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006 氷結の隼、大地の大亀

 shadowから電車を乗り継ぎ、妻斗は御用達のコーヒーショップにて豆を購入。純粋なコスタリカコーヒーを扱ってるのは近くで此処だけだ(普通は他の産地の豆と混ぜられている)。それに俊行の腕もあって、shadowのコーヒーはかなり美味しい。

 ついでにその近くで食材の類も購入し、現在妻斗は駅まで向かっていた。結構な量の荷物を抱えているため、それなりのいい運動になる。と言うか、なり過ぎだ。もっとも働き出して結構立つのでもう慣れたが。

「うぃー、相変わらず重ぇ…」


 その時だった。

 彼の頭の中で、警報が鳴った。

 何と形容すればいいのか、強いて言うなら、第六感が直接訴えかけているような感覚。

 ホムンクルスが出現したのだ。

「…!近い!」

 妻斗は荷物を抱えたまま、現場まで懸命に走った。




 休日で賑わう市民公園。その場所が、パニックに覆われていた。

 逃げ惑う人々を面白そうに見つつ、楽しむように歩いて追うのは、2体の黒いホムンクルスだ。名を、スタッブビートルとバイトスタッグと言う。

 なんとか到着した妻斗は買い物の荷物を脇のベンチに置き、左手の甲の魔法陣に右手を置いて呼びかけた。

(レイナ!)

(分かりました!)

 次の瞬間、飛来した一筋の光が妻斗の左腕を覆い、魔道具『ウィザーズガントレット』へと姿を変えた。ギヴァーと魔導師が離れた場所にいても、こうすることによって変身することが可能なのだ。

 手の甲から呼び出した鍵を掴み、ウィザーズガントレットに挿入する。

『チェンジ:サンダー!レディ?』

「魔導変身、王牙!」

 腰の横で両手を構えたのち左拳を突き上げ、両腕をクロスさせてから横に広げたのち、両拳をぶつけ合わせる。

「着装!」

『ゴー!』

 出現した魔法陣によってスーツを装着し、アーマーが装着されるや否や、妻斗はオウガとなって2体のホムンクルスに踊りかかった。

「賢者の魔導師か!邪魔くさい!」

 バイトスタッグが手に握ったものを地面に放った。チェスのポーンの駒を大きくしたような、黒いツールだ。

 そこから黒い煙の様な物が湧き出たかと思うと、8体の異形の物が姿を現していた。

 ハイディティールな通常のホムンクルスと比べるとやや無個性なボディ。つり上がった大きな複眼に、強靭なあご。

 ドールアント。下級ホムンクルスと呼ばれる、所謂戦闘員だ。

「ちっ!邪魔くせえのはこっちだよ!」

『アームズ:サンダーブレイド!』

 愚痴りながらもサンダーブレイドを呼び出し、ドールアントに立ち向かうオウガ。1体1体は大した力を持たないが、8体が束になってかかってきては流石のオウガも手を焼く。

 正面から飛びかかってきた1体を切り伏せ、そのまま弾みをつけて後ろの1体にも斬撃を見舞う。続いて上段回し蹴りで横から襲いかかって来る個体を薙ぎ払う。しかし、通常攻撃ではやはり決定打にはなりえない。そう判断し、オウガは新たなキーをサンダーブレイドのスロットに装填。

『ファイナル:ボルティックディバイド!』

 剣を持った手を後ろに振りかぶり、その弾みで刃を振るいつつ1回転。ハイパワーの雷の魔力を受けたドールアントが8体まとめて爆散した。下級なので、キーは出ない。

 スタッブビートルとバイトスタッグに挑みかかろうとするオウガ。しかし、既に2体のホムンクルスは人々に向けて迫っていた。

「な…ヤバい…」

『まずいです、このままでは!』

 レイナに促されるまでも無い。サンダーブレイドを構え、オウガは突進する。しかし、間に合わない。

 段差に足を取られ、転んだ女性に、スタッブビートルが振り上げた貫手が迫る!

「やらせるかぁぁぁ!!!!!!!」

 叫びながらオウガが剣を振り上げた、その時。

 突如、予想もしなかった方向から飛来した何かが、2体のホムンクルスの甲皮を叩いた。

「…え?」

 驚いたオウガが、その『何か』が飛んできた方向に目を向ける。



「全く、ソロで2体を相手にするなんて、アンタなかなか無茶やるじゃない。」

「ドールアントはお前がやったみたいだし、ここからは僕らに任せろよ。」

 すぐそばの倉庫の屋根に、2人の人型のシルエットが。

 一般人でも、ホムンクルスでもない。

 それぞれ色違いのボディスーツとアーマーに身を包んだ戦士の姿。

 賢者の魔導師に他ならなかった。

 全体的な印象はオウガに似ている。しかし、オウガが黄色いボディスーツと狼の意匠をあしらったアーマーを身につけているのに対し、二人の装いは違った。

 片方はスカイブルーのボディスーツに隼の意匠をあしらった白いアーマーだ。凍てつく氷を連想させるその姿は何処となく女性的なシルエットで、手には銃剣付きのカービンライフルが握られている。

 もう片方は黒いスーツに、同じような色だが銀のラインが入ったアーマー。採用されている意匠は、恐らく亀。こちらは相棒(と思われる魔導師)とは対照的な、均整がとれているがよりマッシブな姿をしている。手にした武器は、地盤すら叩き割れそうな力強さを感じる大きな斧だ。

 オウガのヘルメットのバイザー裏に、情報が表示された。銃を持った方の名はソウカ、斧持ちがゴウキ。

「も、もう2人いるだと…?」

「関係あるか!纏めて潰すまでだ!」

 2体のホムンクルスは頭に右手をあてがう。すると、スタッブビートルはツノ、バイトスタッグはアゴが前腕に装着された。どうやらあれは飾りではなく、武器らしい。

「お、俺も行った方が…」

「任せろって言っただろ?お前はそこで見てろよ。」

 ゴウキがオウガに言う。何となくナルシストな感じの声だ。意外なことに、ほぼ同い年くらいの印象だ。

「そうそう、本物の魔導師ってやつを見せてやるわ。」

 ソウカもそう言うと、ゴウキと共に2体のホムンクルスに向かって行った。

 ソウカが相手取ったのはスタッブビートルだ。銃弾で敵を牽制し、適切な距離まで接近すると先端の銃剣で勢いよく斬撃を加える。スタッブビートルも負けじと腕の武器を振るうが、ソウカはそれを銃身で防ぎ、ライフルストックでスタッブビートルの顔面を殴りつけ、後ろに飛びのいて矢継ぎ早にフルオート射撃を叩きこむ。

 ゴウキの戦いぶりもなかなかのものだった。バイトスタッグの腕の武器が大きく広がり、その名の通り噛みつく(バイト)様な攻撃を見舞う。しかしゴウキはそれを腕で防ぐと万力を込めて無理矢理開き、一瞬生まれた隙を狙って斧で一撃を加える。重量を乗せた一撃は、見るからに頑丈な甲皮をもってしても多大なダメージを防ぎ切れない。大きくよろめいたバイトスタッグに、おまけとばかりのニーパッド。

「…すげえ…」

 2人とも、自分の力の特性を完璧に掴んでいる。自己流で戦ってきた自分よりも、余程様になっている気がする。

「そろそろ終わらせるわよ!」

「了解。」

 ソウカとゴウキが同時にキーを呼び出し、武器のスロットに装填。

『ファイナル:デッドリィブリザード!』

『ファイナル:インパルスチョップ!』

 青年の様な声と、レイナに似た感じだがより爛熟した女性の声が響く。そして、ソウカの銃から雨嵐のごとく放たれた無数の氷の飛礫がスタッブビートルを爆散させ、ゴウキの斧は巨大化して振り下ろされバイトスタッグを打ち砕いた。

「ぐおぉぉぉ!!」

「ぎゃあぁぁ!!」

 石化して砕け散ったホムンクルスの残骸からキーが飛来して、二人の魔導師のウィザーズガントレット内部に吸い込まれていった。


「ホントすげえなお前ら!」

 オウガは二人の鮮やかな勝利を見るや、賞賛の言葉を言った。

「まあ当然だね。」

「いや、凄いって言うか、ちゃんと自分の特性を理解して戦えばこれくらいは出来るわよ?」

 ゴウキは印象通りの、悪く言えば若干高慢な感じに言い、一方のソウカはどちらかと言うとあきれた様子だった。

「いやいや、俺なんか全然そんな領域じゃねえしさ。」

『自分でも分かってるんですね。』

「るっせぇよ!」

 一言吐き捨ててからオウガは変身を解いた。

 すると。


「あぁぁぁぁ!!!!」

 突然、ソウカが妻斗を指さして叫んだ。

「え、俺?」

「ウソ…アンタ…」

 なんかオウガ達が圧倒してばっかでつまんないっすね(汗)

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