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第2話:巡廻異端審問官、めしをくう。ついでに悪党を殴る。

どうも、僕です。前回から間は開いてますが、相変わらずヒロインが絶叫して、主人公が人を殴っています。基本的に、主人公が人を殴ってヒロインが絶叫する話なので、今後も主人公が人を殴ったり土足で不法侵入するのを、ヒロインがぎゃーーーー! っていいながら見ている話だと思ってください。こんなでも男女バディを名乗れるからいい時代なもんです。へっへっへ。

 前略、お父様、お母様。

 魔法の才があるフリッカを学院に送り出してくれてありがとうございます。

 私、そこで切磋琢磨し立派な神官になろうと思ったのですが……。


(ガツガツガツガツ……モグモグモグモグ……ゴキュゴキュゴキュッ!)


 今、目の前にいる殺人犯に引きずられ、一緒にご飯を食べてます。

 しかも殺人犯、メチャクチャご飯を食べてます。私はもうダメかもしれません。


「よし! おいマスター! エールをもう一丁だ」

「ええぇえ! まだ食べるんですか!? もう、食べ過ぎですよコギトさん! それに、コギトさんって、聖職者ですよね!? いいんですか、真っ昼間からお酒飲んで」


 コギトさんがさっきからバカスカ飲んでいるエールは、麦を発酵させたお酒だ。

 市民の皆さんは食事のお供として飲む事が多いが、いつでも冷静に魔法をつかう必要のあるマナウス教の信徒たちはお酒を飲んではいけないことになっている。

 というのも、お酒を飲むとみんなフラフラのぴよぴよになってしまい、魔法を使うのに手間取るからだ。


「別にいいんだよ、俺の神は食い物に制限なんてしてねぇからな」


 だがコギトさんは顔色一つかえず、運ばれてきたエールを一気に飲み干す。

 ほんと、すごい食べっぷりの飲みっぷりで感心しちゃう。やっとこの街にたどり着いた、みたいなこと言ってたけど、ずーっと何も食べてなかったのかな?


「あの、コギトさん。色々聞きたいんですけど……」

「おう、何だ? 喰いながらでいいなら聞いてやる。あー、だが俺はバカだからよ。マジで、難しいことは答えられねーぞ」

「そんな難しい事は聞かないと思います。そもそも、コギトさんって巡廻異端審問官、なんですよね。私、そんな役職初めて聞くんですけど、一体何をしているんですか?」


 審問官なら私も知っている。教会の内部調査や、教会の管轄にない魔法を勝手に使う人間を取り締まる機関だ。

 教会の内部で違反者がいないか探る恐ろしい組織だと聞いている。

 異端審問官はその中でも、率先して教義に反した行動をとる集団に対抗する役職や、組織のことだ。


 でも、巡廻異端審問官なんてはじめて聞いた。


「そりゃそうだろ。何せ世界中で俺しかいない役職だからな」

「まってください! それってどういうことですか?」

「俺が俺のためにつくった、俺のための役職ってことだよ」

「それってただの自称じゃないですかーーーー!」


 やっぱり、この人だめだ! こわい人だ!

 しかも勝手に審問官を名乗るなんて命知らずすぎるよ。審問官は、教会でもエリートたちが多くて、すごく難しい魔法をボンボン使える人がゴロゴロしているんだから。


 ど、どうしよう。

 こんなところ、教会の人に見られたら私も指名手配にされちゃうかも……。


「ううう、もう、いつまで食べてるんですか!? 早く調査に行きましょうよぉ……」


 それでなくても、昼間っからお酒を出すお店はいつも治安が悪いから怖いんだ。

 ゴロツキとか、チンピラとかが酔っぱらって我を忘れ騒ぎをおこすのが日常茶飯事なのだから。

 教会の信徒である私と、何だか信徒っぽい服を着ているコギトさんなんて、珍しいからさっきから四方八方で視線を感じる……。


「よぉ、姉ちゃん。まだ随分と若いじゃねーか。ちょっと俺と遊んでくれねぇか」


 なんて思った矢先にゴロツキが声をかけてきた。

 すごく大きくて、腕なんか丸太くらいはありそうな人だ。でも顔はちょっとくるみ割り人形に似てて面白いかも。


「や、やですよ! 私はいま、お仕事中で……」


 そうじゃなくて、ここは穏便に済まさないと。

 すぐさま頭を下げようとした、その時。


「オラァッ! 悪鬼退散!」


 私が頭を下げるのを見計らったように、コギトさんが相手の顔面に一発ぶち込んだ。

 って、ぎゃーーーー! いきなりぶん殴られたゴロツキさん、ぶっ倒れて顔から血が噴水みたいに流れちゃってるよ!

 大惨事になっちゃった!


「何やってるんですかコギトさん! いきなりぶん殴るなんて、大惨事になっちゃってますよ!」


 心に思ってたことが声にまで出ちゃった! でも実際に床はべっとべとに血まみれで、大惨事としか形容できない。

 周囲にいる、普段は荒くれ者のゴロツキさんたちも、


「えぇ……マジかよ」

「さすがに引くわ……」


 って顔でこっちを見てるもん。

 それなのにコギトさんは、運ばれてきた温いエールを一気に飲み干して袖口で口元をぐいっとふくと。


「だってそいつ悪党だもんな。面倒ごとになる前に、ドカンと一発かましておいてやっただけだっての」


 サラリ、悪気のないみたいに言うんだよ。


「面倒ごとにはなってますよ! どかんと一発かましたから、このままじゃすぐ自警団来ちゃいますから! はいはい、もう出ますよ! 逃げましょう!」

「ま、まてよ……俺まだ全部喰ってねぇし。三日ぶりのまもな食事なんだぜ? もうちょっとゆっくり……」

「もうちょっとゆっくり食べたかったら、対話で解決する方向性でもう少し考えてください! 拳は最後の緊急手段ですからね!」


 私は店の主人にお金を支払うと、すぐさまコギトさんの首根っこをつかんで何とか外へと駆け出した。


「よぉ、おまえさ」

「おまえじゃないです! 名前言いましたよね! 私はフリッカ! フリッカ・ツシェです!」

「そうだったな、フリッカ。おまえ、自警団の話をしたよな。この街、犯罪は自警団が取り締まってるのか? 騎士団じゃなく?」

「は、はい。そうですけど……それが、何か?」

「いや、普通だったら騎士団の連中とか衛兵連中がそういうのを請け負ってるだろう? 自警団、ってのは市民たちが有志で集まった集団だからな。組織として、市民中心ってのは珍しと思ってよ」


 コギトさんはカチカチでボソボソのパンをモソモソ噛みながら聞く。

 どうやらお店からちゃっかり持ってきたようだ。


「えーっと、騎士団がいるのは、王都の近くですよね? 衛兵なんか指揮しているのはだいたい、ちゃんと貴族の領地になってるんですけど、この街はマナウス教団が中心になってますから、基本的に、教団がもつ兵士たちが治安を守っているんです。でも、教会はあくまで異端者への対応が中心ですから。市民同士の諍いを仲裁する役として、自警団が結成されている、って感じですね。ここは地方都市ですから、そういうのって普通ですよね?」

「んー……ま、確かにそうかもなぁ」


 コギトさんはパサパサのパンをまだモソモソ噛みしめている。

 見てたらお腹すいてきちゃったな。私、コギトさんが食べるのを見てるだけだであんまり食べてなかったし。


「ほれ、フリッカ。喰えよ」


 なんて思っていたら、私の心を読んだみたいにコギトさんがパンをちぎってわけてくれる。

 お、思ったよりいい人……。


「わ、ありがとうございます……いただきます!」


 私は邪魔にならないよう道の端っこによけると、味もしない硬いだけのパンを食べる。

 んー、味もしなくて硬いだけでバサバサだけど、だからこそいつもの味わいだ。おいしくないけどお腹が膨れる!


「水も飲めよ。それ、バッサバサだから口のなかの水分ぜんぶもってかれるぞ」


 コギトさんはさらに水袋を手渡してくれた。荒くれ者の野蛮な人にしか見えないのにうれしいお気遣いだ!

 でも騙されちゃいけない。この人が、ディエゴさんを殺したのは間違いないんだから……あぁぁ、でもお水美味しい!

 なんて思っていたら……。


「ちょっといいか、お嬢ちゃん」


 急に誰かが私の肩に手をかける。

 私はつい、おどろいて。


「ぎゃああああん! 痴漢! 変態! 悪党退散!」


 手に持っていた大きめの杖で、思いっ切り相手をぶん殴っていた。


「うおおおおおおお!」


 杖の側面がクリーンヒットし吹き飛んで倒れた、その人物には見覚えがある。


「あれっ、サンチョさんじゃないですか。どうしたんですか!」


 そう、自警団のサンチョさんだ。率先して自警団の活動をしている、大柄でコワモテだけどとっても優しい人だ。

 どうしてサンチョさんが倒れてるんだろう……って、私がびっくりして殴り飛ばしちゃったんだっけ。


「ひ、ひどいなフリッカは……何も言ってないのに殴りかかってくるなんて」

「ごごごご、ごめんなさい! サンチョさん、顔がなんかファイナル・デストロイヤーって顔ですごく怖かったんでつい!」

「顔のことは言わないでくれよォ、妻は世界一のいい男だっていってくれるんだぜ」


 そう言いながら起き上がる、サンチョさんは私より一回りも二回りも大きい巨漢だ。

 鉄球をもって振り回していたらオーク族と勘違いされる貫禄がある。あ、でも奥さんはこの街でも一、二を争う美人なんだよね。

 なんて思っていたら、サンチョさんの後ろから二人の男が顔を出した。


「おい、大丈夫かサンチョ」

「フリッカさん、大丈夫でしたか?」


 倒れたサンチョさんに手を伸ばし立ち上がらせたのが、自警団の実質リーダー的存在で「鷹の目」なんて二つ名があるワンダさん。

 私の方を心配してくれているのは、私より少し年上でずっとこの街で暮らしているドゥーくんだ。

 ドゥーくんとは知り合いで、よくお花をもらったり、流行りの甘いお菓子をくれたりするんだよね。


「うん、大丈夫……サンチョさんごめんね。でも、自警団の人がどうして?」

「いや、さっき食堂で乱闘騒ぎがあったらしくてな……」


 ワンダさんは鋭い視線をこちらに向ける。

 うわ、さっきコギトさんがしでかしたやつだ。早く謝った方がいいかな?


「実は、ぶっ倒れていた男が、俺たちの探していた手配犯だったのさ。強盗、空き巣、恐喝、その他諸々の犯人だ。だから、誰がぶっ倒したのか探していた所だが……知らねぇか、フリッカ」


 そう思ってたら、ワンダさんはそんなことをいう。

 本当に、あの人悪人だったんだ! 結果オーライ?

 いや、でもここでコギトさんの名前だすと、なんか面倒くさいことになっちゃいそう。


「わ、私は声をかけられて、びっくりして逃げてきちゃたからわかりません」

「ふぅん……そうか。ま、フリッカがそういうならそれでいいさ。じゃぁな」


 ワンダさんは思ったより早く話を切り上げてくれた。

 良かった……。


「おう、フリッカ」

「ぎゃああああん! いいいい、いたんですか!? コギトさん!? どこに?」

「ずっとここにいたぜ? あー、ま、面倒くさくなりそうだから遮蔽魔方をつかって姿は消してたけどな」


 遮蔽魔法? 魔法でもわりと高度なやつじゃないの?

 そもそも、魔法をつかえるのはマナウス教の信徒だけだけど、コギトさんってマナウス教の人なの?

 確かにそれっぽい吹くは着てるけど……。


「それより、今のやつら自警団だよな。よし……後を追うぞ」

「え? ななな、何でですか?」

「理由なんて言う必要あるか? 俺に必要だから追うんだ、じゃあな」


 コギトさんはそういって、自警団の人を追いかける、けど。


「そこまで聞いちゃったら、今さら言われて引き下がれる訳ないじゃないですか、ばかーーーー!」


 私は慌ててその後を追いかけていく。

 あぁ、なんだかどんどん戒律から背いていく! 罪深いフリッカをお許しください……。

ぽつぽつと語られるマナウス教、街のシステム、聖職者の話などバラっと巻いていて収集つくのかって話ですが、多分大丈夫でしょう。ところで、今まで一度も街の名前って出てない気がするんですが出てましたっけ? 考えた記憶がないので、まだ名前はないのかもしれません。あるのかもしれません。全て曖昧ですね。ですが、人間の記憶などどこまで真実なのでしょうか。それではまた次回。

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