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113・修学旅行2日目 ~後編~

沖縄の妖と言えば!

時刻はお昼を少し過ぎた頃

美ら◯水族館の後は人生初の船に乗り沖縄から少し離れた島で暮らしている漁師さんや農業を営む方々のお宅に民泊です。


港へ着くと受け入れ先の家族が迎えに来てくれて、ちょっとした学年主任からお話を聞いた後、そのまま、受け入れ先の家族の車に乗りお家に向かいました。


一軒家に大体5人〜6人の生徒が泊まるらしく私たち、いつも通りのメンバーが今夜、泊まらせてもらうのは片岡さんという漁師のおじいさんと畑仕事をしてみえるおばあさんのお宅です。


「「「「「おじゃましまーす」」」」」


やっぱり家の赤い瓦の屋根にはシーサーがいた。それと、玄関に入った瞬間、高さ約10センチくらいの髪色が燃えるような真っ赤で短髪、上半身裸。下は葉っぱで作ったような腰巻を履いている小人?が2体いました。しかも、その小人の手には食べ掛けの目玉があった。


「萌香どうした?」

「ううん!な、なんでもないよ?」


片岡さんのお家は平屋建てで家の中はとても広く、庭には直径、計り知れない大樹が生えていて、ザ・沖縄という感じがします。しますけども、私が気になったのはこの小人さんたち、見た目はかわいいんだけど手に持っている目玉がそのかわいさを台無しにしている気がする。


「案内するね」


現在、漁師のおじいさんは海に行っているので不在です。帰ってくるのは夕方頃だとおばあさんの千鶴さんが言っていました。それまで千鶴さんと一緒に海に行って貝殻を拾いアクセサリーを作ったり夕飯の手伝いをしたりする予定。


「ここが、今日寝る場所だよ」


大広間にはもう既に布団が敷いてあり、その上を小人さんたちが飛んだり跳ねたりまるで旅行に来た子供のように遊んでいました。あれっ⁉︎今、気づいたけど目玉が無くなってる。もしかして全部、食べた?


「「お客だ!お客だ!」」


私は布団の上を飛び跳ねる小人について考えました。赤い髪に低い身長+沖縄=キジムナーじゃない?それと、声的にちょっとだけ低いから性別は男の子かな。


「もう少ししたら、アクセサリーの材料に使う貝殻を拾いに海に行こうかね」

「はーい」

「制服よりも動きやすい服装が良いかな」


千鶴さんに、動きやすい服装と言われたのでキャリーケースから紅坂(あかさか)高校の体操服を取り出して着替えます。そう言えば、キジムナーって座敷童の仲間だよね。だから、人に害する妖怪じゃないし安全か。一部、目玉を食べるというグロテクな部分もあるけど。


「魚の目玉ないかな〜」

「美味いのがいいよな」


こらっ!人のキャリーケースを漁るんじゃない。それに、キャリーケースの中に魚の目玉なんて入ってないから!逆に入っていたら怖いよ。私は自分のキャリーケースを漁るキジムナーを摘み上げて布団の柔らかいところにポイっと放り投げました。


「もえかちゃん、着替えられた?」

「うん、オッケー」


と言うか、食べていた目玉は魚の目玉だったんだね。




* * *




千鶴さんの家から海までは車で行かずとも徒歩5分のところにあります。道中、歩きながら千鶴さんに沖縄の方言を教えてもらいました。メンソーレー、アチコーコー、チバリヨー。ついでに、何で私の両肩にキジムナーが乗ってるのー。


「お前、視えてるだろ?」

「目玉、目玉くれ〜!」


怖いよ。何、目玉くれってホラー映画かっ!そんな事を思いながら歩いていると、ようやく海岸に着きました。今日の天気は晴れていることもあってか海がキラキラと輝いて見えます。いいね、白い砂浜に青い海、泳ぎたいけど水着を持って来てないのでせいぜい足をつけるくらいしか出来ないや。


「貝殻はたくさんあるから、この袋に入れて持って帰ろうか」


千鶴さんから手渡されたのは普通のビニール袋。確かに砂浜を見ると欠けた貝殻や変わった形の貝殻がたくさん落ちていて、こんなにもあるのかと驚きました。


「貝殻なんて美味くないぞ」

「食べれないぞ」

「あー!もう分かってるから」

「もえちゃん、何か言った?」


両肩に乗ったキジムナーにツッコミを入れたらゆいちゃんに心配されてしまった。そりゃそうだよね、だって、ゆいちゃんにはこの2体のキジムナーが見えないんだから、突然、話し出した私を見て心配するのも無理はないよ。


「虫がいただけだよ」

「そっかー」


貝殻を拾い始めて数分はゆいちゃんたちと一緒に拾っていたけど20分くらい経った頃、私たちは白い砂浜に散らばって各個人で貝殻を拾っていました。と言うことで今は両肩に乗ったキジムナーたちと人目を気にせず普通にお話ができるわけで。


「魚の目玉なんて持ってないからね」


最初にそう言ったら残念そうな顔をされました。キジムナーってそんなに魚の目玉好きなの?


「「ケチ、ババァ、チビ」」

「チビ?……へぇ〜。そんなに、君たちは海の底に沈みたいのかー。よーしっ!それならお姉さんが手伝ってあげるよー」


私は笑顔で両肩に乗っているキジムナーを片手で素早く掴み、重しになる私が持てる範囲で大きく重そうな石と括り付ける丈夫な縄を探しました。すると、勢い良く暴れ出すキジムナーたち。


「やめてー!」

「鬼だー!」


一見、弱い者いじめに見えるけど、先にチビって言ったのはキジムナーからだし、仕方が無いよね。とは言ってもこれ以上、脅すと可哀想だしここは大人の対応として首から下を砂に埋めてあげるだけにしよう。


「外道め!」

「人間の皮を被った妖だ!」

「チビって言っただけで怒るなんて、子供だな!」

「そうだ、そうだ!」

「その他にも言ったでしょ」


私のツッコミもなんのその。キジムナーは砂に埋まりながらも言いたい放題言ってうるさいです。まぁ、チビって言ったくらいで怒る私も私ですが。あれっ、もしかして私の器って小さい⁉︎


「仕方が無い、出してあげるよ」


そうだ、私も精神的に大人にならないといけないから、これを機にチビって言われても怒らないようにしないとね。私は砂の中から2体のキジムナーを掘り出して手のひらに乗せます。


「よく、分からないけど助かった」

「でも、今度またチビって言ったら海に沈めるから」

「もう言いません!」

「うん、よろしい」


手のひらでお互いに肩を抱き合って震えるキジムナーの頭を軽く撫でながら笑いかけ、砂の上に置いてあげました。すると、真っ赤な髪の色みたいに顔色が赤くなり、視線を外されてしまった。一体、キジムナーに何があったのかな?




それからと言うもの、私が貝殻を探しに歩くとキジムナーも一緒について来ると言った現象が起きたり、綺麗な貝殻を持って来てくれたりと私でもよく分からない仲になってきた。これは、さっきの罪滅ぼしなのか、ただ単に気まぐれなのか。うーん、キジムナーってよく分からない妖怪だね。


「チビっ!この黒い貝殻いるか?」

「チビじゃないし。私にもちゃんと名前があるの」

「じゃぁ、なんだよ」

「萌香」

「「モエカ!」


こんな風にやり取りをしていたら、いつの間にか時間は過ぎ、もう帰る時間となりました。




* * *




家に着くなり手を洗ってちゃぶ台に集まり、早速、アクセサリー作りの開始です。拾って来た貝殻で作るアクセサリーはブレスレット。もちろん、作り方は千鶴さんから教えてもらいました。


材料は貝殻の他に穴が開いた琉球ガラスの色鮮やかなガラス玉と2本の紐とライターとボンドとビーズ。教えてもらった通りに根気良く作ること5分、タカラガイと赤とピンクのビーズで作ったブレスレットの完成です。でも、私とキジムナーが拾って来た貝殻はまだたくさんあるしビーズもたくさんある。もう一つ、作っても良いかな。


「うーん」

「家族用に作ったらどうだい?」

「えっ!良いんですか⁉︎」

「もちろんさ」


どうやら顔に出ていたらしく、一緒に作っていた千鶴さんがにこやかに笑ながら新しい紐を渡してくれました。それを見たあやのちゃんも千鶴さんに頼み、私に続いて紐を貰い、せっせとブレスレット作りを始めています。


「和菓子屋で働いている人にあげるの?」

「そうだよ」


手際良く作業するあやのちゃん。和菓子屋ってこう言う細かい作業とか多いんだよね。だから、作るのが速いんだ。


「あやのちゃん、作るの速いね」

「えへへ、和菓子屋だからね」


あやのちゃんが作るペースは3分間で2つ。流石、和菓子屋の次期当主。そんな事を思いつつ、私も作業に取りかかります。今、私の膝の上では2体のキジムナーが足を伸ばして座って欠伸(あくび)をかいていました。


「さっき、貝殻を拾うの手伝ってくれたから君たちの分も作るよ」


みんなに聞こえないようにそっと話しかけるとキジムナーはくりくりの目を大きくさせ足をバタつかせます。


「モエカ、目玉もブレスレットに付けようぜ」

「それはない」


目玉をブレスレットに付けた時には覚悟しなさいよ。と目で合図して作業に戻りました。よし、まだおじいさんが帰ってくる夕方まで時間はたくさんあるし、これならたくさんの人の分のブレスレットが出来る。


まずは、2体のキジムナーとお父さんと蓮さんとククリちゃんの分。それから、お母さんの分と油赤子のあーちゃんにも。後は、あっ!鬼さんの分も作らなきゃ。


そうだね…鬼さんの名前は蒼鬼(ソウキ)だから、名前にちなんで青色のビーズを使ったブレスレットを作ってあげよう。




* * *




寝る前、喉が渇いたのでお水をもらおうと一人で台所に行くと、千鶴さんがお盆の上に線香や果物、榊を乗せていました。


「あの」

「あら、萌香ちゃん。どうしたの?」

「いえ、お水を貰いに来たのですが。その、お盆の上にある物って神様に備える物ですよね」


榊を見た瞬間、神様に備える物だと分かった。幼い頃、知り合いのお坊さんから一般常識として教えてもらったし、なにより線香や果物があるから分かり易かったかな。


「そうだよ。よく知っているね」

「知り合いのお坊さんから一般常識として教えてもらいました」

「そうかい。実は、このお供え物はヒヌカン様って言う神様のお供え物なんだよ」


ヒヌカン様?聞いたこともない名前です。一体、何の神様かな?名前的に『ヒ』が入っているから『火』の神様だったりして。


「ヒヌカン様はどんな神様なんですか?」

「沖縄の家の守り神みたいな神様だよ」


あれっ!全然違った。火の神様じゃなかったや。へぇ、ヒヌカン様って家の守り神だったんだ。この家にはシーサーとヒヌカン様がいる。シーサーは魔除けでヒヌカン様は家の守り神。これは最強のタッグだね!


それと、千鶴さんから旧暦の1日と15日は必ずヒヌカン様の前で手を合わせて色々お願いするのだそうです。なぜなら、その日は新月と満月の日に当たり、パワーがたくさんある日で願いが通り易い日でもあるからと教えてくれました。


「沖縄ってすごい」

「でしょー」


それからと言うもの、私と千鶴さんはひたすら神様系の話に花が咲いて気付いたら2時間も台所で立ち話をしていました。


「神様の話題でここまで話したのは初めてだよ」

「私もです」


ヒヌカン様から土地神様、付喪神(つくもかみ)の話になり最終的には天照大御神(あまてらすおおみかみ)の話と大きくなってしまったのです。


天照大御神の話をする高校一年生って滅多にいないよね。他所からすればおかしい子に見えるかな?うん、絶対におかしい子に見えるや。


「それじゃぁ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


話を終えた私は千鶴さんと別れ私たちが寝る場所へと向かいました。ちょうど、部屋の前で私はなんで台所に行ったのかと言う理由を今になって思い出してしまったのです。


「あっ!水飲むの忘れてた」


その場でクルッとUターン。私は水を飲みに行くためもう一度、台所に向かいました。

キジムナーも民泊先の老夫婦もモブですが

次話では少しだけ出てきます


ちょっとおまけ

キジムナーをWikipediaで調べたら

「魚介類を主食とする。とくに魚の目玉(左目)が大好きで、目玉だけがない魚の死骸があったら、それはキジムナーの食べ残しと伝えられる」と表記してありましたので、今回、お話の中に出て来たキジムナーには魚の目玉を持たせてあります。

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