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プロローグ

バシャー―――――――!

ドドドドドーー!!


「うぎゃーーー!?うぐ...」


夥しい血が一人の金髪碧眼の女性の腹から噴出し、地面に噴水のごとく降り注ぐ。


血に染まる戦場の中心で、長い髪の毛を靡かせているエリセリア王国の王女、エヴリン・フロリアンヌ・ド・リスが膝をつき、腹に深く突き刺さった槍を抜き取った。


その槍で王女の腹を貫いたのは、ヴレーノル帝国の将軍、コーンラッド・フォン・シュタールハイム。彼の冷酷な笑みが、燃え盛る背景の中で不気味に浮かび上がっていた。


「エヴリン様ッ!」


目の前の光景に、俺、ルチャラ・ムワンサは声を震わせた。俺の胸の奥に強烈な後悔が押し寄せてきたのを感じる。エヴリンの鮮血が地面を染めていくのを見ながら、俺の頭には一つの問いだけが浮かんでいた。


「どうして……どうして、ここまで現実から目を背いてきたんだった?」

心の中で、自らの過ちが次々と口から噴き出していく。


「俺が知るべきだった……すべての白人が善人ではないと。」


「守るべきなのは、俺のそばにいる大切な人たち――近くの、信じ合える仲間にして、親しくなってる白人たちを他の害を及ぼす見知らぬ白人たちから守ることだったんだ。」


「なのに、なぜ……?『白人だから全てが平等に愛されるべき存在だ』なんて、各人のそれぞれの性格や性質を無視するまでに、俺が浅はかでマニアック思考過ぎるな白人好きな妄執を捨てきれなかった所為で......今は俺にとっての大切な、大事な、...エヴリン王女様がっ!」


俺の手は震え、俺の足は戦場に釘付けになっていた。


目の前のエヴリン王女が命の危機にさらされているにも関わらず、自分の過去の選択がエヴリンの命運を変えてしまったという事実が、俺の心の奥底を押し潰そうとしている。


「俺の弱さが……俺の甘さが……エヴリン様を傷つけたんだぁ......くそ!」


後悔しても遅い!

心の中で、後悔と怒りが渦巻き始める。そして、次第に一つの決意が生まれつつあった。


「これ以上、大切な人を失わせはしない……。」


戦場の真ん中に崩れ落ちそうな王女へ向かって、俺の『答え』が直ぐに行動に出て、彼女の方に向かって奇跡となって新たなる転換期を生み出そうとした!


...............................


....................


その戦いが勃発する前の2年前:


.................


白人最高! 白人好き~!


みんなはこう思うことがあるだろうか?


俺にはいつもそう思ってる。


白人が築いてきた文明は、地球においては最高級クラスだし、それには女性は美しい人も多いし、男性に至ってはイケメンも多い。


嗚呼、なんで白人やヨーロッパって素敵なんだろう....


「なにぼさっとしてんのー!?休む暇があるなら、ささっと手ぇ動かせ―!」

バサー!


「痛っー!な、何すんだよー!?」


「仕事に集中してないあんたが悪い!じゃ、オレの分はもう済ませたから、後はノルマを全部こなせてみたら上がっていいぞ。じゃな!」


.......


「......ったく、相変わらず暴力的だな、ボスは......」


まあ、さっきのは俺が悪かったってのもあるんで、しょうがないかぁー。


「よいしょっとー!」

バシー!バシー!


注意されたので、今度は真面目に畑を耕そう。


いくら北の向こうの海の大陸に思いを馳せていたとしても、生憎と俺は今ヨーロッパにいるのではなく、アフリカ大陸に住んでる身なんだからね。カフムベ王国という国の住民で。


「はぁあぁぁ.......それにしても、こんな仕事っていつもしんどいなぁって思ったことあるんだけど、俺の好みじゃぁ、一生独身のままかぁー」


そう。


孤児として育ってきた俺、ルチャラ・ムワンサは隣国シマシテーとの国境線での小競り合いで軍事作戦に参加してた俺の軍人の父はいなくなったし、母も貧困生活が極まる中仕方なく俺をこのプランテーション農業者の一大主人であるカワメに売るしかなかったんだった。


「お陰様で偉いもん人生ハードモードがずっと続いてきたって訳だな...」


なにせ、朝飯が終われば朝から晩までここの米の畑で働かされる毎日だからね。


「まあ、ジョロフライスは上手いけどな、アフリカ飯としてはな!」

まあ、どうせヨーロッパ飯であるスパゲッティとかラザニアには遠く及ばないけど......


ん?俺の頭ん中のヨーロッパマニアが変だって?

そりゃ仕方ないよ。


だって、いくら植民地支配時代で色んな者が犠牲になったからって、文化的に優れてるのはあいつらだったし、そして日常生活が便利になってる機器を色々発明し開発できたヨーロッパ白人様々も功績が多いので、俺が憧れるのも無理はないよ。


「それに、白人美人の顔はここアフリカ大陸のどんな女でも顔負かせレベルぐらいハイスペックで容姿が整っているが多くて、まるで別次元に住む天使か何かと見間違うほどお美しいんだもんなぁー」


嗚呼ー。嗚呼―。

本当についてないなぁ...


「美人な白人お姉さんと仲良くなりたい!そして結婚したい!」

その透き通るような真っ白い肌で、俺の黒いのその両胸で包んで温めてほしいー!


「こんちくーぶへーっ!?」

バシー!


どういうことか、溜息しながらの独り言を漏らしそうなところで、いきなり何かが飛んできて頬が叩かれた感覚がした!ってー?


「ナシアー!何すんだよー!」

「それはこっちの台詞よ!バカルチャ!」


ゆっくりとこっちに向かって歩いてきた、そこのアフロ髪の目立つ女はナシア、俺の近所の口うるさい腐れ縁の隣人だ。


タタ、タタ......

「また怒られたみたいなのね?ザマね、ちぇちぇちぇ!」


「......」

バシ!バシ!


「あんたがいつも『白人さいこ!』、『白人は神だ!』って妄想に耽ってたから仕事が進んでなくて怒られたのが悪いわよね?」


「......」

バシ!バシ!


ナシアからの指摘を無視するように、ただ黙々と仕事を続けてみただけなんだけど......


「大体さー!白人って何が良いのかしらね!幽霊みたいに白すぎるってほど変な子もいるし、ちょっとだけ太陽光を浴びたら日焼けして赤くなってるし、そしてあたし達『黒人』みたいに身体能力が飛びっきり優れてるって訳でもないしー!ただ技術的に進んでるからってだけなんじゃー」


「そこーストップ!それがお前の浅はかな知識が招いた誤報なだけだって常に言ってきたのが覚えてないのかね、ナシア君?」


「はぁー!?なにそれ!失礼ね!あたしだって人一倍勉強してきたじゃない!ああたしのどこに知識が不足してるのよー!?」


「だってだって!お前が無知でないなら、どうして白人の異様に美し過ぎる容姿、そしてその繊細なきめ細やかお肌の魅力、その透き通るような美的感覚が擽られるような真っ白い皮膚の表面の魅せる存在感に気づくはず!まだその事実を把握できてないなら、お前は―」


カチャ―――――――――ング!


「「--!?」」


どういうことか、いきなり俺の足元を中心に、円陣っぽい模様が地面に描かれ、そこから強烈な光源を発するようになってるーー!?


バコ―――――――!

「きゃああああーーーーーーーーー!?」


「-!?ナシアー!?」


何がなんだったのか、この円陣っぽいものが発する光によって、まるで弾かれたようにナシアが吹き飛ばされたが、俺だけが弾かれずに逆に俺の足をこの地面に縫い留めるようにして動けなくされ、ここから脚を動かそうとしても駄目になってるーー!?


「くそ!一体何だったんだ、これ!」

俺が訳も分からずにその不可解な現象に戸惑っていて、混乱しだすとー


シイイ―――――――――――――――――――――!!

パチャー――!


いきなり自分の身体が内側から爆発するような感覚を覚えたと共に、自分の身体が丸ごとそこから消え去ってどこか別の次元へと転送される感覚を感じながら、身体と意識両方が遠いどこかへと八方方面に霧散し、解体された気分だった.......


_____________________________________


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