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【エピソード3:プロローグ】

槞牙「待たせたな。読者の諸君!心して俺様の概要を聞き賜え。       ロリッ子の柚菜に続き、悪女聖戦士である進藤瑠凪に、完・全・勝・利っ!まあ、余裕だな。      そしてここからが重要だ。なんと!俺様の独立で新居ゲット!……ただ自慢したいだけじゃない。モテる男の一人暮らしが何を意味するか。諸君には判るだろう?ニヒヒ……!     もう一回じゃ足らねぇ!今回もサービスショット全開だぜ!         朋香さんの動向を伺い、雫への復讐の機会を狙いながらも、エピソード3だぜ!」

冥々とした街並。夜空に昇る月だけが仄かな光を地上に向ける。

人の気配が死んでいるはずの街に、街頭の光が影を映す。一つ。そして後に続くようにして三つ。

影は裏路地に入り込み停止。三つの影が一人を追い詰める。


「おい、おっさん。金をよこせ。そしたら見逃してやるよ」


悪意に満ちた声で男が言った。三つの影の正体は不良のようだ。

中年の男は壁に背を付け狼狽えていた。頭を振り、意思表示だけはしている。


「こいつ従わない気だぜ!?」


「ぶっ殺しちまうか」


「そりゃいいな」


最初に金を要求した不良が男に近付き、右拳で殴り付けた。そして倒れた男の腹部を容赦なく蹴り飛ばす。男は呻き声を漏らし、止めるように懇願する。

だが不良は歪んだ表情で男に暴行を続けた。


「俺たちにも手伝わせろよ」


残った二人が指の関節を鳴らして近寄る。倒れている男の髪を鷲掴みにして起こし、右腕を振り上げた。

その時――


「待ちなさぁーい!」


どこからともなく叫ぶ声。語調はともかく、角を取り去った丸く可愛いソプラノの声だ。

周りを見渡す不良たちを嘲笑うかのように、更に言葉を繋ぐ。


「街の治安を乱す不届き者! 貴方たちの悪事も、年貢の納め時です!」


何とも古い常套句を使う。


「だ、誰だ! 姿を見せやがれ!」


意外にもノリノリな迫真の演技(本気だが)の不良。すると行き止まりの路地の反対側――真後ろにある、コンクリートで作られた塀の上。

月の下に皓々と映える少女の背中があった。

頭に赤い通信機のようなヘルメットを被り、後ろからセミロングの黒髪が出ている。華奢な身体を包むのは、いやに露出度の高いセーラー服。


「この世が悪の刄に屈するとき、善良な市民の心は凍り付く。ならば溶かせてみせよう! 我が正義の炎で! ……とおっ!」


大仰な掛け声と同時に飛び上がり、体操選手も顔負けなアクロバティックな回転で地面に着地した。


「人呼んで、皆の街の電子レンジ! 甘藷仮面、参上っ!」


意味不明な通り名である。ついでに甘藷とはサツマイモのことである。

不良たちは唖然としていたが、我に返り仲間の顔を見合わせた。それからリーダー格の男が口を開いた。


「なんて名前だって? もう一度――」


「貴方たちに名乗る名前はありません!」


急に名乗らない気になっている。

不良たちは弱そうな少女を見て、ニヤニヤと卑しい笑みを浮かべた。


「そんで悪党な俺たちをどうすんだ? お仕置きでもするか?」


「純白ちゃんが身体を張って平和を守るんだろ?」


「ギャハハハ!」


純白ちゃん? 少女は首を斜に向けインタロゲーションマーク。思考して五秒程度で短いスカートを片手で押さえ込み、頬を赤らめた。


「ひ、ヒーローの秘密をバラすとは何事ですっ! もう容赦は致しません! 必殺技でトドメを刺して上げますっ!」


しかし戦いはまだ始まっていない。

少女は、以前としてヘラヘラする不良たち睨み付け、右手を天に上げた。

その瞬間、なんと少女の掌から火球が出現。

これには、さすがに三人の表情からも笑みが消えた。


「悪よ! 滅びなさぁーいっ!」


火球が放たれる。砲丸の如く地面に落ちた火球は、閃光を上げ爆発。辺りに炎の矢を飛ばしてから沈黙した。

死傷者ゼロ。奇跡だ。

不良たちは反射的に伏せ、難を逃れていた。静かになると立ち上がり、一目散に逃げ出した。

目に涙を溜める者。失禁した者。化け物だぁー、と叫ぶ者。

悪は去った。一人の少女の活躍によって。

こんなナレーションを、今の少女は噛み締めていた。ヘルメットを脱ぎ、どこからか芋を取り出した。掌から一瞬の炎を出し、蒸せて焼き芋にする。

パカッと割った焼き芋から、鼻腔を誘う香りを伴う煙が浮き上がった。

少女は控えめな仕草で焼き芋を噛り、ハフハフと口内で甘味を転がした後、


「日本の夜明ぜよ〜」


と暫らくほのぼのした。夜は明けてなどいない。


「あ、いけない! 明日も学校だから早く寝ないと」


そこで、正体は現役学生だった少女の肩を誰かが掴んだ。

誰あろう。中年の男である。

不良たちのあまり変わらない下卑た笑みで、


「ありがとう。おじさん、助かったよ。ところで君、可愛いね。どう? 明日、おじさんと遊ばないかい? お金は出すよ。最近、遊んでた娘が冷たくなって暇してたとこだから」


などと口走る。

少女は俯き、肩を震わせながら呟く。


「援助交際……。これ即ち、悪っ! 成敗っ!」


火球、爆発。

男の断末魔が凄廖とした空間に轟めく。

前書きはあくまで槞牙の個人的な妄想、及び妄言です。あの男の言うことは、気にしないでください。

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