110・修学旅行1日目 ~前編~
今回、萌香の友達の出番が多いです。
ゆいちゃん、あやのちゃん
ほのかちゃん、めいちゃん
の4人が萌香の友達
詳しくは『9・夏休み開幕』にて
朝早くに3泊4日分の荷物を持って学校へ集合。そして、バスに乗り2〜3時間掛けて空港到着。
「飛行機、嫌だ。乗りたくない帰りたい」
「もえちゃん、大丈夫?」
飛行機が離陸するまで残り5分、現在私は飛行機の中で震えながら大人しく座っています。席がゆいちゃんの隣になれたのは良いんだけど不幸な事に私の席は窓側なんだよ。左を見ると外が見えちゃうんだよ。高所恐怖症の私にとってはまさに地獄のようです。
「萌香、生きてるか?」
「高所恐怖症だったんだね」
私の後ろの席からほのかちゃんとあやのちゃんの声が聞こえるけど今はそれどころじゃない。すると、通路を挟んだゆいちゃんの隣の席から、めいちゃんの笑い声が聞こえてきました。
「生まれたての子鹿みたい」
「しょうがないでしょ。怖いものは怖いんだから」
「おおっ!萌香ちゃんが怒った」
「怒ったもえちゃん、かわいいー」
ゆいちゃん、苦しいからそんなに強く抱き締めないで。ジタバタと私がゆいちゃんの腕の中でもがいていると突然、機体が揺れて動き始めた。ついに、ついにこの時が来てしまったのか!
「あっ、浮く」
自分で言ったのかそれとも誰かが言ったのか分からない。でも、私の耳にそう聞こえた時、機体は地面から離れていた。初めて飛行機に乗った感想はジェットコースターに乗ったみたいだとか引っ張られているみたいだとかじゃなくて『怖い』その一言だけ。だから、もう。
「おろして〜」
「もえちゃん、ほら、外みてよ。街が小さいよ」
「いや〜」
私はゆいちゃんの隣で泣き叫んでいました。
景色?何それ美味しいの?ってな感じで飛行機の中を過ごした訳、辛うじて機内でお昼ごはんのお弁当を食べたのは覚えているけど後のことはさっぱり覚えていません。
と言うか、目を瞑って寝てた。
カシャカシャカシャ
どれくらい時間が経ったのかな。シャッター音に気が付いて目を覚ますと携帯を持ったあやのちゃんがメガネを掛け直しながら笑顔で目の前にしゃがんでいました。実は、私とゆいちゃんが座っている席の前は非常口となっていて少しスペースがあるから、こうやってあやのちゃんがしゃがむ事が出来るのです。
「もえかちゃんの寝顔を売ったら高値で売れるかも」
「あれ、そんな感じの言葉どこかで聞いたことあるような」
確か、火ノ江神社の夏祭りに行く前にそんなことを言われたような気がする。
「もしかして、寝顔撮った?」
「記念だよ記念。ほら、もう着いたよ」
あやのちゃんは席に戻る際にいつの間にか隣で寝ていたゆいちゃんも起こして、脱兎の如く消えてしまいました。
「やっと、終わる」
どうしてだろう、飛行機に乗っただけなのに、疲労感が体の内側からどっと出て来たよ。まだ、修学旅行はこれからだって言うのに。はぁ、私も歳をとったかな。
* * *
沖縄に着いたのが大体昼の1時くらい。そして、飛行機を降りてバスに乗り、次に向かった先は首里城です。えー、今日のこれからの予定は首里城に行った後、どこか広い建物に行き戦争を経験した方のお話を聞いてから、宿泊先のホテルに行くという流れ。
「シーサーがいっぱい、海キレイ」
移動している間、バスの中からキレイな海とお店や民家にシーサーの置物が見えました。私が暮らす火ノ江町は山に囲まれているから海を見るなんてあり得ないことだし、その前に私の人生で海を見たのはこれが初めてだ。
「委員長、見て見て!」
「ん?どうしたの」
信号待ちをしている間、私は隣の席に座っている委員長の袖を引っ張り窓の外を指さした。私の指の先にはとある民家の屋根にメガネを掛けたシーサーと普通のシーサーが置いてあったのです。
「あのシーサー委員長とお揃いだよ」
「じゃぁ、その隣のシーサーは宮川さんかな」
爽やかな笑顔で言う委員長。でもさ、委員長ってこんな事を言う人だったっけ。それと、鬼さんと一緒に妖怪界から帰って来た時、鬼さんに言われた一言がまだ、胸の奥で引っかかっていて、委員長の言うこと全てに色々と考えてしまう。
やっぱり自意識過剰かな。
「イインチョウメ…ヨクモもえかちゃんノトナリヲ…イチャツキヤガッテ…」
「はいはーい。ゆいちゃん一旦、落ち着こうねー。誰かヘルプ(小声)」
後ろの席から、ゆいちゃんが委員長に対して何か言っているけど聞かなかったことにしよう。それと、ゆいちゃんを宥めているあやのちゃんから、ヘルプという声も聞こえるような〜きこえないような〜。どっちだろう?
「宮川さん遠い目してるよ」
シーサーが1匹、シーサーが2匹、シーサーが3匹、シーサーが4匹、シーサーがって、私はどこに行っていた。
「委員長、ただいまです」
「よく分からないけど、とりあえずおかえり」
現実逃避に羊を数えるようにシーサーを数えていたらいつの間にか遠い目になっていたらしい。恐るべしシーサーよ!
「おーし、着いたぞ」
すると、担任がバスのマイクを使って首里城に着いたことを教えてくれました。
さてと、行きますか。
ちなみに、萌香の友人ゆいちゃんは萌香の事を友達よりも妹的な感じに思っております




