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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ジーン・レイナート・アーカイヴス
53/60

2.この想いを花にかえて

第二話目になります。短いため1話完結です

 寒風吹きすさぶ日々の中、久々に暖かな昼下がり。ジーンはマリーシルバー地区を散策していた。

「何とも眠たくなるような陽気だな・・・」

 冬場の太陽の日差しというのは不思議と、強いのにも関わらず穏やかに感じるのは何故だろう。

 それはまさしく『ぽかぽか』といった表現がピッタリとくる感じである。

「国立公園にでも足を延ばして昼寝でもするか・・・」

 そう思って歩いていると目の前を知り合いの有翼族の少女が歩いていた。

「・・・あれ? おーいキラじゃないかぁ!」

 すると目の前を歩いていた少女が振り向く。

「何だ。誰かと思えばジーンか。どうしたんだこんな所で・・・」

「ん? いや別に、暇だから国立公園で昼寝でもしようかなって思ってたんだけど・・・そう言うキラは?」

「私も似たようなものだ。特にする事もないからちょっとこの辺を散歩していただけさ」

「そうか。じゃあ俺につきあわないか?」

「私に添い寝をしろというのか?」

 キラの目つきが急に危険な物になる。

「違う違う、昼寝は中止!折角だから一緒に歩こうって言ってんの!!」

 ジーンは慌てて手を振った。

「そうか・・・。まぁたまにはジーンに付き合ってみるのも悪くはないか」

「じゃあ行こう!」

 そして二人は他愛もない話をしながら歩いていった。


 国立公園内を歩いていた二人は突然女性から声を掛けられた。

「あらあら、ジーンさんにキラさんじゃないですか」

「へ? ・・・やぁエディ。こんにちは、いい天気だね」

 二人を呼び止めた女性は国立公園内にあるフラワーガーデンの管理人、エディ・アリスだった。

 彼女は今日もフラワーガーデンに咲いている花達の世話をしていたようだ。

「ええ本当にいい天気。ところでお二人は今日はどうしたんですか? もしかしてデートとか♪」

「ち、違う! たまたま散歩中に出会っただけだ!!」

キラは顔を真っ赤にしつつはっきりと否定した。

「そういう訳さ、残念だけど・・・。一人で散歩してるのにも飽きたから一緒に歩いてるんだ。そういうエディは今日も花の世話かい?」

「ええ。・・・そうだ!もし良かったらうちのお花を見ていきませんか?春とはまたひと味違った趣がありますよ」

「へぇ、面白そうだね。行ってみないかキラ?」

「そうだなちょっと寄って行こうか」

 そうして二人はエディの案内でフラワーガーデンを見て回る事になった。


「冬なのに結構咲いてるもんだなぁ」

 エディの後についていろいろな冬の花を見て回るジーンが感慨深げにそう言った。

「本当だな。しかしこれはこれで他の季節にはない楽しさがあるな」

 そう言ってキラもあれこれと見回してはエディに花の名前を聞いていた。

「夏場の花はあの照りつける太陽に負けない位の鮮やかな色彩で私達を楽しませてくれますけど、冬場の花は柔らかな日差しと打ち解けあって厳しい寒さの中にあっても人々の心を和ませてくれるんです」

 エディのそんな一言にジーンとキラは素直に頷く。

 そして三人は紅と白、それぞれの色で咲く椿の前までやって来た。

 するとジーンはおもむろにキラの方を振り向いて言った。

「キラってさ、まるで椿みたいだな」

「? どういう意味だ?」

 言ってる意味がよくわからずキラは首をひねる。

「椿の花言葉って知ってる? 『気取らない魅力』って言うんだ」

「あらあらまあまあ、意外でしたわ。ジーンさん、花言葉なんて御存知だったんですか?」

「あ、やっぱり意外だった?」

 しかしジーンは別段気にした様子も見せない。

「それがどうして私なんだ?」

 キラがジーンに訳を尋ねる。

「ほら、キラってさ。美人だけどその事を鼻に掛ける事はしないだろ?料理上手だって事も自慢したりしないしさ。そういう所が『気取らない魅力』だと俺は思うんだ・・・」

「ば、バカ! 変なこと言うな!!」

 その言葉を聞いたキラは耳まで真っ赤になっていた。

 そんな二人の横で話を聞いていたエディがおもむろにジーンに尋ねる。

「それじゃあジーンさんは白い椿と紅い椿だとどちらがよりキラさんらしいと思いますか?」

 何気なく尋ねられた問いにしかしジーンは少し考えてから答えた。

「う~ん、やっぱり白い方かなぁ・・・。翼が白いからっていうのもあるとは思うけど・・・」

「そうですか。・・・良かったですわねキラさん♪」

 エディは一人で含み笑いを浮かべつつキラにそう言った。

「何が良かったの?」

 ふと感じる嫌な予感に思わずジーンはエディに問い返した。

「・・・椿は花の色によっても花言葉の意味が変わるんですのよ。ちなみに赤だと『慎み深い』ですわ♪」

「じゃあ白は?」

「白い椿の花言葉は『最高の愛らしさ』というんです。ですからジーンさんはキラさんの事を最高に愛らしい女性だと思ってらっしゃる事になりますわね♪」

「ちょ、ちょっと待ったあ~!!」

 これにはさすがのジーンも顔が赤くなる。キラの方はというとこちらももうこれ異常ない位に真っ赤になってしまっている。

 しかしエディはそんな二人にはお構いなしにマイペースに話を進める。

「という事ですから、良かったですわねキラさん。でもお気をつけて。ジーンさんはとっても『ストレリチア』な方ですから」

「ストレリチアって?」

 キラが小声でそう尋ねると、エディは再び歩き出し、二人に付いて来るように促す。

 ジーンとキラはお互いに顔を見られないように意識しつつエディの後に付いていく。

 エディが足を止めると、そこにはオレンジ色の花びらに紫の花弁を持った、どこか鳥の姿にも似た花が色鮮やかに咲いていた。

「この花が『ストレリチア』ですわ。別名『ゴクラクチョウカ(極楽鳥花)』。この花の花言葉は『恋する伊達男』と言うんですのよ♪」

「いいっ!?」

 さすがにそこまで造詣が深いわけではなかったジーンが思いも掛けない花の登場に思わずたじろいだ。

「ジーンさんは女性の方にとても『寛容』な方ですからキラさんも気をつけないと・・・。ちなみに『寛容』もストレリチアの花言葉の一つですわ♪」

 キラがジト目でジーンを睨んでいた。

 もはや今のジーンは『あうあう』といった言葉しか口にはできなくなっていった・・・。


 帰り際、エディは二人にそれぞれカードを添えて花の鉢をプレゼントした。

 ジーンには淡い紅色の小さな花がたくさん付いている『エリカ』の花を、キラには白い花が釣り鐘のように下向きに咲いている『スノードロップ』の花をエディは選んだ。

 メッセージにはそれぞれこう書かれていた。

 ジーンのメッセージカード

(エリカの花言葉は『博愛、孤独、裏切り』です。女性『博愛』の精神は別に構いませんがあんまり思わせぶり事をして女性を『裏切って』ばかりいると最後には誰にも相手にされなくなって『孤独』な晩年を迎える事になりますよ)

キラのメッセージカード

(スノードロップの花言葉は『希望、恋の最初のまなざし』です。何が『恋のきっかけ』になるかわかりませんし『希望』を持って下さいね♪)


 この一件の後、ジーンはしばらくの間精神修行と称して教会から一歩も出なくなり、キラは時々ボーっとしている事が多くなったという。

「ちなみに5月5日の私の誕生花は『アヤメ』、花言葉は『良い便りを待っています』。皆さんのご感想お待ちしています♪」

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