11.あなたに愛を誓いましょう
在庫一掃セールその1です
結婚式、チャペルのウェディング、祝福の声・・・。
天気はこの上もない青空を見せ、平和の象徴である鳩も楽しそうに飛んでいた。
「・・・・・。汝はこの者を妻と認めますか?」
まだ若い、三十そこそこ位の神父は新郎に、表面だけは厳かに尋ねる。
「え、あ、いや・・・」
「新婦・キャロリアン・リムロード。汝はこの者を夫と認めますか?」
神父は新郎の答えを、聞き間違いであるとばかりに無視すると、同じ質問を、今度は新婦の方にした。
「はい・・・」
ピンクのヴェールで顔を隠しているので表情まではわからないが、新婦の声は喜びに満ち溢れていた。
「それでは神の名の下に、ここに二人を夫婦と認める」
新郎にとっては、まるで死刑判決を告げられた気分であった。
今、この瞬間に世界が終わりを迎えたとしても、彼は喜んでそれを受け入れただろう。
だが運命の年は既に過ぎた後であり、それを願うには僅かに時期はずれていた。
(誰か嘘だと言ってくれぇ!)
「それでは誓いの口づけを・・・」
新郎の心の葛藤も知らずに、よしんば知っていたとしてもお構いなしに、神父は静かにそう告げた。
式場内は一瞬にして沈黙に包まれる。
新郎は、心の中で神父の事を恨みつつ、新婦の顔を覆っているヴェールを優しく払いのける。
栗色の髪は肩より少し下まで伸び、整った容貌にはうすい化粧がほどこされてとりわけ美しく、ほおは喜びでほんのりと紅く染まっていた。
もしも新郎がこの場で誰かに代われたたならば、この場にいる若者達は候補に全員名乗りをあげた事だろう。
何せ相手は街の実力者の一人娘。しかも美しく、その心根は優しく一途である。
それ故に、新郎は深く悩んだ。
どうしたら彼女を傷つけずに済むか、傷つけるにしても浅くできるか・・・。
「誓いの口づけを」
神父がもう一度念を押す。
新郎は思わず神父に殺意を抱いた。
(なんで俺はここでこうしているんだ! 誰でもいいから教えてくれぇ!!)
祝福ムードに包まれる教会の中で、ただ一人、真剣に悩んでいる新郎。
彼の名前はロファ・サーフェ。
人生最大の危機であった・・・。
事の発端は五日前に遡る。
ゼルダの家を旅立って既に二週間がたち、ロファは一路『灯の家』を目指していた。
「・・・一日位なら平気だろう」
ロファは行きとは違い、帰りはアルバトゥール沿いの街道を通っていた。
もっとも、しばらく前にもとある事情でアルバトゥールに来たのだが・・・。
そしてロファはこの時の自分の甘い考えを、すぐに後悔する事となった。
「はぁ・・・。お腹も空いてきたし、どこかで宿でもとろうかなぁ・・・」
もう昼時を僅かに過ぎ、通りを行く人もまばらになっていた。
「なんか・・・、今回の旅は『懐かしのふるさと巡り』って感じだなぁ」
(ここがロファのふるさとなんですか?)
ロファに背負われているリシュリタが面白そうに尋ねる。
「いや、そうじゃないけどね。要するに『思い出深い土地』って事さ」
ロファはリシュリタを背中から降ろして抱えると、そっと奏でる。
「・・・あんまり良い思い出じゃないからすぐに離れるつもりだけどね」
リシュリタは黙ってロファの腕に抱かれていた。
そこへ、一頭の暴れ馬が土煙を上げて駆けて来るのが遠目にもわかった。
「暴れ馬だぁ~!」
近くにいた男が大声で叫ぶと、人々はそれぞれ、道路脇に避ける。
しかし子供の一人が、逃げる大人達にぶつかり、道の真ん中で変な具合に転んでしまう。
「うわぁぁぁん!」 子供は足を押さえてその場で泣き出した。
「坊やぁぁぁ!」
「ダメだ、危ないぞ!」
子供の母親らしき女性が助けに行こうとするのを周りにいた男達が止める。
するとその時、ロファはおもむろに少年と迫り来る馬との間に割って入った。
「おい、危ないぞぉ!」
ロファはその声には答えず、腰のダガーを鞘ごと外して目の高さに持ち上げると、水平に刃を引き抜いていく。
それに合わせて突如、周囲にただならぬ気迫が満ち溢れる。
「ヒヒン!?」
その気迫に触れ、馬が急に立ち上がる。
鞘を捨てると、ロファは静かに、そして優雅に動き出す。その顔は、まるで仮面のような無表情であった。
「・・・汝 死せる英雄 我が友よ」
不思議な響きを持った言葉が、ゆったりとしたリズムで流れ出す。
「人の死命は天の導き されど心はいずこへ帰さん」
言葉を紡ぎつつロファは舞う。抜き身のダガーも心なしか妖しく光って見える。
ソードダンサーの踊りともまた違う、言うなればこれは「舞」であった。
「汝が心 大地に宿り あまたの若者 道を継ぐ」
それは静かな表情であった。
時には怒り、時には悲しみ。
表情は変わらないのに、そこに浮かび上がる感情は様々であった。
「されど汝 美酒交わしたこの友は」
動きや表情の静かさが、かえって内側の慟哭を露にする。
息が・・・苦しい。
「今は一人になりにけり。今は一人になりにけり・・・」
そう言ってロファは、胸にダガーを勢い良く突き立てる!
その直前で、舞は終わった。
ロファは、放り投げた鞘を拾い上げると、再びダガーをそれにしまう。
突如、盛大な拍手がわき起こる。人々は皆、ロファの芸に感動していた。
拍手に片手で答えつつ、ロファは馬に近づいた。
「よしよし、良い子だ」
ロファは左手で手綱を掴むと、右手で鼻の頭を撫でてやる。
「すげぇよあんた! 一体何者だい?」
人々はロファの周りに集まると尋ねた。
ロファは僅かに苦笑して、
「別に何者でもないよ。ただの旅の道化師さ」と答える。
「ありがとうございました」
子供の母親が深々と頭を下げる。
「足を痛めたみたいだね。どれ・・・」
ロファは子供の前にしゃがみ込み、足の具合を見る。
そして腰につけた袋から薬草を取りだし、水筒の水で浸してからそれを患部に当て、布で足首を縛る。
「骨や節には影響はないから大丈夫。こうしていればすぐ良くなるよ」
その時子供の父親が息せき切ってやって来た。
子供の無事を確認すると父親はロファに深く礼を言い、子供を背負って、妻と子の三人で帰っていった。
三人の姿を嬉しそうに見送ると、ロファは再びリシュリタを手許に戻して歩き出した。
するとその時、
「ロファ、ロファじゃない?」
その一言で、ロファは確実に「ギクッ」と体が固くなった。
こわごわと振り向くその先に、立っていたのは一人の少女。
「やっぱりロファだわ! きゃあ、懐かしい!!」
年の頃なら十七・八。目は大きくはっきりとして、形の良い鼻の下では、唇が優雅な曲線を描いている。
栗色の髪は肩より少し下辺りまでのびていて、着ている服は、質素だが高価な布地で作られていた。
生来の性格からして明るいのだろう今の彼女は、とびきりの笑顔を満面に湛えつつ、右手をちぎれんばかりに大きく振っていた。
「や、やあキャロリアン。こんな所で会えるなんて驚いたよ。はっはっはっ!」
「昔みたいに『キャル』って呼んでよロファ! それから、ものすごく棒読みよ」
キャルの鋭い(?)指摘にも、ロファは相変わらず作り笑いのままであった。
「でもホント久しぶりぃ。もう十年以上経つものね」
「そ、そうだね。じゃ、じゃあ、おいら急ぐからこれで・・・」
そそくさと逃げ出そうとするロファの腕を、キャルはしっかり掴んで離さない。
「ダぁメ! お父様も、きっとロファに会いたがってるわ。さぁ、行きましょう!」
そう言ってキャルは、有無を言わさずロファの服を捕んだまま、歩き出す。
「ちょ、ちょっと、キャル!?」
キャルに引きずられながらロファは、『やっぱりこなけりゃ良かった』などと後悔していた・・・。
「おお、ロファ! 大きくなったな。元気そうで何よりだ」
口の周りを立派な髭で覆った、人好きのしそうなその四十後半ぐらいの男は、ロファを見るなり椅子から立ち上がった。
「すいませんアルトマンさん。お仕事中にお邪魔して・・・」
ロファは案内された執務室を、居心地悪そうに見渡した。
「何を他人行儀な事を言うんだロファ。私と君の父上・グラハムは互いを親友と認める間柄。だから、息子のいない私にとって、君は息子も同然だよ!」
そう言ってアルトマンはロファの肩をバンバンと強く叩く。
その痛みに顔をしかめつつも、ロファは笑った。
彼に悪意がないのはわかっていたから・・・。
「聞いて、お父様。ロファったら私達に挨拶もしないで、この街を出る所だったんだから!」
キャロリアンは不満そうに口を尖らせた。
「いや、それは・・・」と、思わず答えに詰まるロファ。
「大方お前に会うのが怖かったのだろう。なにせロファがまだ十二歳だった時、五歳だったお前にさんざん手を焼かされていたからなぁ。それが大きくなったらと考えたら、私でも同じ気持ちになると思うぞキャルよ」
そう言うとアルトマンは豪快に笑う。
「そうなの? そんなの私が子供の時の事じゃない! いくら私でも今はれっきとしたレディよ。失礼しちゃうわ!」
キャルは頬を膨らまして、怒ってるんだぞ!、とばかりに意志表示をする。
「レディなら、男の首根っこを掴んで引きずったりしないと思うけど?」
ロファが一言呟くと、キャロリアンは顔が真っ赤になる。
「・・・! ロファの意地悪!!」
キャロリアンのその様子に、アルトマンとロファは大きく笑った。
コンコン!
「入れ」 アルトマンは一言そう命じた。
「失礼します」
そう言って入って来たのはキャロリアンと同じ位の少年であった。
淡い金髪を短く刈り、その顔は未だ幼さを残してはいたが、なかなかの美少年であった。
「お茶の準備が整いました」 少年はキャロリアンにそう告げた。
「ありがとうリンネット」
リンネットはキャロリアンに優しく微笑んでから、僅かにロファの顔を見て、それから静かに退室した。
(何だろう・・・?)
ロファはリンネットのその様子に微かな疑問を抱いた。
「さぁ行きましょうロファ。お父様も後でいらしてね。とっておきのクッキーがあるの。ロファの口に合えば良いけど・・・」
「味にこだわれるほどの食生活は送っていないから、せいぜい期待させて貰うよキャル」
キャロリアンはロファの腕をぐいぐいと引っ張って執務室を後にする。
ロファも軽くお辞儀をしてから退出した。
その夜
夕食をすまし、食後のお茶を飲みながらの楽しい談笑も終えて、ロファは今、あてがわれた客室の一つにいた。
「はぁ・・・疲れた・・・」
ロファはリシュリタを横に置くと、ベッドの上に仰向けになる。
(・・・随分と元気なお嬢さんね)
リシュリタはクスクスと笑いつつ、そう言った。
「キャルは昔からそうだったよ。とにかく一ヶ所に落ち着くって事を知らなくて、おいらはいつもハラハラしてたよ」
昔を少し思い出してロファは苦笑した。
(心配してたのね・・・)
リシュリタの声に複雑な響きが混じる。
それには気付かずにロファは続ける。
「まぁね。いつ、何が自分の身に起こるかわからなくて、本当に不安だったよ」
(え!?)
ロファの心配の矛先がロファ自身だと知り、リシュリタは思わず拍子抜けする。
「何せ、池に落ちると思って慌てて助けに走れば、しゃがみ込んで池に落ちるのを防ぎ、代わりにおいらはそのまま池へ・・・」
(・・・・・)
「木に登って降りれなくなったみたいだから助けに行けば、人を足場に無事着地。かわいそうな足場は放って置いて、おやつに向かってダッシュを駆ける!」
(それは・・・確かに不安ね)
リシュリタも思わず納得していた。
「だろう?」
ロファも思わずため息をついた。しかしその時、誰かが扉を叩く音がした。
「ギクぅ!?」 ロファの背に緊張が走る。
「あのぉ・・・起きていらっしゃいますか?」
ロファはその声にホッと胸を撫で下ろす。さっきの少年の声である。
「起きてるよ、どうぞ」 ベッドの上で起きあがると入るように促す。
扉を開けて入って来たのはやはり、先程リンネットと呼ばれた少年であった。
「やあ、何か用かいリンネット。人生の先輩に恋愛指導でも受けに来たのかい?」
ロファはいつもの軽い口調でそう言った。
「え、どうしてわかったんですか?」 リンネットは驚いて目を見張る。
「い・・・いやぁ、何となく雰囲気からね・・・」
まさか冗談だったとは言えない。少なくともこんな場合では・・・。
「そうですか」
リンネットは疑いもせずに納得する。根が純朴なのだろう。
ロファは心の奥底で罪悪感を覚えた。
「実はロファさんに頼みがあるんです!」
そんなロファの心に気付かずに、リンネットは真っ直ぐにロファを見た。
「何だい?」
内心で「やめろぉ、そんな目で俺を見ないでくれぇ!」と叫びつつ、ロファは鷹揚に頷く。
するとリンネットは手紙を一つ、ロファに手渡して言った。
「これを、お嬢様に渡して欲しいんです!!」
「ええっ!?」 ロファは酷く嫌そうに叫んだ。
「どうもロファさんはお嬢様とは仲がおよろしいご様子ですし、お願いします!」
リンネットは背中が見えるほど深く頭を下げる。
ロファは困っていたが、少年が自ら苦労をかって出るというのならそれが世界平和への道だと信じ、その役を引き受けた。
しかしその事がまさか、あんなとんでもない事にまで発展しようとは、この時は誰も気付かなかった・・・。
「ありがとうございますロファさん!」
神ならぬ人の子であるリンネットの顔にはこの時、歓喜の表情が浮かんでいた。
「でも渡すだけだよ。そこから先は自分で何とかしてくれよな」
ロファは注意深く念を押す。
だが、運命はこの時、ロファをより深みへと引きずり込もうと画策していた。
「はい、わかりました!」
ロファに一言礼を言うとリンネットは部屋を後にした。
(簡単に引き受けて良かったのですかロファ?)
リシュリタがロファに語りかける。
「ま、良いんじゃないの。これも人助けだと思えばさ!」
ロファは明るい声で笑った。
(自分の恋愛はそっちのけで人の手助けが出来るなんて・・・大人なんですね、ロファは)
リシュリタはからかうような口調でそう言った。
「そりゃあ一応、四捨五入で三十だからね」
ロファもトボケた口調で軽く言った。
(・・・・・バカ!!)
リシュリタは急にスネたようにそう言うと、押し黙ってしまった。
「どうしたのリシュリタ?」
四捨五入で三十の割には、リシュリタの『思い』に気付かぬロファであった。
「ロファ、ここにいる?」
まだ朝も早く、アルトマンがのんびり朝食を取っている最中に、キャロリアンが突然駆けて来て、そう言った。
「ロファならもう街に出て行ったぞ」
アルトマンは別段動じることもなく、朝から元気な愛娘に笑いかける。
「ええ~! 早すぎるわロファったら!!」
「待ちなさい、キャル」
早速駆け出そうとするキャロリアンに対して、アルトマンは静かに呼び止める。
「なぁにお父様?」 キャロリアンはもどかしそうにその場に立ち尽くす。
「お前は行ってはダメだ」 父の一言は冷たかった。
「どうしてぇ~?」 当然、キャロリアンも反発した。
アルトマンは静かな声で娘を諭す。
「お前が側にいたらこの街の人間は落ち着いてロファの芸を楽しめないだろう。そうするとロファにとっても迷惑になるからだ」
「そんなのおかしいわ。私の事なんか気にしなければ良いのよ」
キャロリアンは酷く不満そうであった。
「お前はこの街の領主の娘だぞ。たとえお前の気持ちがどうであれ、周りの人間が落ち着けるわけがなかろう」
「ひど~い。『領主の娘』って差別用語だわ!」
キャロリアンは駄々をこねる子供のようにキャンキャン叫ぶ。
「それに、たまには私の仕事を手伝ってくれても良いだろう? お父さん一人で寂しいぞ」
つい本音を漏らしてしまう、難しい年頃の娘を持つ父・アルトマン。
「だってぇ・・・」 キャロリアンは、シュン、と大人しくなる。
「まずは席について朝食を取りなさい」
娘は渋々、父の命に従った。
「・・・来てないな」
ロファは客達を見渡してぽつりと呟く。
実はアルトマンにキャロリアンを止めさせたのはロファであった。
それは今晩のシチュエーション作りの一環であったからだ。
(もっとも、本音はやっぱり『邪魔になりそうだから』何だけど・・・)
ロファは客達に虹の舞を披露しながら、心の中でキャロリアンとアルトマンに謝罪していた・・・。
「ただいまぁ!」
今日の上がりが良かった為、ロファはほくほく顔で帰って来た。
「お帰りなさい、ロファ!」
ロファの帰りを待ちくたびれていたキャロリアンが、駆けつけるなりいきなりロファの首に抱きついた。
「こ、こらキャル!」
体全体で彼女の温もりを感じ、その胸の柔らかさに赤面しつつ叫ぶロファ。
乙女のたしなみは何処に行ったのか、ロファに抱きついたままキャロリアンは話し始める。
「聞いてよロファ! お父様ったら、私が行くとロファの迷惑になるから行くなって・・・」
「そ、そうだ! キャルに渡すものがあったんだ!!」
その話題には触れたくないとばかりにロファは言ってのける。
「え? 私に!?」
そう言ってロファから離れると、キャロリアンはワクワクして待つ。
「うん。これなんだけど・・・」
そしてロファはリンネットの手紙をキャロリアンに渡した。
「街で受け取ってね。君に渡して欲しいって」
「誰から?」 当然キャロリアンは相手を尋ねた。
「読めばわかるんじゃない? 一旦、部屋に戻って読んできなよ」
「別に後でもいいわよ」
そのキャロリアンの返事にロファは慌てて言い繕う。
「いや、大事な手紙らしいからなるべく早くに読んだ方がいいよ」
「そう? わかったわ。それじゃあ先にお茶でも呑んで待っててロファ」
「ああ、そうするよ」
「ロファさんあの手紙、渡してくれました?」
ロファのティーカップにお茶を注ぎつつ、リンネットは小さく尋ねる。
「うん。街で受け取った事にして、今、部屋で読んでいるはずだよ」
「ありがとうロファさん! 本当に感謝します!!」
「そう思うなら、もう二度と人に頼まず自分の手で渡してくれよな」
そう言うとロファは、紅茶を一口含む。
「ロファ!!」
その時、勢い良く扉を開けてキャロリアンが入って来た。
ロファは、突然の物音に吹き出した紅茶を、リンネットから受け取った布巾で慌てて拭く。
「な、何だいキャル? ラブレターでも受け取ったのかい?」
ロファにも自然、笑みがこぼれる。
キャロリアンはいつもの彼女らしくなく、おずおずとロファに近づくと、いきなりロファに唇を重ねた。
硬直したのはロファだけでなく、ロファの側に立って彼女の返事を待っていたリンネットにしてもそうだった。
息が苦しくなる程に深く、長い口づけ。
彼女の唇がロファから離れると、彼女はしおらしく、しかしこの上ない喜びに裏打ちされた微笑みを浮かべてこう言った。
「嬉しかったわロファ! あなたがこんなにも長い間、私の事を思ってくれてたなんて・・・」
「へ!?」 戸惑うロファ。何の事だがわからない。
「身分の差なんて関係ないわ! 特にあなたの場合は全くそんな心配なんていらなかったのに、ずっと気にしていたなんて・・・。それで私に会いに来れなかったのね」
「あのぉ・・・」
「ううん、何も言わないで! ああ、夢みたい。子供の頃から好きだったあなたに告白されるなんて!!」
「なんだってぇ~!?」
ロファはその場に立ち上がって叫ぶ。
「手紙を渡す時の台詞も素敵だったわ。大事な手紙だからって。そうね、これはとても大事な手紙よ。私の一生の宝物だわ!!」
「いや、ちょっと・・・」
「でも私としては手紙よりも直接言って欲しかったわ。・・・あ、そうだわ! 今、ここでもう一度告白して! お願い、ロファ!」
言うだけ言うとキャロリアンは、じっとロファの告白を待っていた。
「いや、だからあれはリンネットの・・・」
「あ、そうね! 愛の言葉はタイミングを選ぶわね。ここにリンネットがいる事になんで気付かなかったのかしら私・・・」
無惨な一言である。
案の状、リンネットは精神崩壊を起こしていた。
そんな彼の様子に気付かずに、キャロリアンはリンネットの手を取ると、
「あのね、リンネット。私、今日この人に告白されて決めたわ! 私、ロファと結婚する!!」
とまぁ、とどめの一撃を喰らわした。
「そうですか。よかったですね・・・」
彼の目には生気は無い。
「ありがとうリンネット。そうだわ! お父様にも知らせに行かなくちゃ!! また後でね、ロファ!」
キャロリアンはロファにそう告げると、さっきまでの淑女然とした雰囲気をおもいっきり崩し、いつものように駆けていった。
彼女の姿が見えなくなるやいなや、ロファはリンネットの襟首を掴み、激しくゆすった。
「どうなってんだよ、これは~!!」
「そうですか。よかったですね・・・」
彼は既にYESマン人形。
「よくねぇんだよぉ~!」
ロファの、その魂の叫びはあてもなく響きわたった・・・。
結局、そのまま誤解は解けず、その日の夕食時にアルトマンの口から、正式に二人の結婚を認める声明と、結婚式を三日後に行う事が共に告げられた。
もう今更「ゴメン、あれウソなんだ」とは言えない所まで、事態は急展開してしまった。
そして、その日の晩・・・
「どうなってんだよリンネット!」
ロファは自室でリンネットに問い詰める。
「そっちこそ! ・・・でも、もういいです。お嬢様のあんな幸せそうな姿を、私は初めて見ましたから・・・」
少しうなだれると、リンネットは弱々しく笑う。
「お前さぁ・・・、それで本当に良いわけ?」
ロファは胡散臭そうにリンネットを見た。
「それは! ・・・良くないです。でも、何の手違いもなくいってたとしても、私はお嬢様をあんなにも幸せに出来たかどうか・・・」
「そんなもん、やってみなきゃわかんないだろう? それに、一体何年、おいらは彼女に会ってなかったと思うのさ。今の彼女は、ただ、初恋の夢の中に佇んでいるだけで、おいらなんてすぐにメッキが剥がれるよ!」
そこまでを、僅かに怒気を含んだ声で、ロファはリンネットに対して言い放ち、声のトーンを抑えつつ話続ける。
「キャルの事を本当に幸せに出来るのは、あの子を本当に愛している男だけだ!お前にはその資格がある。愛する人の幸せの為に、自分の幸せを犠牲に出来る奴がこの世に何人もいるかよ!!」
「もういいんです! 僕の事は放っておいて下さい!!」
バタぁン!! と音をたてて、リンネットは部屋を出ていった。
う~ん、と唸りつつ、ロファは頭をかいた。
「困った事になっちゃったなぁ・・・。どうしようリシュリタ?」
ロファは隣に置かれていたリシュリタに語りかける。
しかし、リシュリタにしては珍しく返事が無い。
「リシュリタ?」
その後、何度、ロファが話しかけてもリシュリタは、まるでただのシタールのように、黙して何も語らなかった・・・。
結局どうする事も出来ぬまま、リシュリタも相変わらず黙ったままに、ロファは結婚式を迎えたのであった・・・。
「・・・ロファ?」
いつまで待ってもおとずれない口づけに不安を抱き、キャロリアンは目を開く。 ロファは黙ってキャロリアンの目を見つめてから、
「ごめん、キャル。おいら、好きな人がいるから、これ以上は出来ない」
と言って、彼女の額にキスをした。
「・・・え!?」
キャロリアンは驚いて、たった今、ロファがキスした額に震える指で触れた。
ロファはそんなキャロリアンを苦しそうに一瞥してから、客席の方を振り向く。
「出て来いよぉ、リンネット! おいらの役目はここまでだ。・・・後はお前の出番だぜ!!」
ロファは、リンネットが最後列に座っているのを見つけて、呼びつけた。
「・・・どういう事?」
ロファに呼びつけられ、おずおずと二人の前にやって来たリンネットを横目に、キャロリアンはロファに尋ねる。
「本当はあの手紙・・・、あれはおいらがリンネットから、君に渡すように頼まれたものなんだ」
「リンネットが!?」
キャロリアンは、ロファとリンネットの二人を見やる。
『どうなっているんだ!?』
式場内はこの騒ぎに大いにざわめいた。
「皆さん、お静かに!!」
ロファの声が鋭く響き、ざわめきが静まり返る。
「今まで騙していて申し訳ありませんでした。しかし式はこのまま、新郎を代えて行います」
「ろ、ロファさん!」
リンネットはロファに向かって叫ぶ。
「無論、キャルの返事次第だけれど・・・。でもその前に、やる事があるだろうリンネット?」
ロファは静かにリンネットを見据える。
キャロリアンはというと、戸惑いながらも今はじっとリンネットを見ていた。
リンネットは俯いたまま、口を開かない。
ついに苛立ってロファが怒鳴る。
「いい加減に根性据えろリンネット!」
人々は、先程からずっと穏やかな雰囲気を保っていたロファが、突然、怒りだした事に非常に驚いた。
「好きなんだろ。キャルの事、好きなんだろう? だったらなんではっきりそう言わないんだよ!」
「ロファ・・・」
キャロリアンはこの時初めて、ロファの涙を見た。
「かっこつけて身を引いたってなぁ、惨めなだけなんだよ! お前にはチャンスがあるんだろう? 『好きだ!』って言える瞬間がここにあるんだろう? どうしても相手が好きならさぁ、プライドなんざ捨てちまえよ! 失ってから気付いたんじゃ遅いんだよぉ、『恋愛』って奴はさぁ!!」
「・・・・・!」
ロファの必死なその一言で、リンネットも覚悟を決めた!
身分違いの恋だった。
今まで告白できずにいたのは、フラれた後の自分が、ひどく惨めに思えて嫌だったからだ。
今までの僕は自分の体面ばかりを気にして、全てをロファにまかせて自分では泥にまみれようとはしなかった。けど・・・
「キャル!」 リンネットが真っ直ぐにキャロリアンを見た。
キャロリアンもまた、同じようにリンネットを見ていた。
ここでフラたら僕の失恋は世間に知れ渡るな。
でも、もうそんな事どうでもいい!
僕は・・・
「僕は・・・キャルが好きだ!! 誰にも君を渡したりはしない!」
リンネットは火のように激しく、ただそれだけを言い切った。
一瞬の後、辺りは静寂に包まれた。
キャロリアンは少しのあいだ目を閉じると、静かな声で告げた。
「私ね・・・結婚式で失恋したの。慰めてくれる、リンネット?」
リンネットは首を横に振ると、涙ぐんだキャロリアンを抱きしめる。
「慰めることは出来ない。けれど、君が泣いている間、僕はずっと側にいるよ。これから先、君が泣いている時にはいつだって、僕が側にいてあげるよキャル」
リンネットの不器用な優しさが、肌の温もりを通してキャロリアンに伝わっていく。
「・・・泣いている時だけ?」
キャロリアンは、リンネットの背中に腕を回しつつ呟いた。
「・・・君さえ良ければ、どんな時も・・・」
そう言ってリンネットは、キャロリアンを強く抱きしめた。
「ねぇ、神父さん?」
ロファが神父の腕を引っ張る。
「何かね?」
成り行きを、ただ黙って見ていた神父がロファの方を振り向く。
「今のってさ、『誓い』として認める事は出来ないかな? 神の名のもとにさぁ」
すると神父は
「正式なものではないからダメです」と、きっぱりと言った。
「何だよ、少しくらい良いじゃないかぁ!」
ロファは神父の腕を引っ張りつつ駄々をこねる。
「しかし・・・」
神父はロファに優しく微笑むとこう言った。
「『誓い』とは、あくまで気持ちの確認です。二人の気持ちさえ確かなら、あえて『誓い』などは必要ないと、私は思いますよ」
「そ、それはそうだけどさぁ・・・」
確かに神父の言う事はもっともで、ロファもその点は理解できるのだが・・・。
「しかし、神に仕える者としてではなく一個人としてならば、私は二人の『誓い』を認めましょう」
そんなロファの心の葛藤を見透かすように神父ははっきりと言った。
その一言で、ロファは神父に対する印象を変えた。
「・・・良いこと言うね。見直したよ!」
「それが神父というものですよ」
そう言って、神父は得意そうに笑った。
そして会場は、再び大きな祝福の声に包まれた・・・。
結局、ロファとキャロリアンの結婚については、新郎が誓いをたてていないと言う事にして、強引に無効になった。
そのかわり、リンネット・ウェルラージとキャロリアン・リムロードの結婚が正式に決定した。
本来ならロファとキャロリアンの為に用意された結婚披露宴も、そのままリンネットとキャロリアンの為に行われた。
目の前に広がる豪勢な料理の数々に、上機嫌でロファが舌鼓を打っていると、両手にシャンパングラスを持ったアルトマンがロファの所にやって来た。
ロファは慌てて手近なナプキンで口元を拭いて、アルトマンに頭を下げる。
「今回はどうもすみませんでしたアルトマンさん!」
「頭を上げなさいロファ。今は無礼講だよ」
頭を上げさせるとアルトマンは、優しくそう語りかけた。
そしてグラスを一つロファに手渡し、幸せそうな二人の方を振り向いた。
「気にしなくていいよロファ。結果的にあの子は、自分の『本当の幸せ』を見つけられたのだから。本当に、感謝しているよ」
少しだけ寂しそうに、アルトマンはロファに笑いかけた。
「そんな、おいらは何も・・・」
「しかし、だ。私はロファが実の息子になってくれると思ってとても喜んでいたのでな。だからその精神的慰謝料代わりに一つだけ、教えてはくれないか?」
意地悪くそう言うアルトマンの態度に、ロファは覚悟を決めた。
「何ですか?」
アルトマンは、力の入りすぎているロファの肩をポンと叩いてリラックスさせて言う。
「大した事ではないさ。ただね、君の好きになった女性は、一体どんな女性かと思ってね」
その気楽な口調を僅かに恨めしく思いつつもロファは言う。
「・・・一人は年上、もう一人は年下ですよ」
「二人もいるのか!?」
これにはさすがにアルトマンも驚いた。
「年上の女性は、いつでもおいらの側にいて、優しくおいらの事を包んでくれて、ついつい甘えてしまいたくなる程に素敵な人ですよ」
「年下の方は?」
するとこちらは急に歯切れが悪くなる。
「今はまだ問題外ですけどね。でも十年たったら口説かれてしまうかも知れない。・・・もっとも、十年たっても彼女がまだ、おいらの事を好きでいたならばの話ですが・・・」
「そんな女性なら、十年たったら君の方が口説くのではないかね、ロファ?」
その一言にロファは苦笑する。
「十年たったらおいらは三十六ですよアルトマンさん。いくらなんでも二十歳を少し過ぎたか否かの娘を相手に、恋愛なんて出来ませんよ」
「という事は、相手の女性は今、十かそこらか・・・」
ロファはしまった、と思ったがもはや遅い。
そんなロファの様子に、アルトマンは静かに微笑んで言った。
「年はこの際関係ないだろう? 神父様のおっしゃりようを借りれば、『誓い』に必要なのは『互いを思う気持ち』なのだから・・・」
「けれど・・・」
「それにロファも先程自分で言ったではないか。『どうしても好きならプライドを捨てろ。相手を失ってからでは遅いのだ!』と」
それを言われると、ロファは何も言えなくなる。
「大切なのは『好きだ!』と思う自分の気持ちだよロファ。たとえ好いた相手と年が離れていようとも、又は、人ならぬものが相手であったとしても、その気持ちだけはどうしようもないのだからね」
ロファはその時、アルトマンは全てを知っているのではないかと思った。
しかしそんな事があるはずもなく、自分の過敏すぎる反応に、内心で苦笑した。
「すいません、そろそろおいら、また旅に出ます」
「今すぐかね? もう夜も遅いし、明日にしたらどうかね?」
突然に告げられた一言にアルトマンは非常に驚き、かつ、言い過ぎただろうかと深く自問した。
そんなアルトマンの内心を見て取り、ロファは慌てて言う。
「いえ、今回は本当に急いでいたんです。でも色々あって遅くなったから、その分をなるべく埋め合わせたいんです」
「そうだったのか・・・。そうとは知らずにすまなかったなロファ」
ロファはかぶりを横に振った。
「気にしないで下さい。そのかわり、二人にはよろしくお伝え下さい」
遠くで幸せそうに佇む新婚夫婦を一瞥して、ロファは優しく微笑む。
「わかった。道中、気をつけてな・・・」
「アルトマンさんも、お体を大切に・・・」
ロファは懐からマジックカードを取り出すと、アルトマンの目の前でそれを広げる。
そして、カードが床に落ちたときには、既にそこにはロファの姿はなくなっていた・・・。
(・・・ロファ・・・)
小さく消え入りそうなその声を、しかしロファは聞き逃さなかった。
「やっと、君の声が聞こえたね」
ロファは腕に抱えたリシュリタに微笑む。
「良かったよ。もう、君に嫌われてしまったのかと思ったから・・・」
(そ、そんな事!)
ロファはリシュリタのその反応を嬉しく思っていた。
「アルトマンさんに言われたよ」
ロファは囁くような優しい声でリシュリタに語りかける。
「相手がなんであろうと、大切なのは『好きだ!』と思う自分の気持ちだってね。思わず反省してしまったよ」
街道には他に人はいない。月の光は明るく行き先を照らしていた。
(私も・・・反省しています)
リシュリタの、その遠慮がちなつぶやきを、ロファは不思議に思った。
「どうして?」
リシュリタは語る。
(私・・・嫉妬してたんです。私は、単なるシタールの『心』のくせにあなたを失うことが怖くて、あなたを他の女性にとられてしまうことが悔しくて・・・)
ロファは黙って聞いていた。
(そしたら急に苦しくなって、なんて自分は醜いのだろうって怖くなって、でも、あなたの事を考えずにはいられなくて・・・)
リシュリタの声は悲しみに満ちていた。
(私、もうロファとはいられない!)
「それは困る」
ロファはそれだけをはっきりと告げる。
(えっ!?)
リシュリタは思わず戸惑う。
「リシュリタが、おいらなんか大嫌いで、それでもう一緒にはいたくないと言うなら諦めるけど・・・」
(違うの! ・・・ただ、私はもう、昔のようにあなたの側にはいられないの。私はどんどん醜くなっていくし、そしたらロファ、私のことなんか嫌いになるわ。私はそれが耐えられない!!)
深い悲しみに沈むリシュリタの姿が、ロファにはとても寂しかった。
「・・・リシュリタがそう言うのならそれでもいいけど、それでもリシュリタは変わらずに美しいし、おいらはずっと、リシュリタが好きだよ」
ロファは力強く断言すると、ちいさく弦をつまはじく。
「それだけは譲れないな」
(ロファ・・・)
リシュリタの声は微かに震えていた。
「将来的に、君だけを好きでいる自信はちょっと無い。でも、君を嫌いになる事だけは永遠にあり得ないという点では、君に誓うことが出来るよ」
(・・・・・!)
リシュリタの心はかつてない程に激しく震えた。
「勝手な言い分で悪いけどね。もしこれも『愛』と呼んでいいならおいら、いや、俺は今夜ここで、リシュリタに永遠の愛を誓うよ」
(ロファ!!)
その瞬間、世界が弾けた!!
そして・・・
「お、お姉ちゃん? いや、リシュリタか!?」
薄く、ゆったりとした綾布で裸身を包み、抜けるように白い肌尾をした女性が、今、ロファの目の前に立っていた。
「ロファ、・・・踊ってくれますか?」
ロファは一瞬迷ったが、すぐにリシュリタの手を取った。
「美しき御婦人の為なら喜んで・・・」
そして二人は、波間にたゆたう小舟のように、ゆっくりとチークを踊る。
「これは月のいたずらかな?」
ロファはリシュリタの顔を見ながらつぶやく。
「私にもわかりません。でも、あなたに初めて出会えた時も、あなたは真っ直ぐに私を見つけてくれたわ」
リシュリタは歌うようにロファに囁く。
その一言でロファは、原因はともかく、きっかけが何であったのかを悟った。
(これは、あの時と同じだ・・・)
ロファの心は幼い日に立ち返る。
(シタールとしてではなく、一人の女性と思って出会ったあの時と・・・)
今のロファは、純粋に『リシュリタ』を思い、そして見つめていた。
(だから・・・)
「どうしたのロファ?」
リシュリタはロファが小さく笑った事に気付く。
「何でもないよ。それよりも・・・」
軽妙にステップを踏むリシュリタに、ロファは少し驚いていた。
「リシュリタが踊りまで上手だったとは知らなかったな・・・」
リシュリタの腰に回した腕に、少しだけ力を込めて、抱き寄せる。
リシュリタはクスッと笑うと、甘えるようにロファに尋ねる。
「でも、もう知っていますよね?」
互いの鼻が触れそうな位に間近で微笑むリシュリタに、優しくロファも微笑み返す。
「ああ、これからはずっとね・・・」
月に照らし出された二人の影は、今は一つに重なっていた。
今や、悠久に変わらぬ時の流れのみが、音もたてずに過ぎ去っていった・・・
続けてその2いきます




