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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
8/60

2.家族の絆(5)

 出発を明日に控えた前日、ロファは屋上で一人、昼寝を楽しんでいた。

「また昼寝・・・?」屋上に不意に現れた少女が呆れた声でつぶやく。

 だが今みたいに、無邪気な顔して眠っているロファが、ユニスは大好きだった。

 見ているだけで安心をくれる、そんなユニスの宝物であった。

「このままずっと一緒だと、いいな・・・」

 風が優しくユニスのほおを撫でていく。

 ユニスは髪を少しかき上げて、床に座ると、ロファの頭を持ち上げて、ひざ枕をしてやる。

(ずっと側にいてくれるよね、ロファ?)

 胸に詰まる思いが一体なんなのか、その正体を知るにはまだ少女は幼く、今はただ、その小さな胸を痛めるだけであった・・・。

「ふみゅ?」ロファが薄目をあける。どうも寝ぼけているようだ。

「やだ、ロファったら」その様子がどうにもおかしくて笑ってしまう。

「あれぇ、ユニス。なんでここにいるの?」

「ロファが私のひざの上にいるからよ」ユニスはそう言って笑う。

「ひざの上?そう言えば何だかあったかくて気持ちいい・・・」

(このまま眠っていたいな・・・)

 そこまで言って目が覚める。ひざの上?あったかくて気持ちいい!?

「うわぁぁぁぁぁ!」慌ててユニスから離れる。

「びっくりさせないで!心臓が止まるかと思ったじゃない・・・」

「それはおいらのセリフだよユニス・・・」

 ロファのセリフにすこしムッとするユニス。

「どーいう意味よロファ?」

「あ、いや、その・・・」思わず口ごもるロファ。

「そ、そう言えば何か用かい、ユニス?」

「別に。ロファの姿が見えないからここかなぁ、てね」

 機嫌をなおしてほほ笑むユニス。

「・・・そうか・・・」一瞬、少し寂しそうな顔を見せるロファ。

「ロファ?」ユニスはその一瞬の表情を見逃さなかった。

「ロファ、私に何か隠してる?」ユニスが鋭くロファに尋ねる。

「秘密は良くないよ、ユニス」ロファがとぼける。

「ごまかさないで!・・・ロファ、私には言えない事なの?」

 ユニスが涙ぐんでいる。ロファには何故、ユニスが涙ぐんでいるのか、その理由がわからなかった。

 ロファが黙っていると、ユニスはとうとう泣き出してしまった。

「ど、どうしたんだよユニス?」慌てて慰めようとするロファ。

「どうして、どうして隠すの?ユニスが子供だから?子供だから教えてくれないの?だったら早く大人になるから、だから、だから、ユニスを一人にしないで!」

 そう言いながら泣きじゃくるユニス。

(そうだ・・・。いつもふざけあっていたから忘れていたけど、ユニスはまだ、十歳の女の子だったんだよな・・・・・・。)

 ロファはぼんやりとそう考えていた。

(おいらにとってはルヴィナさん達と暮らし始めてからもう二週間だけど、ユニスにとってはまだ二週間なんだ・・・・・・。)

 ロファは自分とユニスの考え違いに気付く。

(それにおいらとみんなとは長い旅をして来た仲間だけど、ユニスは違う。・・・もしかするとユニスはずっと疎外感を持っていたのかもしれない。だから・・・)

 ロファはユニスの肩をつかんで抱き締めてやる。ユニスはロファの腕の中でしばらく泣いていた。


「いよいよ明日か・・・。準備はいいのか?」

 ロファはギルティスの部屋にいた。

 ユニスはほとんど夕食には手を付けず、部屋に閉じこもってしまった。

 ユウリィはユニスを心配して、様子を見に行った。ルヴィナとベネティア、それにエリザの三人は子供達の勉強を見ている。

「おいらに必要なものはそう多くないから」ロファが杯を空ける。

 二人は、ギルティス秘蔵の逸品を飲んでいた。秘蔵とは言っても子供達が、食事の際の軽いワインと同じつもりで飲まないようにする為に、彼の部屋に隠しておいた物という意味である。

「ロファ、お前、ユニスに何か言ったのか?」

「何も言ってないよ。何も言わなかったから怒っているのさ・・・」

 右手で酒瓶を持ち、酒を注ぐロファ。

「どういうことだよ、ロファ?」ギルティスも酒を口に運ぶ。

「あの娘は、ユニスはまだ心を開いていない・・・。心を開くというのは時間のかかる事だといってもね。少し・・・悲しかったよ・・・・・・」

「心を開いていない?」ギルティスが不思議そうに尋ねる。

「なんとかしたかった。でももうできないね。もっと早くに気付いてさえいれば・・・」そう言うとロファは杯を一気にあおった。 

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