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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
9/60

2.家族の絆(6)

「ユニス、ちょっといいかな?」

 扉をたたくと、ユウリィは中にいるはずのユニスに声をかける。

「・・・・・・」返事がない。

「ユウ!」エリザが声をかけて、こちらにやって来る。

「あら、エリザ。どうしたの?」

「ユニスの事が気になってね。勉強って教えるのあまり得意じゃないから、ルヴィナとベネティアに後をまかしてきたわ」

「そうなの。ユニス、入るわよ」ユウリィが扉を開ける。

 ユニスはベッドの上でひざを抱えてうずくまっていた。

「どうしたのユニス?」ユウリィがユニスの右隣に腰掛ける。

「ロファが何か意地悪でもしたの?」エリザも反対側に腰掛ける。

 ユニスは黙って首を振ると、顔を上げておもむろに尋ねる。

「ロファから何か聞いてない?」二人は突然の質問の意味がわからない。

「例えばどんなこと?」ユウリィが優しく尋ねる。

「わかんない。でもロファ、私に何か隠してる!」ユニスは大声で叫ぶ。

「聞いてもはぐらかして教えてくれないの」

「それはロファだって隠し事の一つや二つはあると思うわよ、ユニス」

 エリザが笑って答える。しかし、ロファが隠している事が何かに気付く。

「もしかしてロファ、まだ言ってないんじゃ・・・」

 そのエリザの一言でユニスは顔をひざにうずめた。

「やっぱり!ロファ、私がまだ子供だから、だから隠してたんだ!」

「それは違うわよ、ユニス!」

 ユウリィの一言はユニスに届かない・・・。

「ひどいよロファ!私には何も教えてくれなかった!何も、一言も!」

 ユニスは涙声になっていた。ひどく興奮している。

「もう一人は嫌なの!一人はいや!一人にしないでロファ!」

「ユニス!!」

 その声の鋭さにユニスが顔を上げる。そして・・・・・・

 

 バチィン!!


 一瞬、頭の中が真っ白になるユニス。ほおが熱い。

 ユニスがたたかれた方を向くと、ユウリィが、目に涙をためて怒っていた。

 息を整えて、落ち着いてから口を開くユウリィ。

「・・・ユニス。なんでそんな事を言うの?」ユニスの目をじっと見る。

「ねぇ、なんで?私達はあなたの家族じゃないの?私達じゃあ、あなたの家族にはなれないの?」ユウリィは涙を流していた。

「そうよ、ユニス。あたし達はみんな家族じゃない!」

 エリザも力強く言う。

「確かに、いまはまだ家族とは言えないかもしれない。けど、だからこそこれからみんなで家族になろう、って一生懸命なんじゃない!」

 ユニスがエリザの方を向く。エリザがユニスにほほ笑む。

「もうユニスもあたし達の家族なんだから、信じてくれなきゃ悲しいよ!」

「そうよユニス。ロファだけじゃなく、私達のことも信じてほしいな!」

 ユウリィもそう言って、涙を拭いてほほ笑む。

 ユニスは心が暖かくなる気がしていた。

(私の・・・家族・・・?)

 その響きはとても懐かしく、そしていつまでもユニスの心で響いていた・・・。

(私を暖かく包んでくれる家族がいる・・・・・・?)

「そうよユニス」ユウリィが声をかける。優しい声・・・。

「あたし達はみんな家族よ」エリザの声。暖かい・・・。

 ユニスは今、幸せに包まれていた。


「そうか、良かった・・・」

 戻って来て一部始終を話し終えたユウリィに礼を言うロファ。

「もう心配いらねぇよ、ロファ」そうギルティスが言う。少し酔った様で言葉がぞんざいになっている。

「そうだね・・・」ロファが最後の一杯を空ける。空になった瓶は床に転がっていた。

「うまかったよギルティス、ありがとう。おやすみ、ユウリィ」

 ロファは部屋に向かいながら明日の別れの事を考えていた。

 また泣かしてしまうかもな、と思ったが心配はしていなかった。

 ユニスにはもう、一緒に泣いてくれる家族がいるのだから・・・。

 そして自分にも・・・。


 今宵、夜空はどこまでも澄み渡り、天空の星々は、一つの大きな試練を見事乗り越えてみせたその全ての人々を、遥かな高みから見守る様に今も静かに瞬いていた・・・。

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