表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
フェレル・リンク・アーカイヴス
38/60

2.自由な風のように(3)

「・・・こんな所にいたんですね・・・」

フィリアが静かに言った。

「居心地が良くってね」

フェレルは顔を見ずにそう言った。

「何もないのに?」

フィリアが不思議に思ってそう尋ねると、フェレルは黙って首を振る。

「・・・『希望』がある」

その一言はあまりに自然で、フィリアの心にもスッと入ってきた。

「イティーナで、何を得たのか聞いてたよね?」

フェレルは突然、思い返したかのように言った。

「あ、あれは・・・」

声が沈み込むフィリアに、フェレルはしかし、きっぱりと告げた。

「『自由』を・・・。そしてどう生きるべきかを学んだつもりさ」

「どんな生き方ですか?」

フェレルはフィリアの顔を見て、ニカッと笑う。

「すべてを受け入れそれを乗り越えるという生き方さ・・・」

フェレルのその清々しいまでの笑顔にドキッとしつつ、フィリアは何とか平静を保つ。

「自由でいると・・・いい事ばかりじゃない。逆に嫌な事ばかりが起こる・・・。でもね」

 フェレルは空を見上げる。

「何の制限もない、本当の自分でいられるんだ」

 その時、二人の間を気まぐれな風が過ぎ去っていった。

フィリアを連れてきた少年も、フェレルに言われてみんなの元へと向かった後であり、だから今、ここにはフェレルとフィリアの二人だけであった。

「・・・フェレル・・・」

フィリアは静かにフェレルの前まで近づいていく。

「・・・のバカぁ!!」

強烈なフィリアの右フックがフェレルの顔面をとらえる。

「おごぉ!!」

フェレルは思わず蹈鞴を踏んで腰をつく。

呆然とフィリアを見上げていると、彼女は怒ったようにフェレルに言う。

「・・・さんっざん人に心配懸けさせてぇ、そのくせ何事もなかったみたいな顔してて、これじゃあ心配していた私がバカみたいじゃないですかぁ! ・・・心配した・・・」

 フィリアは涙で濡れた顔を隠すように両手を覆うと、火が点いたように泣き始めた。

(この人でも、泣くことがあるのか・・・)

などと考えつつ立ち上がったフェレルは、優しくフィリアを宥める。

「ごめん・・・なさい。まさかそんなに心配してくれてたとは思わなくって・・・」

 フィリアは一向に泣きやまない。

「もう、私は嫌われたものだとばかり思っていたから、他の仲間にも気まずくて会いに行けなくて・・・。あのとき君が、とても疲れているように見えたものだから、わざと怒らせるような言い方をしたんだけど、後になって『あれは嫌われたな』って思って、失恋の自棄を仕事にぶつけていたわけで・・・。だから・・・ああもう、私が全部悪かったからいい加減泣きやんでくれよぉ!」

 今のフェレルには、フィリアが一刻も早く泣きやんでくれるよう、胸を貸す事しか出来なかった・・・。


 こうした一連の騒動の後、最貧民地区の状況を重く見たナミ姫は、復興の中心部をしばらくの間最貧民地区にすることを決定した。

 その主要メンバーとしては、当初の予定に入っていなかった、フェレルをはじめとするイティーナからの移住希望者の殆どを当てることにした。

 だから実際には中心部が二つできたようなものであった。

特に、フェレル達イティーナ組は今までに培われたノウハウとチームワークがあった為、最貧民地区において目覚ましい成果を上げる事となる。


 さて、フェレルとフィリア、二人のその後の関係はというと・・・


「はい、ご苦労様でした。それじゃあ次は・・・」

「あのぉ、フィリア?」

「はい?」

「休憩時間は・・・?」

「もう一頑張りした後ごゆっくりどうぞ♪」

「そ、そんなぁ・・・。私、もうヘトヘト何だけどぉ・・・」

「・・・私のこと、嫌いなんですね?」

「へ!? いや、そんな事はないですよぉ、はい」

「だったら、私を悲しませたお詫びとして、せーぜい、働いて下さいね♪」

「そ、それは・・・でもあの時は・・・」

「やっぱり嫌いなんですねぇ!?」

「わっかりました! やります、やりたい、やらせてください!!」

「そうですか? じゃあ遠慮なく・・・」

(どうして私、こんな女に惚れたんだろう・・・)

女の涙は高くつくと、フェレルは体全体で覚えたのだった。

(ウフフ。私、男の人に泣かされたの、初めてなんですよ・・・)

 必死に働くフェレルの後ろ姿を見ながら、フィリアはそっと、心の中でそうつぶやくのだった・・・。

これで2話目も終了です。3話目は2部構成になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ