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003 その名はオウガ

 ソードマンティスと相対しながら、オウガは身体に変化が起こっているのを感じた。

 身体の底から、力が滔々とわき上がるようだった。自分の生命力が、完全にその力を発揮したような感覚。

 これなら、やれる。

「契約したてなら…!」

 ソードマンティスが言いながら殴りかかって来る。なんとかパンチの軌道を見切り、側頭部にチョップを見舞う。するとどうだ。拳銃弾をしこたま受けてもかすり傷一つ負わなかったソードマンティスが大きくよろめいた。明らかに、ダメージを受けている。

「オラァ!」

 右ストレート、キック、チョップ、膝蹴り、左フック、回し蹴り、右ジャブ。全てがソードマンティスに吸い込まれるように命中。もう一度蹴りを叩きこもうとすると、さすがに危機を感じたのかソードマンティスは飛び退いた。

「ンのヤロォ…やってくれるな…」

 ソードマンティスは両腰に手を伸ばすと、そこに刺さった武器を引き抜いた。肉厚の刀身が前方に湾曲した、大振りのグルカナイフだ。それを二つ構えた姿は、まさしくカマキリその物。

「え!?オイオイチョイ待て武器は卑怯…」

「卑怯もラッキョウも知った事か!」

 さすがに丸腰では少し分が悪かった。今の(・・)オウガには武器がない。受ける物がないため、かわさないと確実に斬られる。必死に回避するが、それでも2,3発の斬撃がオウガのアーマーを捉えた。

「ぐあぁっ!待て待て、日本は銃刀法でぬおぉ!刃渡り15センチ以上の刃物はのわぁ!携行禁止がぁっ!」

『ホムンクルスにそんな理屈が通じると思いますか!?』

「分かってるけどようわっ!だからあぶねえっての!」

 右上から斬りおろされた斬撃を紙一重でかわすと、その手に握られたナイフ目掛けてキック一閃。弾き飛ばされた刃が横の壁に刺さる。

「よっし!」

 オウガは横に飛びのくと、壁のナイフを抜いてソードマンティスを切りつけた。そしてよろめいた体目掛けてさらに連撃を叩き込み、裏拳で残ったナイフも弾き飛ばしたのち、顎にハイキックを打ち込んで吹き飛ばす。

「っし!こいつで終わりだ!」

 オウガの左手の甲の半透明のパーツが黄色い光を放ち、変身に使ったのと違う鍵が回転しながら出現。オウガはそれを掴むと、右腰に装填されたデバイスに鍵を差し込み、側面についた狼の紋章を手のひらで叩いた。

『ファイナル:デモリッションファング!』

 少女の声が響くと同時に、オウガがソードマンティス目掛けて空中に正拳突き。するとソードマンティスの足元に黄色く輝く魔法陣が出現。そこから現れた電撃の鎖が、ソードマンティスを縛り上げる。

「うおっ!う、動けん…」

 オウガは両手で手刀を作ると、左手を横に払い、右手を縦に振り下ろした。放たれたチョップの軌道が、空中で雷の十字を形成。

「オォォォォォォラァァァァァァァァァァ!!!」

 オウガはその交点目掛けて飛び回し蹴りを叩きこんだ。すると雷の十字は回転しながらソードマンティス目掛けて飛翔。空中で撚り合わされた電撃は一筋の光条と化す。そして、命中の直前、放たれた雷撃が狼の頭のような姿に変わり、咆哮を上げながらソードマンティスをその牙に捕らえた。

「ぐあぁぁぁぁ!!!」

 断末魔の声を上げるソードマンティスが爆発を起こす。爆炎が晴れると、そこには必殺の一撃を受けた姿のまま石化したソードマンティスの姿が。直後、石化したその身に無数の亀裂が入り、そのままバラバラに砕け散った。

 空中の、ソードマンティスが変身のために鍵を刺した穴があった辺りに、淡い光を放って鍵が浮いていた。鍵は引き寄せられるようにオウガに飛来し、左手の甲の半透明のパーツの中に吸い込まれていった。

「ふー。」

 オウガは一息をついた。



 その闘いを、そばの建物の屋上から見ていた影があった。

 人ではない。ホムンクルスだ。トカゲと蝙蝠を掛け合わせたような、全ての光を吸収するかのようなマットブラックのボディを持ち、ソードマンティスとは次元が違うねっとりとした邪気をその身にまとわせる、異形の姿。

(食事に出ただけのつもりだったけど、まさか新しい魔導師が見れるなんてね…)

 彼女は組んだ腕を解くと、どうすればいいか考えた。

 本音を言えばこの場で潰しておきたかった。オウガのような存在はすでに何人か目覚めている。減らしておいて損はない。しかし、封印から目覚めて間もないこの体にはまだ力が十分になじんでいない。言うなれば、本気を出したくても出せない状態なのだ。相手も生まれたてとは言え、さすがにそんな状態で戦いを挑むほど、彼女は向う見ずではなかった。

(…戻るしかないか。あと、追手のソードマンティスがやられたってハスターに言っとかないと。)

 彼女は左手首に刺さった2本の鍵を抜き、人間態になる。黒いワンピースを身にまとい、同じく黒い長髪を後ろで二つの三つ編みに結った、何処となくボーイッシュな少女だった。

 彼女は身をひるがえすと、その場から去って行った。

 いかがでしたか?オウガの記念すべき初戦闘です。ヒーローの戦闘シーンって思えば久々に書いたな…

 所で、最後に出てきたホムンクルスが「ハスター」と言っていましたが、本作においては幹部クラスの怪人にはクトゥルフ系の名前を冠する事にしています。でもクトゥルフから取るのは名前と大まかな能力だけで、他は全部クトゥルフのクの字も無い僕の創造にします。なので、この小説がクトゥルフものかと思った方は、申し訳ありません。

 ついでに言うと、普通の怪人は『武器、または特性を現す英単語+モチーフとなった生物』で名付けます。

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