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2021年8月26日 全国フェミニスト議員連盟の公開質問状

 2021年8月26日に全国フェミニスト議員連盟が公開質問状を提出した。


 この公開質問状は全国フェミニスト議員連盟のホームページに掲載されている。

 公開質問状は千葉県警本部、松戸警察署、松戸東警察署、千葉県、松戸市、松戸市教育委員会宛に提出したとある。


 たしかに宛名が


「千葉県警察本部長 楠芳 伸 様

 松戸警察署長 永田 陽一郎 様

 松戸東警察署長 青木 洋 様

 千葉県知事 熊谷 俊人 様

 松戸市長 本郷谷 健次 様

 松戸市教育長 伊藤 純一 様」


 と書かれており、差出人は


「全国フェミニスト議員連盟

 共同代表 増田 薫 (千葉県松戸市議会議員)

 共同代表 前田 佳子(東京都八王子市議会議員)

 事 務 局 伊藤 正子(埼玉県川越市議会議員) 」


 である。

 全国フェミニスト議員連盟の共同代表である増田薫議員の名前は本書で後にたびたび登場することになるので覚えておいてほしい。


 本文は次の通りだ。

「私たち全国フェミニスト議員連盟は、女性議員が圧倒的に少ない日本社会の政治風土を改革し、女性議員を増やして、男女平等社会を実現しようと活動している市民と議員の団体です。

 私たちは、啓発動画に「松戸市ご当地VTuber の戸定梨香」を採用した千葉県警、松戸警察署・松戸東警察署に強く抗議し、当局の謝罪、ならびに動画の使用中止、削除を求めます。

 本動画は、女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長しています。

 戸定梨香というVTuber(アニメキャラクター)は、セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出しています。

 体を動かす度に大きな胸が揺れます。

 下衣は極端なミニスカートで、女子中高生であることを印象づけたうえで、性的対象物として描写し、かつ強調しています。

 国連女性差別撤廃委員会の勧告(2016 年)は、日本政府に対して「固定観念と有害な慣行」として「メディアが、性的対象とみなすことを含め、女性や女児について固定観念に沿った描写を頻繁に行っていること」に懸念を表明しています。

 公共機関である警察署が、女児を性的対象とするようなアニメキャラクターを採用することは絶対にあってはならないことです。

 

 見解をお聞きしたく、以下の質問にお答えくださいますようお願いします。

 

 1、交通事故防止啓発キャラクターに、戸定梨花を採用した理由をお答えください。

 2、女児を性的な対象として描くキャラクターを採用することは、性犯罪誘発の懸念すら感じさせるものですが、採用決定過程においてどのような検討をされたかお答えください。

 3、ジェンダー平等の視点から、このようなキャラクターを起用した警察署の発信をどうとらえているかお答えください。

 4、青少年への様々な教育や施策に関わる立場として、この動画をどう考えるかお答えください。

 

 9月10日までに、文書にて回答をお願いいたします。回答の有無にかかわらず、本件に関しては広く公開させて頂きます。

 

 以 上」


 さて、本文における各文章の解説が必要だと考えられる。

 冒頭の、全国フェミニスト議員連盟が何者かであるかは既に説明済みなので、もうよいだろう。

 その次の文章から解説していく。


「私たちは、啓発動画に「松戸市ご当地VTuber の戸定梨香」を採用した千葉県警、松戸警察署・松戸東警察署に強く抗議し、当局の謝罪、ならびに動画の使用中止、削除を求めます。」


 注目してほしいのは、『松戸市ご当地VTuber の戸定梨香』の採用を抗議しているのが、松戸市の市議会議員である増田議員であることである。

 混乱すると言わざるをえない。

 どうして松戸市のPR活動をするご当地VTuberの活動を同じ松戸市の議員が阻止しようとするのか。

 もちろん、それは結局のところ、フェミニストとしての活動がより優先されるからなのだろう。

 そして、最初から「動画の使用中止、削除を求めます」と要求している事をよく覚えてほしい。

『改善』ではなく『削除』の要求だ。

 後述するが、もしもこれが改善の要求であれば、その理由はともあれ、受け入れられる可能性はあったのだ。

 しかし初手に削除を要求した事が後々までの禍根として残ることになる。

 また、謝罪を求めているのも奇妙だが、これは後で千葉県警の回答についての解説で触れることにする。


「本動画は、女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長しています。 」


 女児という言葉は、ものすごく幼い女性というイメージがあるが、辞書で調べると「女の子」という程度の意味しかないらしい。

 ここで、幼女と書くと「幼い女の子」という意味になる。

 似てはいるが意味が異なると言えそうだ。

 よって、戸定梨香を女児と表現するのは、あながち間違いとはいえない。

 しかし「性的な対象」とか「女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長」という表現は穏やかではない。

 全国フェミニスト議員連盟は、その理由を次からの文章で説明していくのだが、実は戸定梨香が「性的な対象」である事は解説するのだが、「女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長」という部分に対する解説は無い。

 女児を性的な対象として見ることが、ただちに「女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長」するというのは、不可解な主張だ。

 そもそも「女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習」が具体的に何なのか説明がないため想像するしかない。

 私が「女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習」と聞いてまず思い浮かべるのは、「家事は女の仕事」と押し付けられ家政婦のようにこき使われる主婦とか、会社でお茶汲みばかりさせられるオフィスレディというイメージだ。

 そういうのに問題を感じないこともないが、どうもそれらと性的イメージは、強い因果関係があるように見えない。

 というか、戸定梨香の活躍を知れば知るほど、そういう「女性の定型化された役割」のイメージを破壊しているように見える。

 この件は謎のままだが、とにかく全国フェミニスト議員連盟が戸定梨香を「性的な対象」と断言する理由を見てみよう。


「戸定梨香というVTuber(アニメキャラクター)は、セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出しています。」


 この表現には多くの人がツッコミをいれていた。

 今さら私が同じ事を言っても退屈かもしれないが、あえてそうしよう。


 VTuberはアニメキャラクターじゃねーよ!!


 しかし、本当に、知らない人には区別がつかないのかもしれない。

 この件についてTwitter上で議論が起きた当初、戸定梨香は今回のキャンペーンのためだけに警察がつくったキャラだと本気で誤解している人がいたのだ。

 たしかに警察が漫画家やイラストレーターらに直接依頼してキャンペーンキャラクターを制作することはあり得るのだろう。

 しかし、戸定梨香がそれとは違うのは既に説明した通りだ。

 セーラー服についての解説は必要だろうか?

 セーラー服といえば中学から高校にかけての女子の制服の代名詞のようなものだ。

 全国フェミニスト議員連盟がわざわざ「セーラー服のような」と強調していることから、それは無視できない要素なのだろう。

(もしもセーラー服である事がどうでもいいなら、私なら「上衣の丈がきわめて短く、腹やへそを露出しています」と書く)

 だが、この服はもともと水兵のユニフォームであることは知っているだろうか?

 諸説あるが、日本の学生服は、男子が陸軍制服、女子が海軍制服をモチーフにしているのだ。

「だからエロくない」と主張したいわけではない。

 起源はどうあれ今現在はセーラー服は女子中高生の代名詞のようなものだから、その服に欲情する者がいるのは当然だ。

 しかし服装の件はこの後も続くので、それとまとめることにする。


「体を動かす度に大きな胸が揺れます。」


 いわゆる『乳揺れ』である。

 この文章により、後に全国フェミニスト議員連盟の擁護派と抗議派が『乳揺れ』をめぐって論争を繰り広げるようになった。

 それについての私の考察は後述するが、今一言だけ感想を述べれば「なんでそこに注目したのだろう?」である。


「下衣は極端なミニスカートで、女子中高生であることを印象づけたうえで、性的対象物として描写し、かつ強調しています。」


 通常、女子中高生のセーラー服はスカートとセットである。

 スカートの起源を説明して「だからエロくない」と主張しても意味がないと思うので、しない。

 しかし、ミニスカートを始め、スカートの丈についてはその時代ごとの流行があり、そしていずれも女性達が自分の好みでそれを決めてきたことは忘れるわけにはいかない。

 私が偉そうに言うことではないかもしれないが、フェミニズムが『女性解放』を目標に含むのであれば、女性の服装を制限しようとするのはそれと反するように感じられる。

 セーラー服もミニスカートも、本人が着たいように着ればいいのではないだろうか。

 へその露出も同様だ。

 たまたまドキュメンタリー番組『世界の車窓から』を視聴していると、フランスの一般女性がへそ出しをしているのを見た。

 彼女の自由を制限するべきなのだろうか?

 ただし、プライベートゾーン(性教育で使われる用語で、本人しか触れたり見たりしてはいけない部位のこと。水着で隠すところ)が露出するのはまずいかもしれない。

 議連は「極端なミニスカート」と表現しているが、厳密には意味不明な言葉になっている。

 なにが極端なのかわからないからだ。

 せめて「極端に丈の短いスカート(ミニスカート)」と表現してほしい。

 そして、じゃあ戸定梨香のスカートが短すぎるのかというと、何と比べて判断したらいいのか私にはわからない。

 市井の女性と比べようにも、彼女の3Dモデルは、まさに職業としてのモデルのように足が長いからだ。

 ただ、結局のところ、先に言ったとおりプライベートゾーンさえ見えなければそれで何も問題ないとしか言えない。

 少なくとも、削除された動画については戸定梨香がどれだけ動いてもパンツが見えたりはしてないと指摘しておこう。

(他の動画は知らない。私は今回問題になった動画以外の、全ての動画でパンツが見えていないか確認するほど暇ではない)


『性的対象物』という言葉を説明しだすと長くなるので後述したい。

 だが結論からいえば、戸定梨香は『性的対象物』ではない。

 そして、全国フェミニスト議員連盟には日本語を吟味する人間はいないのだろうか?

「性的対象物として描写し、かつ強調しています。」ではなく「性的対象物として描かれています」と簡潔に表記してほしい。

『性的対象物』に強調もへったくれもないだろう。


「国連女性差別撤廃委員会の勧告(2016 年)は、日本政府に対して「固定観念と有害な慣行」として「メディアが、性的対象とみなすことを含め、女性や女児について固定観念に沿った描写を頻繁に行っていること」に懸念を表明しています。」

 さて、ここで少し訂正する。

「国連女性差別撤廃委員会」ではなく、正しくは『国連女子差別撤廃委員会』である。

 本書では以後、全国フェミニスト議員連盟側の資料を直接引用する場合を除いて『国連女子差別撤廃委員会』と表記する。


 この件についての説明は長くなるため、後で個別に解説したいと思う。ただ、今私の感想だけを述べるなら、この『国連女子差別撤廃委員会』の主張も、すこぶる怪しいものだ。


「公共機関である警察署が、女児を性的対象とするようなアニメキャラクターを採用することは絶対にあってはならないことです。 」


 ここで覚えておいていただきたいのは、結局のところ、戸定梨香そのものが否定されているということだ。後に「戸定梨香そのものを否定しているわけではない」という主張が散見された。しかし、こうしたPRに適していないという指摘そのものが、つまり「戸定梨香そのものは否定しないが警察は戸定梨香を採用するべきではない」という主張そのものが、他ならぬ『戸定梨香の否定』でしか無いことを強調しておきたい。

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