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僕は姫川さんに逆らえない

作者: 朔夜
掲載日:2026/09/15

「あ、私たちの席ここだね」

 劇場に入ると、チケットに書かれた座席番号を確認し、僕たちは対応するシートに座った。照明が消され、「転生メイド」の冒頭のシーンが始まる。いつもなら物語に没頭しているのだが、今回に限って全然集中できない。

 「転生メイド」の映画は、終盤に主人公のユウタがらむちゃんを助け出した後に告白する、涙なしでは見れないシーンがある。特に、らむちゃんがユウタの目をじっと見つめ、告白を待つシーンは国宝級だ。姫川さんが隣にいようが、らむちゃんの尊さに感動できるはずだ。


 映画も終盤に入った。しかし、僕は未だ物語に集中できずにいた。何度も観てるとはいえ、「転生メイド」信者の僕がこの尊さに感動できないわけがない。しかし、スクリーンの中のらむちゃんより、隣の姫川さんの様子が気になって仕方なかった。ユウタが告白するシーンの瞬間、僕は我慢できず姫川さんに目線を向けた。

「え……」

 姫川さんは食い入るようにスクリーンを見つめていた。思わず目線を元に戻す。ありえない。普段オタクを馬鹿にしている姫川さんが「転生メイド」に熱中している。僕はその姫川さんの姿に尊さを感じてしまっていた。


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