな。やっぱり農作業をしているからか?


「あの、ちょっと降りてもらえませんか?」

「「いやー」」


それにしても、よくもまぁ器用に落ちないものだよ。キジムナーは昨日、私が作ったキジムナー用のミニブレスレットを手で弄りながら私の作業を見てきます。


「今日、帰るんだな」

「そうだよ」


収穫した島カボチャと青パパイヤを千鶴さんに渡し今度はシカクマメを収穫しました。千鶴さん曰くシカクマメはコリコリした食感に少し苦味があるそうです。もしかしたら、お酒のおつまみに良いかなとか考えたり。実際に食材を触ると料理したくなるねー。


「「そうだ!オレ達も付いて行こう!」」

「どうしてその考えになった」

「だって、モエカみたいにオレらを視える奴って滅多にいないもーん」

「だから、付いていくもーん」


簡単に言うと別れが惜しいとの事。なんだ、意外と可愛いところがあるんだね。でも、私の住む火ノ江町は海が無く山に囲まれていて毎日、新鮮な魚の目玉が手に入らないことを伝えると、即答で付いて行くのを諦めました。一瞬、可愛いところがあると思った私の気持ちを返せ!


「新鮮なのが無いとねー」

「鮮度が命なんだよ」


料亭の板長みたいな事を言うキジムナーに苦笑いしつつ私はシカクマメを収穫するのでした。





さてさて、時が流れるは実に早いもので、気が付けばもう船を出港する時間となっていました。船の中から港で私たちを見送っている民泊先の方々に手を振り最後の別れを告げます。


ちなみに、船に乗る前、宿泊先の片岡さん一家とキジムナーと私たちで記念写真を撮りました。その写真はと言うと後日、紅坂(あかさか)に届けられて担任から各個人に配られるそうです。


「ゆいちゃん、ハンカチどうぞ」

「ありがどゔ」


私の隣の席ではゆいちゃんが号泣していました。辺りを見回すと号泣する生徒がたくさんいます。


「萌香は泣かないのか?」

「やっぱり最後は笑顔でさよならしたいって思うから、私は泣かないよ」

「そうかー、泣くなら彼氏の胸で泣きたいのかー。もーう萌香ったらー」

「ほのかちゃん!私そんな事、一言も言ってないから」

「おっ、なんか楽しそうだね」


語尾と鼻の下を伸ばしてからかってくるほのかちゃん、それに反応してめいちゃんも近寄って来ました。とにかく、この2人がくっ付く時は何かしらあるので、ここはまともなあやのちゃんとゆいちゃんの元に避難しよう。


「もえちゃんおいで!さぁ、私の胸で泣きなさい!」

「ゆいちゃん…ごめん」

「もえかちゃんに嫌われたよぉ」

「そういう意味じゃないんだ」


嫌じゃなくて、きっとゆいちゃんの胸で泣いたら別の意味で泣く羽目になるから。はぁ、毎日、牛乳は飲んでるし早く寝てるのにどうしてこうも差があるんだろう。これは、何かの呪いなのかな。呪いなら知り合いのお坊さんか蓮さんに祓ってもらわなきゃ。


「もえかちゃんはそのままで良いんだよ」


あやのちゃんに言われたけど、私はそのままは嫌なんだよ。




* * *




船を降り、心にかなり大きな傷を抱えながら辿り着いたのは沖縄国際通り。ここは、普段私が買い物する火ノ江町の商店街みたく、一本道にたくさんのお店が立ち並び、右を見れば食べ物屋、左を見ればお土産屋。お店の中もたくさんの品があってとても充実しています。


それと同時に国際通りにはたくさんの黒い人影が見えました。この黒い人影は幽霊だね。やっぱり人が多いところは賑わっていて楽しいから暇を持て余した幽霊たちがふらふらーって集まってきちゃうのかな。


「お金の事考えながら買わなくちゃ」

「計算しないと後で恐ろしいことになるからね」

「もえちゃんは主婦だからお金のやりくり上手そうだけど」

「そうかな?」


とは言っても、お店によってお土産の値段が違うのでまずは、すぐにお土産を買うんじゃなくて最初にお店を見回って、そして、今まで見て来た中で安いお店を選び、後から買いに行くと言う戦略が私たちのグループで決まりました。


「お前ら金銭感覚狂って買いすぎるなよ」


担任から注意を受けて早速、行動開始。沖縄国際通りにいられる時間は3時間くらい。担任によるとここでの3時間は長いようで意外と短いそうです。


「お昼ご飯も各自で食べろとさ。みんな何が良い?」

「ソーキそば!」

「ジーマーミ豆腐」

「麻婆豆腐」

高野(こうや)豆腐」

「おいっ後ろの二人!悪ノリしただろ」


提案したのは、ほのかちゃん。そして、言った者順に並べるとゆいちゃん、あやのちゃん、めいちゃん、私です。と言うことで悪ノリしたのは私とめいちゃんでした。


「まずは食べてからにしようよ」


どうやら、ゆいちゃんはお腹を空かせているようで、近くの食べ物屋にふらふらと入って行きました。その後に続いて私たちも入ります。お店の看板を見なかったけどここって何があるんだろう?


店の中は他の学生や観光客で溢れ返っていました。そんな中で私たちは入り口近くにある5人掛けのテーブルに座りメニューを開きます。メニューに書かれてあったのはカレーやうどん、ゴーヤチャンプルやソーキそば、ジーマーミ豆腐などなど、沖縄名物の品から一般的な品まで数多くありました。


「ソーキそばにしようかな」

「じゃぁ、私も」


高野豆腐は冗談として、私もゆいちゃんと同じソーキそばを選びました。ソーキそば、ソーキそば、ソーキそば、ソウキそば、ソウキそば、ソウキソウキ…。うん、やっぱり鬼さんの蒼鬼(ソウキ)とソーキそばの名前は似てるよね。


「サーターアンダギーと紅芋ソフトも追加でお願いします」


なんと、ゆいちゃんはソーキそばの他にも食べるようです。確か夕飯は宿泊先の旅館で豪華なコース料理を食べるとか担任が言ったいたけど、今からこんなに食べて夕飯、食べれるのかな?


しばらくして頼んだ品が出されると私の心配をよそに、ゆいちゃんはどんどん食べていきます。その様子はまさに、ブラックホール。


「あっ、美味しい」


初めて食べるソーキそばさ美味しかったです。お土産屋さんにソーキそば売ってるかな。売ってたら絶対に買おう。



* * *



お昼ご飯を食べ終え、沖縄国際通りを一通り見た私たちはようやくお土産を買う方向へと足を向けました。まず先に向かったのはアクセサリーショップです。そこでは、修学旅行の記念に赤色の布で出来たホヌのストラップをお揃いで買い、ついでにお父さん用として健康祈願のお守りも買いました。


「次はお菓子とか食べ物の方に行くか」

「部活の後輩用にも買わなくちゃ」

「あー、私も。バレー部人数多いんだよ」


私は部活に入っていないから後輩用にお土産を買わなくても良いんだけど、蓮さんやククリちゃん、火ノ江先輩とかたくさんの人や妖怪にお土産を渡す予定だから、ほのかちゃん達とそう変わらないかも。


「うわっ!人多い」


店の中はさっきお昼ご飯を食べたお店よりもかなり敷地面積は広く、その分、人も多いです。他校の人とか観光客の方々の足を踏まないように気を付けないといけないね!


「あやのちゃんはお店の人に渡すの?」

「そうだよね。ねぇ、一緒にお土産、探そう」


ここからは、私とあやのちゃん、ゆいちゃんのめいちゃん、ほのかちゃんと言った2グループに分かれて買いたいお土産を探しました。


「紅芋タルトとパインカステラは必須、後おばあちゃんから」

「大量だね」


既にあやのちゃんの持つカゴにはたくさんの箱が置かれてあります。よし、私も選ぶとするか。


まずは自分用にソーキそばを買って、次は蓮さんとククリちゃん用に定番の紅芋タルト。いぬがみコーポレーションで働く、メリーさんとキィさんと飛頭蛮さんグループには色々な味が詰まったちんすこうのバラエティパック。


お父さんには健康祈願のお守りを買ってあるから良いとして。いぬがみさんは…うーん、海ぶどう?お酒のおつまみになるかどうかは知らないけど、まぁ、それで良いか。火ノ江先輩には紅芋あん入りのサーターアンダギーと雪塩ちんすこうね。2個買ったのは一応、土地神様の分も含めてです。


「全員分、買えたかな」


あっ、鬼さんがいた。蓮さん達のことで頭がいっぱいになってたから、危うく忘れかけていたよ。


「もえちゃん、先にお会計してくるね」

「了解」


お会計に向かうあやのちゃんの後ろ姿を見送ると、レジの前も大勢の人が並んでいるのが見えました。後で私もあの中に行かないといけないんだよねー。なんだか、修羅場のように見えてきた。


「鬼さんは何にしようかな」


甘いもの好きだからちんすこうのショコラ味にしよう。そう思ってちんすこう売り場に行くと、ちんすこうのショコラ味がある棚だけ他のちんすこうと比べてぽっかりと穴が空いていました。


「売り切れ⁉︎」


あっ、違う。まだあった、しかも最後の一つが。私は早歩きでちんすこうのショコラ味がある棚へ向かい誰かに取られる前にカゴに入れようと手を箱に伸ばし掴んだ時、まるで王道漫画のような展開でとある人物もちんすこうのショコラ味に手を出していたのです。


「委員長!ここは、譲れません!」

「キィからの頼まれ物なんだ」

「うっ、キィさんからなんだ。でも」


委員長と私はまるで子供のような争いをしています。やっぱり最後の一つって手放したくないよね。


「これはソウキのお土産なんです」


委員長の目をしっかりと見据えて言った途端、僅かだけど箱を持つ委員長の手の力が緩くなりました。すると、私の斜め右下の視界に小さな女の子が映ったのです。


「私も欲しい」


突然だけど、幼稚園くらいの女の子に上目遣いでそう言われて渡さない高校生がどこにいるのでしょうか。


「「どうぞ」」


さっきまでのプチ喧嘩はどこへやら。私と委員長は素直に小さな女の子に箱を渡します。


「ありがとう。ママー、買えたよー」


あの女の子がいなかったらプチ喧嘩は収まってなかったかなと思いながら笑いつつ、委員長の方を見上げると、私と同じく女の子の方を見て笑っていました。


「委員長ってロリコン?」

「それはないだろ!」


おおっ、キレのあるツッコミ。もちろん委員長がロリコンじゃない事は知ってるけどね。でも、これでまた鬼さん用のお土産を探さないといけない事になったな。


残り時間はまだあるから、ここでゆっくりと選ぼうっと!委員長と分かれた後、私は鬼さん用のお土産を探しに旅に出かけるのでした。


「あっ、マンゴープリンも欲しいな」


カゴの中にマンゴープリン追加〜

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