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107・指名手配されていました

飲んで駄弁って〜

74話が少し関係あります

外へと投げ出されたカッパさんが全力で戻ってくると、すぐに鬼さんとカッパさんの些細なる喧嘩が幕を開けたのです。


「嫁さんはワシの嫁さんッス!」

「今更何を言ってるんだよ」

「そもそも何でヘタレソウキさんが嫁さんの隣に座ってるんッスか!」

「オレはヘタレじゃねぇし。と言うかカッパ酔っているからって何でも言って良い訳じゃぁねぇぞ」


はぁ、低レベルな喧嘩するのは良いけど私といぬがみさんを挟んで喧嘩をするのはやめてもらえませんか?右隣をちらりと見るといぬがみさんは私と同じでため息をついて日本酒を飲んでいました。


「いつも、こんな感じなのですか?」

「ん、あぁ。まぁこんな感じだな」


なんだか今、私の脳内では暴走するカッパさんと鬼さんを止めるいぬがみさんの姿が映し出されています。こりゃ、性格がお母さん気質になるよね。


と、ここで店主に頼んだ鯖の味噌煮と銀杏の素揚げとナスの煮浸しが出てきました。もちろん飲み物はジュースもあったけど頼んだ品にジュースは合わなさそうなのでお冷です。


「美味いか?」

「美味しいです」


只今絶賛喧嘩中の鬼さんを差し置いて、私は鯖の味噌煮を頂きます。うわーこれ、しっかりと味噌の味がしてご飯が欲しくなる。あっ、いぬがみさんの食べてる豚キムチ春巻きもおいしそう。視線を春巻きの方に向けているといぬがみさんが左目の傷を掻きながら、なんと!春巻きを1つ私のお皿に乗せてくれました。


「ありがとうございます!」

「ソウキもお前も似てるな」


いぬがみさんはまたも左目の傷を掻き苦笑いしながら答えます。そう言えば、前々から気になっていたんだけど、いぬがみさんの目の傷って絶対に刃物か何が鋭利な物で切った傷だよね。一体、何があったのかな?暫くの間いぬがみさんの傷を見ていたら、私の視線に気付いたらしく、春巻きをお皿に乗せようとしてくれました。いや、春巻きはありがたいんだけど今はそっちじゃなくて。


「いやいや、春巻きではないんです」

「それなら、どうした?」

「あー」


聞いても良いのかな?もしかして、嫌な記憶とかだったら聞いちゃダメだし。うーん、でもきっといぬがみさんなら多少傷を抉ることを言ってもへこまないよね。と言うことで私はいぬがみさんに目の傷のことを聞いてみました。


「これはちょっとした喧嘩した時に付けられた刀傷だ」

「喧嘩?」


いぬがみさんの話によると、今から何百年も前。時は大体、江戸時代くらいかな、日本中で小さな妖怪の集団が多く集まり組合を作り他の組合同士で縄張り争いがあったらしい。


「まぁ、色々あって喧嘩はオレが勝ったんだが最後の最後で刃がボロボロの刀で切られたんだっけな。」

「へぇ、そんな事があったんだ。じゃぁ、その傷を付けた妖怪って誰ですか?」


すると、いぬがみさんは入り口近くにあったカラーの指名手配の紙を指しました。ここからでもその指名手配の紙はしっかりと見える。


「真ん中の黒目黒髪の鬼だ」


指名手配の真ん中に一際大きく描かれた鬼を見て私は思わず息を飲んでしまいました。なぜなら、その紙に描かれていたのは、私から寿命を奪ったあの西園寺先輩。その時、ふと昔の記憶が蘇ります。


『勝つためだ』

『は?』

『俺は昔、戦いで奴に負けた。次は俺があいつに勝つ』

『奴?よく分かりませんけど、要は相手に負けて悔しかったってことですか…考え方がお子様ですね』


もしかしてあの時、西園寺先輩が言っていた「あいつ」はいぬがみさんの事だったの⁉︎そう言えば確かに西園寺先輩は私を襲った時もボロボロの日本刀を持っていた。


そして、名前の下にあるちょっとした説明文には、人間から寿命を奪い続ける罪人。これまでに奪ってきた人間の数は100人以上。見つけたら烏天狗警察署までご連絡して下さい。と書かれてありました。


「100人も…犠牲者がいるなんて。あの!もし捕まったら今までに奪ってきた寿命とかは戻ってきたりはしませんか?」

「さぁどうなんだ?俺は警察じゃねぇから、そう言うことは知らねぇな。あー、知ってる奴はやっぱり警察家系の烏天狗一族だけか」


実は妖怪界(こっちのせかい)の警察は全員烏天狗だと鬼さんから聞きました。なんでも、烏天狗として生まれた者は必ず警察官にならなければならないルールがあるらしい。誰が作ったんだろうね。


「俺の知っている奴に烏天狗はいないな」

「そう、ですか」


烏天狗が知っていると言うなら、門番のあの方達も知っているはず。聞くならプレハブ小屋にいた黒山さんに聞いてみよう。だって、門番の2人は見た目がかなり怖くて話せないんだよ。


「よし!」


もしかしたら、私の命が伸びる方法が見つかるかもしれない。それでも、人間よりも長生きする鬼さんとは少しの間しか居られないけれど。なんて、悲しい事を考えていても仕方が無い、ここは前向きに考えよう。


「さて、話が変わりますがいぬがみさん」

「なんだ?」


私はいぬがみさんの脇腹に頭突きをするような勢いで思いっきり抱きつきました。そして、案の定、煙を立てて子ダヌキ姿に変身。


「いぬがみさんって妖力が切れるか驚くで子ダヌキ姿に戻るんですよね」

「ちっ!」


えぇ、ちょうど癒しが欲しくてね。私から何かを感じたいぬがみさんはすぐに逃げようとしましたが、その前に私がいぬがみさんの尻尾を捕まえて、ギューと抱きしめました。


「あー、柔らかい。これは癒される〜」

「やめろ!」

「いぬがみさんずるいッス」

「おい、いぬがみ!萌香から離れろ!」


抱きしめるだけでは物足りないので、尻尾をもふもふしたり、とにかく私の気が済むまでもふもふし続けました。


「萌香、オレも柔らかくなるから!」

「鬼さん、どうやって柔らかくなるの」


鬼さんから謎の宣言を聞いた私は思わず吹いてしまいました。

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