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くらし、介護、健康

会えない毎日に~介護施設に居る母に思うこと

作者: 池畑瑠七

寝たきりの義母が介護施設に入所して1週間すぎた

以来まだ 一度も会えてない

すぐそこの大きな施設なんだ 良かったなと思っていたら

事情が全然 違っていたんだ


感染対策のため面会は一日1回限り 15分だけ 4名以内

14時から17時まで

必ず予約が必要だ

居室ではなく面会ルームまで職員さんが連れてきてくれる形で

同じ時間に他の入所者さんの予約があったら 不可だ


電話予約しようとしても

そもそも電話も なかなか繋がらない


受話器が上がることなく事務室で鳴り続けているだろう

電話の呼び出し音のむこうから

スタッフが足りてないだろうこと

介護現場の厳しさが 滲み出てくるような気がして

胸が苦しくなってくる


病院では一日1回30分、3名以内

ナースステーションで受付カードを記入しさえすれば

短時間だが 毎日でも面会はできた


日々移り変わる彼女の様子を知ることができたのだが

今 家から居場所への距離は近くなったが

随分と 遠くなってしまった


自宅で義母のケアに常に追われている間

その重さに耐え難い辛い想いになった事も 数知れずあった

入院時には 回復を願いつつも 

やはり 肩の荷がやっと下りたと 終わりが来るんだと

正直ほっとした気持ちになったことを 決して否めない


義母自身の不安や不自由 心細さに寄り添い

常に親身に優しくあらねばと自らに科し

押し殺してきた疲れや 割り切れぬものも

少し解放され昇華された

そんな心地になってしまった


きっとそれは こういう過程を踏めば

だれもが経験する感情だろう

責められるようなことでも ないだろう

けれどもそんな自分に 自罰の思いは同時にあった

こんなこと思ってはいけないのだ

愛と感謝で常に 接するべきなのだ

わたしは優しくなんてない

自分本位な しょうもない がらくだた…



全く会えなくなって 1週間

義母の様子が気になりだした

寝たきりで憔悴していた顔 やせ細った手首

頼りなく寂し気な笑顔を ことあるごとに思い出す


時間薬とは よく言ったものだ

あれほど解放されたかったのにな

勝手なものだと自分ながら 思う


慣れない施設 初めて会う職員さん達

寝たきりのまま全ての事を他人に委ねなければ生きていられない今の義母だ

病院に面会に行くたびに聞かされた愚痴や 我が儘も

いまは もしかして何ひとつ口に出せずにいるかもしれない

疲れや諦め 寂しさに 切ない思いでいるかもしれない


いや逆に リハビリなどで人と接する時間が増え

張り合いのある日々となり

何某か回復して 元気を笑顔を取り戻しているのかもしれない


彼女はいま どんな日々を過ごしているのだろうか

病状は どうなのだろうか

笑顔が増えていればいい 増えていますように


洗濯物を取りに行く日 3日後に

やっと 予約を取ることができた

義母の好きな 干しはちみつ梅と

小粒煎餅を 持って行こう



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