111・修学旅行1日目 ~後編~
首里城の見学も夕飯もお風呂も終わり、時は流れ現在、私は今夜の宿泊先であるホテルのめいちゃんとほのかちゃんが泊まる306号室でいつものメンバーと一緒に消灯までの時間をゆっくりと過ごしています。いつものメンバーと言うのは、ゆいちゃん・あやのちゃん・めいちゃん・ほのかちゃんと私。
「トランプかウノどっちにする?」
ホテルの部屋割りは1部屋2人。ちなみに隣の307号室は私とあやのちゃんの部屋でゆいちゃんは308号室。
「「「「ウノ!!!!」」」」
ほのかちゃんの提案に私たちは迷いなくウノと答えました。ベッドとベッドの間にある隙間に丸いテーブルを置いてそれぞれベッドに座り、いざウノの始まりです。
「ウノって久しぶり」
緑色の3のカードを出しながら言ったのは、めいちゃん。寝巻きとしてバレー部オリジナル上下赤ジャージを着ているのが彼女らしい。しかも、ジャージの上からでも女の子らしく出るところは出ていて引き締まっているところは引き締まっているのが分かる羨ましい体型。
「あーそれ分かるわ」
お次は、ほのかちゃん。
白のシャツに紺色のカーディガンを羽織りいつもポニーテールだけど今は長い黒髪を下ろしていて、ちょっと大人っぽい雰囲気を醸し出しています。
それに、スキニーのような足のラインを強調するようなズボンを履いてどこか危ない感じの色気があったり。うーん、なんて言うのかな、あっそうか、綺麗なバラには棘があるって言うやつか!
「はい、緑の5」
「じゃぁ、はい!」
青の5のカードを出したのは、ゆいちゃん。
かわいいもの好きー!な、ゆいちゃんは上下ピンク色のパジャマで言わずもがな、えぇ、はい、ナイスバディですよ。
それにしても、この3人はどうしたらあんなスタイルになるのかな。私も毎日牛乳を飲んでるけど身長は伸びないし色々、成長しないし。
「じゃぁ、ドロー2の青と緑ね」
「ええっ!あやのちゃん鬼だ」
ドロー2を2枚と言うことはカードの山から4枚引かなくてはなりません。そんな酷いことをしたのは、私がバイトしている和菓子屋二階堂の次期跡取り娘のあやのちゃん。
「あれ、メガネは?」
「今はコンタクトだよ」
今のあやのちゃんの服装は赤いシャツに白の長袖パーカーの上着を着ていて、下はジャージのようなズボン。そして、これまたほのかちゃんと同じく長い黒髪を下ろしています。
「彩乃って、メガネ外すと美少女でしたっていうパターンだな」
「そうかな?」
あやのちゃんに聞いたほのかちゃんは美少女よりも大人の女って感じかな。まだ、高校一年生だけど。はぁ、ほのかちゃんの将来が恐ろしい。
「水戸部は良いよねー。こんなかわいい彼女がいてさ」
「へー、水戸部君に彼女がいるんだー」
当の本人はまるで他人事のように話しています。その言葉に私たちは食いつきました。実は私もあやのちゃんと水戸部さんの関係が気になっていたんだよね。
「えっ!彩乃と水戸部って付き合ってるんじゃないの⁉︎」
「はははっ!なにそれ、違うよー」
「だって、昼休みになると、よく話しているし、こそこそ何かやってるし、」
「水戸部君とは同じ願いを持った同盟なんだよ」
同じ願いってなんだろう。
「嘘つけ〜。本当は違うんだろー」
「じゃぁ、水戸部君に聞いてみて。絶対に違うって答えるから」
「そのドヤ顔は本当なんだね」
いつの間にかウノの手は止まっていて、気が付けば修学旅行の定番である、恋バナをしていました。やれ、ゆいちゃんに好きな人はいるのかーとか、ほのかちゃんの好きなタイプは?とか。私はそんな友達の話を聞く側で質問される事はないだろうと踏んでいたけど、やっぱり時が来てしまった。
「もえかちゃんは好きな人とかいるの?」
「私ですか⁉︎」
あやのちゃんが聞いてくると、すかさず皆さんがニマニマと私を見てきます。でも、ゆいちゃんだけはふくれっ面。うーん、まさか来るとは思ってなかったからなんて答えば良いんだろう。私が好きなのは鬼さんだし、かと言って鬼さんをどう説明すれば…?流石に同棲してるだなんて言えないし、そもそも、人じゃないし。
「委員長と仲良いですよね〜」
「ゆいちゃん、なぜ敬語」
その後も特にあやのちゃんがガツガツと聞いてきて、なんだか私は狼に襲われ逃げ場を失った羊みたいな状況に追い込まれ、しどろもどろ。
「委員長とは友達だよ。それに私、好きな奴いるし」
人ではないから、奴と言いました。すると、さっきまでガツガツ聞いてきたあやのちゃんはピタッと固まり、ゆいちゃん達は目を輝かせながら迫ってきます。
「だれ!誰なの!」
「鬼さん」
「えっ、お兄さん?」
「萌香にお兄さんなんていたっけ?」
あやのちゃんは顎に手を掛けて真剣に悩み中。今、思ったんだけどなんであやのちゃんは委員長と私のことを気に掛けるのかな?
「あー、お兄さん的な存在?」
「で、誰の事?」
畳み掛けるようにほのかちゃんに質問され、困り果てた私は言葉を選ぶように話しました。なんせ、相手は人じゃないからね。
「誰とは言えないけど私よりも歳上で、料理は下手でたまに馬鹿なことは言うし、変なところで勘が鋭くて困るけど、表情がコロコロ変わって面白いかも、それに、何より一緒にいて安心するし。あっ、でもたまに危険な時もあるよ!そうだね、後は不意打ちで憂い顔とか見せられるとドキッてするかな。なんだかいつもの違う感じでさ。笑顔で誤魔化すのを治したきっかけも…」
しばしの沈黙、嫌だ私ったら何を言ってるの⁉︎これ、完全な惚気だよ!これじゃぁ、公衆の目の前で頬にキスしてきた鬼さんと変わらないじゃん!いやー、恥ずかしいわぁ。いやー!!!
「お幸せに」
「誰かブラックコーヒー頂戴」
「はわわわわ」
「もえちゃん、かわいい」
いやー!羞恥プレイだ!誰だよこんな風にしたのは!あっ、私だった。どうしよう、自分で言っておいて地雷踏むとかあり得ないよ!
「もう嫌だぁ」
私の切なる嘆きは部屋の中で大きく響きました。




