その色は
寝静まった彼女を横目に、ベッドから起き上がり引き出しから鍵を取り出す。
あれから半年が経った。
俺は無事解放された後すぐに新しいマンションを用意し、そこに由那を迎えた。
由那は多少戸惑ってはいたが断らなかった。そうして今も共に生活をしている。
すやすやと寝息をたてる由那の寝顔を眺めながら手の中のものを弄ぶ。
「この部屋から出ないでほしい」
再び共に暮らし始めるときに彼女に頼んだ。
「どうしてですか」
「由那を失いたくない」
外に出れば由那が自分から離れていくかもしれない。
彼女の喜びは自分と違いドアの向こうにも存在するのだから。
「私はいなくなったりしませんよ」
由那はそう言ったが、
彼女を失ったときの事を想像すると怖くて絶対に外になど出したくなかった。
「ここにいればいつも一緒にいられる」
「いつも、ですか…この中にいれば君はいつも私と一緒にいてくれるんですか?」
「うん。いつまでもずっと一緒にいよう?」
「わかりました。裏切ったら許しませんからね」
笑顔で承諾してくれた。それを見たときの喜びはとても言葉では表せそうにない。
彼女にだって自分が必要なのだ。それまで気付かなかった。
――由那はもう前の生活には戻れない
家族にも友人にも、彼女をかえしてやるつもりなどない。
白い扉は俺にしか開ける事ができない。
彼女から外を奪った鍵、これがあれば彼女は自分のもの。
そうして俺は、由那をずっとこの幸せな世界に閉じ込める。
end