表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

体温

2017年 初夏


私の初体験は十五歳の時だった。相手も初めてで、なんだかそれがとても美しく思えた。


彼の体温は私の心の闇をゆっくりと、溶かしてくれた。初めてそう感じたのは、学校の帰り道に手をつないだ時だった。


それまで私は自分の手の冷たさが誰にも言えない心の寂しさを語るようでとても嫌いだった。氷を掴んでいたかと思うほど冷たい私の手を、彼の大きな手が包み込んだ瞬間、その優しいぬくもりは、指先から徐々に私の身体に流れ出し、血流に乗ってすぐに心の中までたどり着いた。


彼の温もりは少し冷めたコーヒーカップのように、どこか儚くて私の冷たい手には、とても居心地がよかった。


もし、彼の体温が煎れたてのコーヒーカップのように熱かったら、私は自分の手の冷たさを忘れることは出来なかっただろう。


関係を求めたのは私からだった。


彼とのセックスは身体の距離が近づけば、近づくほど、心の距離を離さなければならない、そんな矛盾がつきまとった。


彼を愛したままでは、彼の望みを叶えることが出来ないからだ。


私にとってその行為は、身体的満足や、興奮などより、彼のすべてを独占するための行為だった。


私は最愛の人を苦しめるすべての物を、壊さなければならない。愛という感情は人間が最も欲深い生物だと私に教えてくれた。その感情をコントロールすることは不可能だということも……。


強欲な私は許されない罪を犯した。でも、後悔はしていない。私が犯した罪によって、彼の心を救えたのだから……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ