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わーるど ちぇんじ  作者: 焼き黄粉餅
編入編!
4/7

二年生の俺

 起きたら、そこは知らない天井だった。

 ・・・。


「え・・・?」


 俺の口から、少女の声が零れる。

 ここは、どこだ・・・?

 俺は起き上がり、部屋を見回す。

 床には高そうなカーペットが敷かれていて、部屋の角では季節外れな薪ストーブが炎を揺らしている。中央には木製の机と椅子が置いてあり、食堂のような部屋だった。キッチンと仕切り無しに繋がっている。窓が大きく、庭にも繋がっているらしく、明るいイメージを受けた。

 なんて言うか、大人数の家族が住んでそうな部屋だった。

 どうして、俺はこんなところに・・・?

 俺は俺の姿を確認する。

 やはり、少女のままだったが、服が変わっていた。

 と言うより、服がなくなっていて、毛布に体が包まれていた。

 どうやら、俺のジャージはどこかにやられてしまったらしい。

 もしかしたら、俺は誰かに助けられたのだろうか?

 薪ストーブがついている理由は、雨に濡れて冷え切っていた俺の体を温める為なのかもしれない。そのおかげもあってか、体は温まっている。

 親切な誰かに、俺は救われたのだろうか?それとも、攫われたのだろうか?

 いや、俺を攫って特になる事なんてないだろう。だからと言って、救う理由もないだろう。あの日、何人もの人とすれ違ったが、みんな俺の事を無視していた。見ないふりをしていた。

 と、なると俺は、助けられたのか・・・?

 俺がそう結論付けた頃、部屋の扉が開かれ、そこから三十代くらいの女の人が出てきた。

 見るからに優しそうな顔で、丸っこい人だった。


「あら?起きた?」


 俺を安心させようとしているのか、彼女は笑顔を向けながら、座り込んでいる俺に、目線を合わせた。

 ・・・人当たりの良さそうな人だ。

 何はともあれ、まずは礼だ。


「ありがとう、ございました・・・」


 俺は、頭を下げた。

 それを見て彼女は、


「ちょっと、顔を上げて」


 と、俺に言ってきた。

 さすがに無視をするわけにもいかないので、俺は頭を上げた。


「無事でよかったわね」


「は、い」


「・・・」


 俺の反応に何を覚えたのか、彼女は少し難しい顔をした。

 例えるなら、言いにくい事を言う前みたいな、そんな顔。

 だが、すぐにその顔ではなくなった。

 そして、口を開いた。


「どうして、あんな格好で、あんな所にいたの?」


「っ・・・!」


 核心を突かれ、俺は思わず息を飲む。目を泳がせる。

 どうすればいいんだ?まさか、朝起きたら女の子になってました。なんて言える訳がない。そんな事言ったら、人体実験やらなんやらされてしまう。今の、女の子の俺に人権は無いんだから・・・。

 そんな俺に見かねたのか、


「家出?」


 と、彼女は訪ねてきた。

 彼女なりの、推理だろう。

 だけど、俺は首を横に振った。

 ・・・白い髪が大きく揺れる。


「じゃあ・・・」


「家族は、いません」


 俺は目を合わせずに、言葉を遮るように、答えた。

 もう、俺に家族はいない。

 梨花は二度と元気付けられないし、駆の兄にも二度となれない。

 あんな風に見られるのは、こりごりだ・・・。

 家族なんて見た目で判断してるだけのものだった。俺はそれを痛感した。


「家族がいないって、今までどうやって・・・」


「一人で生きてきました」


 また、言葉を遮る。今度は、嘘をつく。


「だから、・・・国籍とかは無いと思います」


 一人称は、悩んだが使わなかった。

 まだ、決める事ができなかった。


「・・・」


 さすがに、そこまで問題アリな子供だとは、思わなかったんだろう。彼女は、とてもとても悩んでそうな顔になった。

 ・・・。

 この先どうしようか・・・。

 とりあえず、盗みだけはしない方向性にしたい。

 盗みをしたら、俺はもう終わりだ。

 それより、この人へどんなお礼をすればいいのだろうか?お礼なしに帰りたくない。

 俺が悩み始めた時、彼女は口を開いた。


「貴女・・・。私の娘にならない?」


「は?」


 俺は思わず言葉を零した。

 娘にならない?

 いや、今の俺は女の子だから娘ってのはわかる。わからないのは、それを言った真意だ。


「国籍とか戸籍は孤児院って所・・・わかんないかな?そこに勤めてる友達に聞いて、登録する。そしたら、娘に・・・子供になってくれない?」


 その時点で、俺は気づいた。

 この人、子供がいないんだ。

 大人数の家族が住んでそうな部屋。だけど、大人数の家族が住んでいるとは限らない。

 だが、子供なんて親にとったら金を食い尽くすものにすぎない。しかも、それは俺みたいな子供だ。

 そんな事、恩を仇で返すようなものだ。


「私の、エゴ・・・勝手かもしれないけど、貴女を放っておく事なんてできない」


 ・・・。


「私の子供が嫌なら、さっき言った友達の所でもいいわ。だけど、そのどっちかにして」


 娘か、孤児院か。

 唐突な話に、俺は考えざるをえない。


「でも・・・。できたら、私の娘になって欲しいわね。貴女の自由だけど」


 ・・・、

 ・・・・・・、

 ・・・・・・・・・、

 ・・・・・・・・・・・・。

 俺は、答えた。



 ◇ ◇ ◇



 場所はデパート。時は昼前。

 俺は今、女の人ーーー栗林敦子くりばやしあつこさんと一緒にいた。

 目的は、俺の日用品を買う為だ。

 そう。俺は、娘になることを選んだ。

 だが、もちろん。迷惑をかけるつもりは無い。

 最小限のものしか貰わないし、最も安いものしか貰わない。ねだらない。必要以上に距離を詰めない。

 本当は孤児院に行く振りをして逃げようかと思ったが、敦子さんが一瞬だけ見せた悲しそうな表情に、俺は断ることができなかった。

 元に戻る。と言う選択肢は非現実的なので却下した。それが出来たら、すでしている・・・。

 敦子さん。と呼んだのは、新しい俺の苗字も栗林だからだ。

 俺の新しい名前。それは、栗林恋くりばやしれん

 俺は、一切何も言わなかったから、完全に偶然だ。

 歳は、七歳にしておいた。つまり、小学二年生として、俺は通い直すことになってしまった。・・・女の子として。

 ちなみに、身長は117cm。体重は20kg。

 どちらかと言うと、小さい方らしかった。よく知らないが。

 ・・・。といれ?トイレ?

 行ったよ。

 どうやって出せばいいのか苦戦したが、力を抜いたら出す事ができた。

 自尊心が喪失したような気もしたが、なんとか終わらせた。

 ちなみに、俺は今借りてきた服を着ている。

 黒ベースにピンクの文字が書いてあるTシャツ。青いジーパンだ。

 下?もちろん、着けてる。

 無地で白。キャラものは拒否した。

 ・・・女物だが。



 俺は、欲しい服を選べと言われたので選んでいる。

 もちろん、安くて男っぽいやつだ。間違っても、スカートは履かない。


 ランドセル売り場では、赤いランドセル(一番安かったやつ)を買った。


 文房具は、安くて地味なのにした。


 下着は、無地で安いのにした。


 靴は黒ベースの安いやつにした。



 必要な物を買い揃えて、俺と敦子さんはデパートから家に帰った。

 時間はもう、お昼時だった。

 ◇ ◇ ◇ 次回予告 ◇ ◇ ◇



敦子「・・・。だ、大丈夫かしら・・・この子・・・」


敦子「雨の中倒れてるのを見つけてきたんだけど、目覚める気配がなくて・・・」


?『うーん。電話じゃよくわかんないけど、もしも捨て子だったらウチの孤児院に頼ってもらってもいいよ?』


敦子「・・・ありがとう・・・」


二人「次回、転入生と問題児」


?『ウチらの仲だ!戸籍準備もしてさしあげよう!』


敦子「うん。ありがとう」


?『いやいや。いいって事よ』

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