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100・買い物という名のデート①

とある休日、ついにこの日がやって来ました。和菓子屋二階堂のバイトから帰ってきてすぐにコンパクトに折りたためる事が出来る買い物袋をポケットの中に数個入れて戦準備(かいものじゅんび)を整え、いざレッツゴーです。ちなみに我楽多屋のバイトは店主である蓮さんが親戚の家に行くそうなので今日はお休み。


「その前に、妖怪界(むこうのせかい)にはどうやって行くの?」


ドアの鍵を閉めながら、私が風邪の時にお礼として渡した冬服を着てくれた鬼さんに声を掛けると人差し指を下に向けられました。私が住む部屋は八幡荘の2階、下と言うことは1階という意味?それともなんだろう。


「ここから近いよ」


鬼さんの隣を歩きながら八幡荘の1階に降りて、辿り着いたのは203号室の真下にある103号室のドアの前。確かここは空き家で誰も住んでいないはず。


「ここ?」

「あぁ、近いだろ」

「近いけど、まさかこのドアを開けたら妖怪界(むこうのせかい)って事?でも、このドアって大家さんから鍵を貰わないと開かないよ」


私がドアノブをガチャガチャと回してもドアが開く気配は全くありません。一体、どうやったら行けるのでしょうか。


「こうやって」


ガチャり。鬼さんがドアノブを一捻りすると、なんとドアが開きました。ちょっと待ってさっき私がやっても開かなかったのになんで鬼さんがやると開くの⁉︎そもそもこの部屋には鍵が掛かっているのに。


妖怪界(むこうのせかい)に行くための入り口はランダムにたくさんあって全部こんな感じのドア。しかも妖が触らないと開けられない仕組みになってるらしい」

「へぇ、八幡荘の103号室が異世界へと繋がる魔法の扉だったのね!」

「萌香、演技下手」


わざとらしく両手を胸の前で組みちょっと夢見がちガールのように言ってみたました〜。それにしても演技下手って酷くない?そう思いつつドアの中を見てみると横幅は大人二人が余裕で横に並べる広さで奥へと続く長い通路があり足元には転倒防止なのか狐火のような青白い炎が浮かんで真っ暗ということはないです。


「あっ、そうだ。いぬがみさんがたまに人間が迷い込むって言ってたんだけど妖怪しか開けれないドアなのになんで人間が迷い込むの?」

「多分それは、開けた妖が閉め忘れて開けっ放しにしたんだろうな」

「鬼さんはちゃんと閉めたね」


ドアをしっかりと閉めたのかを確認した後、私と鬼さんは薄暗い通路を歩きます。コツンコツン、コツンコツン、足音が響くね。この通路はひんやりとしていて夏にはピッタリの涼しさだけど秋には厳しいかな。


「鬼さん、今日の夕飯は何が良い?」

「萌香」

「分かったチゲ鍋ね。辛いのをたくさんいれて激辛にしてあげるよ!」


スポーツドリンク並みの爽やかな笑顔で言った鬼さんのアホな答えをスルーして、私は鬼さんが苦手とする激辛料理を言いました。これは、ほぼ嫌がらせだね。


「激辛料理でも萌香の作った料理なら辛くても美味そう」

「じゃぁ、本当にチゲ鍋にする?」

「良いよ〜」

「良いの⁉︎でも、鬼さん辛いの苦手でしょ?やっぱり辛いのはやめとくよ」

「萌香、さっきから矛盾してるけど」


さっきのは冗談で言ったのに、まさかこんな返しがくるとは思っていなかったから素直に驚いた。それと、さっきからずっと思っていたんだけど、鬼さんは私の歩幅に合わしてゆっくりと歩いてくれているんだよね。だから、こうやって私が隣で歩ける。


「鬼さんの反応に驚いただけだよ」


少し、鬼さんの方に近づくと私の右手の甲が鬼さんの左手の甲に軽く当たった。


「あっ」

「手繋ごう」


優しい笑みを浮かべて差し出された左手に私は指を絡めるように手を繋ぐ。掌からは鬼さんの暖かい体温が伝わる。ただそれだけなのに自然と口元がにやついてしまう。


「ほら、ついた」


目の前には木で出来た味のある古い扉、それを鬼さんが開けると目を開けるのが辛いほど眩しい光が視界に飛び込んで目を瞑ってしまいました。


「ん…」


目を開けると、ここはさっきの薄暗い通路ではなく歴史ドラマに出てくるような大きな門の前に立っていました。後ろを振り返るとそこには森だけがあり行き止まりです。


「まず萌香はあの門の前にいる2羽の烏天狗に入場許可を貰わないといけないんだ」

「厳しいね」


門まで僅か数メートル、その短い距離を私と鬼さんは恋人繋ぎで歩き始めました。

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