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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
25/60

9.ロファ・サーフェの名にかけて.1

ご無沙汰しております。意外にも読みに来てくださる方々が少なからずいるようなのでとりあえず昔のデータを投稿用に編集してあげておきます。

9話目はこのシリーズで一番長い話となります

 ここはアエスタース神殿。

 教皇タクラム十七世を長として、多くの司祭や神官達が出仕している。

内庭に面した廊下を、オルニカはのんびりと歩いていた。

澄み切った青空を吹き抜ける風は、夏の名残を残しながらも少しだけ冷たくなってきていた。

それでも寒いと言う程ではなく、むしろ心地よく感じられた。

「どこかでお昼寝したくなりまちゅね・・・」

呑気にそんな事をオルニカが呟いた、その時・・・


「オルニカ様、大変でございます!」

一人の、まだ年若い神官が、血相を変えてオルニカの元に駆けて来る。

「どうしたんでちゅ? そんなに慌てて・・・」

何処でお昼寝しようか、などと考えていたオルニカは、突然の神官の呼び声にゆっくりと振り向く。

神官はオルニカの側まで来ると、呼吸を整え、悲報を告げる。

「ぱ、パウエル司祭が殺されました!!」

「なんでちゅって!?」 オルニカの顔に驚愕の表情が浮かぶ。

「それと、現場にこのようなものが・・・」

 神官は、持っていた一枚のカードをオルニカに手渡す。

オルニカは、普段の様子からは想像もつかないような緊張した面持ちでカードを見た。


『契約に基づき、パウエル・ラムスリットの命を頂く。無駄な追っ手は不要に願おう。・・・またのご利用を・・・』


「ふざけてまちゅね・・・」

その文面に込められた悪意に気付き、オルニカはカードを睨みつける。

怒りに震えるオルニカが、しかし急激に青ざめたのは、差出人の名前を見た時だった。

「ま、まさか・・・!?」

そこには


          『死の道化師 ロファ・サーフェ』


  と書いてあった・・・。


「ご苦労だったな」

男は隣に座り、声をかける。

「ああ」

声をかけられた方はしかし、なんでもないと言った感じで素っ気なく答える。

 ここはマシューハラ近くの小さな街であり、街で唯一の酒場には、二人以外誰もいなかった。

照明が申し訳程度に二人を照らす。

一人はごく普通の酒場の主人、もう一人は、旅暮らしが板に付いた妖精の芸人に見えた。

「あいつの居場所は?」

芸人風の男が静かに尋ねる。

年の頃なら三十くらいか、少し大きめの服に身を包んではいるがその動きから、しっかりとした体つきであろう事は想像できる。

「これに書いてある」

 酒場の主人が、懐から一枚の紙切れを出す。

酒場の主人も、年の頃は同じくらい。くたびれた服を着て、眠たげな目をしているが、その瞳には危険な光が見え隠れする。

「すまないな」

芸人はその紙を受け取ると、すぐに手元から消してしまった。

「本当に・・・やるのか?」

 酒場の主人を装うその男は小声で尋ねる。

「これも・・・運命だろ?」

「しかし相手は・・・」

芸人はその先の言葉に、自嘲的な笑みを浮かべる。

「だからさ」

芸人は寂しそうに呟いた。

「それに、もう時間もない。一目会いたいのさ、俺自身な・・・」

「・・・医者はなんと?」

主人は芸人の顔をじっと見据える。

その視線を受けて、芸人は淡々と答える。

「・・・もってあと半年だ。大した人生じゃなかったな」

芸人が、さもおかしそうに笑うのを見て、主人は呆れてため息をつく。

「こんな言い方も変だが・・・しっかりな」

「世話になったな、ジル」

芸人はスッと立ち上がると、主人に背を向けて酒場を出ていった・・・。


「・・・なんて皮肉な名前なんだ、『ロファ・サーフェ』って言うのは・・・」

酒場に一人残った主人風の男はただ、そう呟いていた。


 時は流れ、場所も移り・・・

「さぁ、トリエ。どれがハートのエースか当ててごらん?」

年の頃なら五十くらいの、初老とも言えるその妖精の男は、妻に向かってそう言った。

「ハートのエースは無いわねグラハム。だって左から、クラブの13、ダイヤの12、スペードの11、ハートの2、そして最後はスペードの3だもの!」

 妻・トリエは自信たっぷりにそう言いきる。

トリエは、夫よりは僅かに若く、更に見た目はそれ以上に若い、鳶色の髪を 後ろでまとめた美人であった。

「・・・どうしてわかったんだろう?」

そう言って夫・グラハムは、持っていた五枚のカードを表にする。

 すると、確かにその通りであった。

「だって、ハートのエースは私が持ってるもの!!」

突如、トリエの右手にハートのエースが現れる。

その突然のカードの出現に、観客の中から歓声が上がる。

さっきまでは確かに、グラハムの持っていた五枚の中に入っていたのに・・・。

ハートのエースには、お客の一人が書いたサインもちゃんと入っている。

「ああ! いつでも君はそうやって、僕のハートを奪ってしまう! これでは僕は、浮気の一つもできないよ」

するとトリエはクスッと笑い、

「これが私の夫の操縦法ですわ、奥様方!!」と言って胸を張った。

トリエのその一言で、会場は一気に笑いに包まれた。


「素晴らしい舞台でしたね」

二人が観客の最後の一人と握手を済ませたのを見計らい、その男は二人の側にやって来た。

「ありがとうございます」

グラハムは妻と共に丁寧に礼を言う。

「つかぬ事をお聞きしますが、お二人はグラハム、それにトリエ・サーフェ夫妻ですよね?」

「私達をご存じですの?」

トリエは嬉しそうに笑った。

このとき二人は、何故か、初めて会うはずのこの男に、言いしれぬ懐かしさを感じていた。

「ええ、もちろん・・・。」

男の方も、軽く頷いて優しく微笑む。

「ところで、『ロファ・サーフェ』という名に覚えはありますか?」

すると二人は、に真剣な表情になって答える。

「もちろんです!! ロファは私達の大事な息子ですから。・・・もしかして、息子のロファに何か?」

男はその答えに対して一人、苦笑する。

 グラハムはいよいよもって、相手の男を怪しいと思い始めていた。

だがその一方で、身を切られるような切なさに襲われてもいた。

「いいえ、今はまだ、大丈夫ですよ」

「今は?」

 トリエの疑問を無視して男は、少し大きめの服の中から、鎖のついた手のひら大の、白い女神像を出す。

 男は、まるで壊れ物を扱うかのようにその女神像をそっと手のひらに載せて、二人に見せる。

「これに見覚えは?」

二人は信じられないものを見た、という顔で凍りつく。

「そ、それは!!」

 トリエの頭の中に、決して忘れられない記憶が甦る。

濁流に呑まれ、流されていく幼い我が子。誰もが口を揃えて言った。


        『あの子はもう、助からないだろう・・・』


二十八年前に起きた惨劇・・・。

しかし目の前にあるのは、確かに幼い我が子にお守りとして渡した代物。

それを持っているという事は・・・

「あなたは・・・まさか!?」

男は今までになく優しい表情で微笑む。

「会いたかったよ、母さん」

トリエは目に涙をため、驚きのあまりに両手で口元を覆う。

「本当に、本当にあのロファなの!?」

 トリエは右手で相手の頬を撫でる。

「この女神像は・・・母さんがくれたんじゃないか。『お守りだよ』って」

「ああ・・・!!」

トリエは涙を流しつつ、男を強く抱きしめた。

「ああ、ロファ! 本当にあなたなのね!!」

「母さん・・・」

 ロファは照れくさそうにしながらも、決してその手を離そうとはしなかった。

「ロファなのか!? 本当にあのロファなのか? ああ、よくぞ生きて・・・」

「父さん・・・」

 グラハムは、顔を涙でぐしょぐしょにして、ロファとトリエを強く抱きしめた。


 少しの間そうして抱き合った後、三人の顔には喜びの表情が浮かんでいた。

 しかし、その男・ロファは、急に顔を引き締めると両親に問いかけた。

「そう言えば・・・もう一人いるらしいね、『ロファ・サーフェ』って・・・」

 その一言に、いやその一言に込められた冷たい殺気に、両親はビクッと震えた。

「おかしいよね。俺はここにいるのにさ・・・。この世に『ロファ・サーフェ』は二人もいらない。そう思わない、父さん、母さん?」

 そう言って、ロファはうっすらと冷たい笑みを浮かべた。

「ろ、ロファ、それは・・・」

明らかに声が震えている母親に、うって変わって優しく声をかける。

「心配しないで、母さん。俺、こう見えても強いんだぜ! ・・・偽物はすぐに消すからさ・・・」

「・・・ロファ! お前、一体何をしようというんだ?」

グラハムはそう言って、ロファの右手を掴んだが、一振りで軽くあしらわれてしまった。

「あいつは今、アルムトゥバルの孤児院で、『灯の家』と言う所にいるらしい・・・。今から会うのが楽しみだよ」

「ロファ、お願いよ! あの子に危害を加えないで!!」

トリエは半狂乱になって叫んだ。

そんな母親の姿を、ロファは苦々しく見ていた。

「・・・もう、俺は二人の子供じゃないんだね。だからあいつに・・・、弟のあいつに俺と同じ名前を付けたんだ!!」

ロファは激しい怒りと共に叫んだ!

「ち、違うぞ、そんな事はない!!」

 グラハムはそう反論する。

「なら俺の好きにさせてもらう! あいつに『ロファ・サーフェ』を名乗らせはしない。これは・・・『俺の名』だ!!」

ロファは両親に向かってそう叫ぶと、一瞬にして姿を消した。

「待って、ロファ!!」

母・トリエの声は、虚しく辺りの空気を震わせるだけだった。

そこに一枚のカードが・・・

『俺に残ったものはこのお守りと、その裏に彫られた俺の名前。そして残り僅かな時間だけ・・・。

 あいつがもしも『改名』を拒んだならその時は・・・、あいつを殺して『俺の名』を取り戻す!!

 本当は・・・会わないつもりだったけど・・・最後に会えて、嬉しかった。

 もしもあいつが・・・いや、よそう。

 悲劇をかたどるこの三文芝居は、もう既に第一幕を終えようとしている。

 次に幕が下りるのは、俺かあいつが『二つの死』の内、どちらか一つを迎えた時だ。

 その時まで、俺達は演じ続けなければならない!!

 さようなら父さん、母さん。二人の子供に生まれて・・・本当に嬉しかった』


差出人はやはり、『死の道化師 ロファ・サーフェ』だった・・・。


「ああ、私達はなんて事を・・・」

トリエはそのカードに秘められた『息子』の過去と未来、そして悲しい『思い』に、ただ、涙を流す事しかできなかった・・・。


「ここだな・・・」

白いローブを法衣のように纏い、腰紐に幾つかの小袋を結びつけた、少女の様なその女性が、『灯の家』の前に立っていた。

「なるほど・・・。話には聞いていたが、随分と子供がいるものだな」

栗色の髪を後ろで束ね、銀の瞳を宿した彼女の前に、肩まで伸びた黒髪も美しい、一人の少女がやって来る。

「こんにちは! 『灯の家』にようこそ!!」

 少女は張り切って、元気よく挨拶をする。

彼女は少女を一目見やると、不意に尋ねる。

少女は、相手の不躾な態度に怒りもせず、むしろ親しげに答えた。

「うん。ロファは今、街にお買い物に行ってるけど・・・」

「そうか。邪魔したなユニス」

その女性は、ユニスの言葉を最後まで聞かずに立ち去ろうとした。

「あ!! あの、お姉さん?」

 ユニスはそこで、慌てて相手を呼び止める。

「なんだ?」

彼女は振り向くと、淡々と尋ねる。

「え、えっとぉ、あなたは一体どちら様ですか? それになぜ私の名前を・・・?」

ユニスは何となく気押されながらも、そう尋ねる。

「ああ」

 彼女はそこで、自分が名前を告げていなかった事に気付き、優しい声でユニスに答える。

「一応、もしロファが帰って来たら、『ゼルダが来た』と伝えて欲しい。それでロファにはわかるから・・・」

そう言い残すと、その女性・ゼルダは再び立ち去ろうとした。

「あ・・・」

ユニスはどういう事か知りたかったが、ゼルダは既に歩いて行ってしまった。

ユニスはゼルダの後ろ姿に、何かしらの決意を感じ取ると、急に不安で一杯になった。

その不安とはロファがもう、この家に、そして自分の元に返って来ないような、そんな不安だった・・・。


「えーと、これで買い物は終わり、っと」

買い物袋を片手に持ち、ロファはリストを確認する。

(今度こそ・・・、確かに全部買いましたね!)

ロファに背負われた形で、リシュリタはクスクスと笑う。

「・・・そんなにいじめなくたって・・・。いいんだ、どうせおいらなんかさぁ!」

 リシュリタにからかわれ、ロファが少しいじける。

(ご、ごめんなさいロファ)

 リシュリタはすぐにロファに謝った。

「まぁ、いいや!!」

ロファがすぐにすぐに立ち直り、いつもの笑顔になった所で彼女は突然、二人の前に現れた。

「久しぶりだなロファ、それにリシュリタ」

「ゼルダ!!」

ロファは、自分達の前に立つ女性・ゼルダを見て思わず叫ぶ。

 何故ここに?とはロファは聞かない。彼女が山を下りるとしたら、それはただ一つの理由・・・。

「星が・・・動いたんだね?」 ロファの静かな一言に、ゼルダは黙って頷いた。

(ロファ・・・)

理由を知るもう一人の女性・リシュリタは、不安のあまり消え入りそうな声でロファの名を呼んだ。

「ついでに言えばロファ。お前はアエスタース神殿にも追われているぞ。『司祭殺し』の主犯としてな・・・」

ゼルダは予想外の出来事についても、補足として伝えた。

「神殿にぃ!?」

(そんな・・・!!)

さすがにこれにはロファも驚いた。

(何故おいらが・・・。しかもアエスタース神殿に?)

戸惑いながらも自分を落ち着かせる為に口を開く。

「捕まったら・・・どうなるかな?」

「事がどうもあやふやな様だからな・・・。決着が欲しい神殿としては、適当に自白させたら、『死刑』、だろうな」

「もしそうなったらなんて言えばいいと思う?」

 ゼルダは、少し考えてから口を開く。

「・・・こっちは初めてだからな。痛くないようにしてもらうといい。向こうは経験者だ」

「ものすご~く、語弊のある言い方なんだけど、ゼルダ・・・」

 ロファはあからさまに嫌そうな顔をする。

「イヤならそんな事を聞くな!」

 ゼルダはそう言って突き放す。

(あ・・・)

その時ロファは、ゼルダの『悪いクセ』の事を思い出していた。

普段から、事実を冷静に判断し、物事を率直に言うゼルダであったが、怒ったり、不機嫌になるほど、彼女の言い方は危険極まりないものになるのだった。

その事を思い出し、ゼルダが怒っている事とその理由にも、ロファは気付く。

「ごめんよゼルダ。死刑になんかされてたまるものか、ってね」

ロファがそう言って笑うと、ゼルダは機嫌をなおし、元の話し方に戻る。

「とにかく、そういう事だから詳しく話してるヒマはない。荷物は私が預かろう。だから今は身を隠せロファ!」

「わかった。頼むよ」

ロファは、持っていた買い物袋をゼルダに手渡す。

ゼルダは、少女とも見紛うその体で、器用に荷物を持ち直す。

「今回の事件だが、間違いなくお前の『運命』に関わっている事だけは確かだ。気をつけろ・・・」

ゼルダのその忠告を、ロファは笑顔で受ける。

「色々とありがとう、ゼルダ。・・・・・さよなら!」

かくしてロファは、ゼルダに背を向け走って行った・・・。


「・・・『さよなら』など言うな、バカ! 私はお前の死など認めんぞ!」

ゼルダは、今は走り去り消えてしまったロファの姿に、そう呟いた。


「みんな、いるでちゅかぁ?」

『サブアラウン』の扉を激しい勢いで押し開けたのは、呼吸も荒いオルニカだった。

「どうしたのオルニカ?」

「そんなに慌てて・・・」

「まぁた逃げてきたのか、神殿から?」

「冗談を言ってる場合じゃないんでちゅ!!」

挨拶代わりの冗談も、今のオルニカには聞いている余裕が無かった。

「本当にどうしたんですか?」

いつもと様子が違うオルニカに、さすがに全員、真剣になる。

「ロファが・・・」

「ロファがどうしたんです?」

 よく知る仲間の名前を聞き、緊張が走る。

「ロファが・・・大変なことに! このままだとロファは、『司祭殺し』の罪で死罪にされてしまいまちゅ!!」

 その一言に、全員騒然とする。

「おい、そりゃ一体どういう事だよ!」

そう言ってオルニカに詰め寄る。

「ロファがいるんでちゅ!」

「はぁ?」

意味がわからない。

首を傾げていると、オルニカが詳しく話し始める。

「有名な殺し屋達の中にも、『ロファ・サーフェ』と言うのがいるんでちゅ!」

「なんだってぇ!?」

その不思議な名前の一致に、思わず驚きの声があがる。

「あたしも力は尽くしたんでちゅけど、正体不明の上に『死の道化師』と名乗っていて、おまけに手品を得意としてるらしいんでちゅ」

「そ、それじゃあまるで、ロファじゃないかよ!!」

「それで結局、神殿はどう決定したんだ?」

あまりに淡々としたその口調に怒りが感じられる。

「どちらにしてもとりあえずは捕まえて、その上で一旦取り調べるそうでちゅ」

「捕まえるって言ってもわからないんだろう?」

悪い予感が胸をよぎる。

「・・・だからまずは、はっきりとわかっている方を・・・」

「そ、そんな酷い!」

オルニカはそれだけを口にすると泣き出してしまった。

「だからみんなにも協力して欲しいんでちゅ! あたしはロファを、殺したくないんでちゅ!!」

神殿の決定でもし『死罪』と決まれば、オルニカの気持ちは、一体いかほどのものであろうか・・・

「当たり前だ! そんな事させるものか!!」

 仲間達の心の中に様々な想いが浮かんで消える。

「そうだ、『灯の家』の方は・・・!!」


 遠くから砂煙を上げつつ、一頭の馬が駆けて来る。

乗っているのは二十代後半くらいの、じっとしていれば貴婦人として通る程の美女であった。

その美女は『灯の家』まで来ると馬を下りて、門の内側に入っていった。

「どなたかに御用ですか?」

久しぶりに子供達の相手をしていた司祭、ルヴィナが、その美女に気付いて声をかける。

すると彼女は、相手が誰であるかを認めて、挨拶をする。

「初めまして。私はレムニア領主フィオネルの妻でイリス。ロファはいるかしら?」

「まぁ、あなたがイリス様?」

イリスの挨拶を受けて、ルヴィナは慌てて頭を下げる。

「日頃の御援助ありがとうございます。私はルヴィナと申します」

「ごめんなさいルヴィナ。今はのんびり出来ないの。ロファはいる、いない?」

するとユニスが側に寄って来て答える。

「ロファなら・・・」

「ロファはもう、ここには戻れないかも知れない・・・」

突然、告げられたその一言に、三人はその声の主を見る。

「あなたは・・・?」

「あ、さっきのお姉さん!」

「今のはどういう事? もう神殿に捕まってしまったという意味?」

ゼルダとイリスの一言に、ルヴィナは思わず目を回す。

「捕まった? ロファが、神殿に!? 一体どういう事なんですか?」

「しっかりして、ルヴィナ」

ユニスは、自身も顔面蒼白になりながらも、気丈にルヴィナを支えていた。

「まだ捕まってはいない・・・」

 安心させるように優しい声でそう言うと、ゼルダは静かに説明を始める。

「私の名前はゼルダ・サーフェ。ロファの叔母に当たるものだ」

「ゼルダ・・・サーフェ?」

 ルヴィナが呟く。

「ロファの・・・叔母さん?」

 ユニスも不思議そうにゼルダを見る。

「ロファより年下に見えるけれど・・・?」

イリスの疑問についてはルヴィナとユニスも気付いていた。

「嬉しい事を言ってくれるが、私とロファは同い年だ」

珍しくゼルダが微笑んで見せたが、初めて出会った三人には特に思うところはなかった。

「私達の事は後で話すとして・・・」

そう前置きをしてから、ゼルダは本題に入る。

「私は少しだが星を観る。それでわかったのだが、実は今、ロファに『死の未来』が迫っている」

「神殿のこと?」

イリスが尋ねる。

「それは予想外の出来事だったが、関係はしているようだ」

ゼルダの答えは余計に不安をかき立てるだけであった。

「もう、あまり時間も無い・・・。どうか協力して欲しい。ロファの『運命』を変える為に・・・」

ゼルダはゆっくりと頭を下げる。

平和で穏やかな日常は、急激に一変した・・・。


(ロファ!!)

アレク・サーフェもやはり、馬で街道を駆けていた。

目指す先は『アルムトゥバル』。

(何故だ!? 何故ロファが神殿に?)

アレクも、事件については知っている。

 しかしアレクは、事件の概要よりも自分のカンを信じていた。

(一体、ロファに何が・・・?)

今はただ、一刻も早くアルムトゥバルに着かねばならなかった。

ロファを、()のが剣で守るために・・・。

(間に合ってくれ!!)

アレクはただひたすらに、街道に馬を走らせていた・・・。


「随分と騒がしい街だな、ここは・・・」

そして今、『死神』はアルムトゥバルに降り立った。

「さぁ、第二幕を始めよう! 舞台に上がれ、ロファ・サーフェ! 俺とお前、光と影が織りなす一大『悲劇』の始まりだ!!」


 そして再び幕は上がる・・・。


続きのデータはありますが投稿は未定です。気長にお待ちください

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