転生
現代において、自身の気持ちや考えを伝える手段とは多岐にわたる。その中でも音楽は最も有力な手段の一つだ。しかし、これは現代の音楽に理解があってこそである。俺が何を言いたいのか全く分からない人もいるだろう。つまり、中世ヨーロッパのような時代では何も伝えることはできないということだ…!!
「ふぅ…今日はこんなところでいいか…」
ノートを閉じ、椅子に体を委ねる。連日の徹夜のせいか、微妙な頭痛を感じる。
「明日にはレコーディングしたいな…」
北村音也 28歳童貞 職業シンガーソングライター。この業界に足を踏み入れてはや8年。特別これといったヒットもなくただただ日常が過ぎていった。気づけば女性関係はおろか、友人ともほとんど連絡を取らなくなってしまった。時刻も午前2時。すっかり昼夜逆転生活が身についてしまった。
「んー、飯でも買いに行くか」
家を出て、コンビニへ向かう。家からコンビニまでに信号が2つある。実によくある信号だ。ここに来ると毎回車に轢かれて異世界に転生なんてことを思い描く。
「まぁ、あんなもの現実にはあり得ないがな。」
そうつぶやいた次の瞬間、1台の大型トラックが視界の端に入ってくる。こちらに向かってくる…?
「は…?おい待てそんなベタなことってあr…」
次の瞬間、自分を覆っていた光がトラックのライトとは違うものに変わっていた。周囲に喧騒が広がる。
「くっ…、何でこんなやかましいんだ…って、は?え?なんだよ…これ…」
目の前に広がっていた。道いく人の服装、そして町並み。21世紀じゃないのはあきらかだ。世界史で習った知識を合わせて考えるに…ここは…
「中世…ヨーロッパ…」




