表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

001 始まりは唐突に

「マスター、洗い物終わったッすよ。」

「おぉ、ご苦労さん。」

 厨房で、稲森妻斗(いなもりさいと)は店主の守川俊行(もりかわとしゆき)に報告した。

 此処は喫茶『shadow』。住宅街の中に店を構える、どこにでもある様な喫茶店だ。ちなみに店名は『シャドー』ではなく『シャドゥー』と読むのが正しい。名付け親は俊行の奥さんの紗奈恵(さなえ)だ。理由は「オシャレでカッコいいから」らしい。何かちょっと違うような気もするが、俊行が出した名前の候補が「オヤジの喫茶」というあんまりにもあんまりなものだったのだからこれでもましな方だ。

「しかし、休みだったってのに色々手伝ってくれて済まねえな。」

「いえ、いいっすよ。済ませてもらってるんだから、こん位はしないと。」

「ハハハ、マジメだなお前。」

 妻斗は高卒で就活を行い、今はこの『shadow』で住み込みで働いている。今のご時世なだけに、かなりの僥倖だったと彼自身思っている。

 ちなみに今は夜8時半。30分前に店は閉店している。紗奈恵は買い物に行っていて不在だ。

 つけっ放しになったテレビからニュースが流れている。何気なしに画面を覗くと、流れていたのはこの数ヶ月何度か発生した、謎の失踪事件に関する物だ。

「しっかし、これ何なんすかね?」

「確かにちょいと気にはなるな。何せ一切何も手がかりがねえってんだし。」

「ですよね。」

 そんな他愛もない話をしていた時だった。


 いきなり、外でドスン、と重たい音がした。続いて、ガッシャン、と何かをなぎ倒すような音。

 ちょうど、店の裏手にある、プレハブ造りのサービスヤードの辺りだ。

「ん?何だ?」

「あ、俺見てきます。」

「おお、ワリいな。」

「いえ、お気になさらず!」

 軽く会釈して、妻斗は外に飛び出して行った。



「たぶん、このあたりの筈だけどなー…」

 マグライトを手に、妻斗は音のしたあたりを見渡していた。

 少しばかり歩くと、何か布の様なものが見えた。ライトを当ててみると、干してあったはずの洗濯物だ。それが、物干竿ごと地面に散乱している。

「…んだ?」

 いぶかしみながら、少し奥の方に光を当てる。すると。

「…え?…ちょっ…ンだこれ!?」


 ライトの光に照らされていたのは、芝生の上に倒れた、妻斗とそう歳の変わらない少女だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ