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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
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2.家族の絆(1)

とりあえず、サルベージできた区切りのよいところまでを随時投稿していきます。

 これは、ロファが『灯の家』を旅立つ少し前のお話である。


 あの騒動から一週間がたった。

 この一週間に、孤児院『灯の家』では多くの事が慌ただしく起こった。

 まず孤児院の開設に始まり、みなし子達の受け入れとその教育、すべり台などの遊び場作り、月一回のチャリティーバザーの提案と実施、ロファ新作の芸の『不思議舞台』の第一弾、『ピエロが泣いた日』の初上演。

 この時、ルヴィナの提案により孤児院名はロファの演目の一つから名前を取って、『灯の家』と命名された。

 そしてその『灯の家』から新しい家庭が誕生した。

 『灯の家』の『家族』のギルティスとユウリィの二人が晴れてめでたく結婚したのである。

 ユウことユウリィとギルことギルティスは長い付き合いになるらしく、ユウリィが男であることもギルティスは勿論知っている。

 その上で強い絆で結ばれた二人を『家族』はみんなで祝福したのだった。


「ふぅ・・・」

 ロファは、元の学校で言えば屋上で、一人、空を見上げていた。

 校庭から、今ではもう掛け替えのない、家族の笑い声が耳に響いてくる。明るく元気な笑い声・・・。


「いいですか?今日は正しい異性の口説き方を教えますよ。まず・・・」

「このバカ、なに変なことを教えようとしてんのよ!」ドカッ!

「い、痛いじゃないですか。私はただ物事を暴力を使わずに解決するための手段と暴力を使わずに他人と付き合う術を教えようとしただけで・・・」

「何だか私に当てつけた言い方に聞こえるけど?」

「気のせいですよ」

「さあ、みんな。今日は新しい踊りを練習しましょうね!」

「わぁい!」

「あ!ちょ、ちょっとみんな!どこ行くんです!?」


「よぉし、今日はみんなで逆上がりを練習しよう!」

「はい、ギルティス。質問!」

「こら、ティスト。今は『先生』と呼びなさい」

「じゃあ先生、質問!」

「なんだい?」

「先生はできるの?」

「もちろんさ。蹴上がりだって、なんだってできるぞ!」

「蹴上がりって?」

「うん、それはだなぁ・・・」


「すべり台の他に何かもうひとつ作ろうかしら?」

「エリザお姉ちゃん」

「なぁに、ユージィ?」

「僕、ブランコが欲しい!」

「あ、僕も!」

「そうねぇ?ユージィやマルクが欲しいって言うんじゃあ、あたしとしてもかなえないわけにはいかないわね」

「本当!?」

「やったぁ!ありがとう、エリザ姉ちゃん。大好き!」

「い、いいのよ!このくらいなんでもないから・・・」


 ルヴィナは今、街に用事で出掛けていた。なんでも、ある若い夫婦の間に初めての子供が生まれたらしく、挨拶も兼ねて、その夫婦の祝福をしに行ったのである。

 彼女はこの辺りで数少ない司祭であるため、街で何かお祝い事がある時に必ず呼ばれるのである。

 彼女自身、日ごろお世話になっている御礼ができるから、お役に立てれば嬉しいと言っている。

 ロファはと言うと、なんとなく気が抜けた感じがして、昼寝をしようと思い屋上に来ていたのだが・・・。

 大の字にひっくりかえって、流れる雲を見つめる。白い、本当に白い雲。

 少しずつ少しずつ彼の上を通り過ぎようとしている。

「こんな所で何してんのロファ?」

 一人の少女の顔が彼の前に現れる。ロファから見ると顔が上下反対に見えてすこし変な気がする。

 さらさらした髪は肩よりも下まであり、黒目がちの瞳が不思議と印象に強く残る。視線は真っすぐに、間近からロファに注がれる。

「おいらが踊って見えるのかいユニスには?」ロファが笑う。

「違うわ。ただ、ロファが考え事してるとは思いたくないの」

「どうして?」興味に駆られて尋ねてみる。

「怪我が治ったばかりで今度は悪い病気にかかったんじゃないかって不安になるから・・・」

 そう言ってユニスは顔を覗き込むのをやめる。

「・・・どうしてみんなそう言うんだろう?」思わず悲しくなる。

 ロファは起き上がって背伸びをすると、ユニスの前であぐらをかく。

 ユニスも、行儀よく床に腰を下ろす。

「ところで、一体何を考えてたの?」

「この世の愛と正義と平和について・・・」

「ロファ、そのセリフすごく似合わない・・・」

「わーん、ぐれてやるぅ!」

 その一言にイジけるロファ。ユニスは溜め息ひとつつく。

「それで本当は?」ひざの上で手を組んで尋ねてくる。

「ユニスも、きれいにしてればかわいいかなってさ」

「噓つかないで!」

 ユニスの顔が赤くなる。ロファは意外そうな顔をする。

 だがすぐに笑顔に変わると

「嘘じゃないよ。いや、ほんと。かわいいよユニス」とおだてる。

「違う!そういう事じゃなくて・・・」益々顔を赤くするユニス。

 はたして、はぐらかされて怒っているのか、恥ずかしさと嬉しさとで照れているのか、ユニスの顔は真っ赤になっていた。

「本当はね、なんか気が抜けたなぁって、そう考えていたのさ」

 ロファは穏やかな声でそう言った。

「いい天気だよなぁ・・・」

 ロファのそんなつぶやきにユニスは、何故かうすら寒い思いを感じた。

続きは現在サルベージ中です。

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