表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
入居者募集  作者: いそ
PR
1/1

第一章

 タケシは焦っていた。ニート暮らしをエンジョイしてきたが、とうとう両親にブチ切れられて家を追い出されることになったのだ。一応、十万円と一週間という猶予を得たが、とりあえずは急いで住処を確保しなければならなかった。近くの不動産屋を覗いたりしたが、家賃の面で折り合いがつかなかった。(こんな時は知恵袋の活用だ。)とスマホから知恵袋に書き込んだ。

「〇〇市に住んでいる者なのですが、家賃2万円くらいで住めるアパートを探しています。どんなに古くても大丈夫です。切羽詰まってます。早い回答をお願いします。」

回答はすぐに来た。「ゼロさん」からで

「それは大変ですね。実は私はアパートを経営しているのですが、あまり人気のない部屋が空いています。本来は3万5000円の家賃をいただいているのですが、お困りとのことなので2万円でよろしいですよ。住所は〇〇市………。」

タケシは(ラッキー。)と思った。その住所も何となく分かる。それからゼロさんと何度かやりとりをした結果、家賃を振り込んだらすぐに住んでもよい、とのことだった。タケシは家賃を振り込み、早速その住所へ向かった。アパートは少し古かったが住むのに支障はなさそうに見えた。一階に5部屋、2階に5部屋のよくあるつくりである。ちゃんと部屋の中にお風呂とトイレもある。様子をうかがってみたが他には誰も住んでないようだった。普通なら少し気味悪く感じるのだろうが、人付き合いの苦手なタケシはそれを好ましく感じた。実家からそれほど距離がなかったので、必要なものは実家の自分の部屋から持ってきて、足りないものを買った。こうして夕方になるとタケシの城は完成した。寝そべってテレビを見ながら、(一人暮らしって意外と簡単じゃん。)と思った。電気やガス、水道は何故か契約していないのに使えた。楽天的なタケシは(これも家賃に含まれてるんだろう。)と深く考えなかった。夜になってコンビニで買ってきた弁当を食べていると、横に置いていたペットボトルのお茶が倒れた。タケシは急いでペットボトルを持ち上げたが、机の上は水浸しになった。「何だよ、もう。」と文句を言いながらティッシュで拭いた。まあよくあることなので、タケシは(自分の手がペットボトルに当たったんだろう。)と納得したのだが、実際はタケシの手はペットボトルには触れてなかった。タケシは食事を終えるとまた横になり、(そのうち働かなきゃいけないな。でも一ヶ月くらいはこの快適な状況を楽しもう。)と考えた。その日の夜、電気が点いたり消えたりしたが、タケシは寝ていたので気付かなかった。

 次の日、タケシは早起きした。ニート時代には考えられなかったことだが、朝6時に目を覚ましたのだ。(ちょっと辺りを散歩してやろう。)と思い、アパート周辺を散歩したのだ。2、3分歩くと居心地の良さそうな公園があり、その向かいにはコンビニがある。コンビニでコーヒーとサンドウィッチを買ってきて、部屋で食べた。何もしてないのだがタケシは(充実してるな。)と感じた。いつもなら昼過ぎまで寝ていて、起きてからはずっとゲームをしていたのだから、その感覚は正しい、と言えよう。サンドウィッチのハムがやたらのど仏に絡む、と感じたが、それ以上は何も思わなかった。その後、コンビニに置いてあったアルバイト情報誌をペラペラとめくった。後ろの方で何か気配を感じたので見てみると、何匹物もの虫(名前は分かるものも分かるないものもいた)が蠢いていた。タケシは「ギャッ!」と悲鳴を上げた。パニックになっていたが冷静になって見てみると何もいなかった。(見間違いかな?)と思ったが(いやいや、確かに虫がいた。)と思い直した。すると昨日からの何か変なことが繋がって思えてきた。(この部屋、何かいる?)と不安になったタケシはスマホからレイさんに連絡を取った。タケシは「昨日から何か変なことが起きてるんですが、この部屋、いわく付きの部屋じゃないですよね?」と聞いてみた。返事はすぐに来た。                   「タケシさん、新しい環境で疲れているのではないでしょうか。その部屋は今まで30年ほど使われてきて、一度もそのような話はありませんでしたよ。」                    この返事にタケシは安心して(自分は疲れてたんだ。)と思い込むようにした。                 (馬鹿だね、人間は。)(今度の奴はいつまで持つかな?)(もっと遊んでやろうぜ。)

タケシは一日中寝ていた。そして少し離れたスーパーまで晩飯を買うために自転車で出掛けようとした。が、自転車はパンクしていた。昨日乗った時は何にもなかったのに。(単なるパンクなのか、霊によるものなのか。)タケシは考えることを止め、歩いて行った。帰って一人寂しく晩ご飯を食べた。食べてる最中にハサミが飛んで来た。幸いタケシの頬をかすっただけだった。タケシはティッシュで頬を拭い青ざめた。が、何も考えないようにした。それからの一週間は悲惨だった。明るいうちは何もないのだが、夜になるとドンドンと太鼓のような音が鳴り、妖怪のようなものが出てくるのだ。部屋の中を普通に動き回っている。そしてタケシの体をバシバシと触ってくるのだ。布団をかぶって知らないふりをしていたが一睡もできなかった。焦燥しきったタケシはまたレイさんに連絡を取った。

「やはりこの部屋、変ですよ。絶対、何かいます。もうお金とかどうでもいいので僕は出て行きます。」

やはり返事はすぐに来た。

「そうですか。それは残念ですね。でも部屋から出られるかしら。」

部屋の外が何やら騒がしい。ドアノブをガチャガチャしている。やがて諦めたのかドアに体当たりをし始めた。しばらくするとドアが変形してきた。(ウソだろう?鉄のドアだぜ?)ドアは強引にこじ開けられ、一つ目の魔物が入って来た。手にはこん棒を持っている。布団を被って震えていたタケシは布団を上げて見た。こっちへ向かって来る。タケシは覚悟した。こん棒が振り下ろされた。タケシの首は胴体から切り離された。

(10日も持たなかったじゃないか。)(俺は予想してたけどね。)(まあいいや、次、次。)(人間はバカだから安い家賃に騙されるんだよな。)(今度の奴はどれくらい持つかな?)(やっぱり人間より霊の方が怖いんだよ。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ