8.灯の家・宴会物語(二日目)・5
全7話構成の最終話です。
ロファが再び目を開いたのは二日後のことだった。
「気がついた?」
ロファの目に最初に飛び込んできたのは、ユニスの不安げな表情だった。
「ユニス? ・・・みんなは・・・?」
「ユウとギルとエリザは街にお買い物で、セレナとセレトは別の用事で出かけてるし、いま家にいるのはルヴィナとベネティア、それにサラだけだよ」
そう言うとユニスは、ベッド脇の台に置かれた果物のかごからリンゴを取り出すと上手に皮を剥いていく。
「・・・カイ達は?」
ユニスの手つきに時の流れを感じながら、ロファはおずおずと尋ねる。
「みんなは・・・帰っちゃった! また遊びに来るって」
ロファの寂しげな様子に、ユニスは努めて明るい調子で答えた。
「そうかぁ・・・」 ユニスの気遣いに感謝するようにロファは微笑む。
「みんなもすっごく心配してたけど、あまり長居もできないからって・・・」
「それはそうだね。特に、シンディが『サブアラウン』をいつまでも離れてるわけにも行かないからねぇ・・・」
そう言ってロファは明るく笑うが、やはりどこか寂しそうである。
「そんな顔したって仕方ないでしょ? だからほら、美味しいリンゴでも食べて、元気出さなきゃ!」
まるで子供を励ますように言って、ユニスは明るい笑顔を見せる。
「そうだね。ユニス、・・・君が側にいてくれて良かった」
ユニスはその一言に、思わず顔を赤らめる。
「で、でしょう? だからぁ、はい、アーンして・・・」
ユニスは切ったリンゴをフォークで一つ刺すと、ロファの口元に運ぶ。
「一人で食べられるよユニス」
ロファが照れくさそうに断る。
しかし、ユニスは有無を言わさなかった。
「ダぁメ!いい子にしなさいロファ!!」
「わかったよ。・・・アーン」
観念してロファが口を開ける。そこへ・・・
「ユニス、ロファの様子はどうですか?」
部屋に入ってきたルヴィナ、ベネティア、サラが見たもの。
それはまるでアツアツの恋人達の様に微笑ましい光景だった。
「ム、ムグ! ムシャムシャ、ゴックン!! い、いやぁルヴィナ、ベネティア、サラ。元気そうだね」
三人は必死で笑いをこらえて、深呼吸をして平静を保った。
「良かった。目を覚ましたんですねロファ」
「でも、お邪魔だったみたいですぅ!」
「その様ですね。いや失礼。また後で来ますよ、ロファ」
そう言って三人は部屋を出ようとする。
それを見て、ロファが慌てて三人を呼び止める。
「ま、待てぇ! 特にベネティア!! なんかお前さんだけは不安だから・・・」
「心外ですね。わたくしの、この澄んだ瞳を見て下さいロファ!」
そう言って、顔の真ん中を占める大きな瞳が、まっすぐにロファの顔を見る。
「ポーカーフェイス相手じゃ信じられないって!」
とにもかくにも、四人はそんなやり取りをしている間に、状況は落ち着いた。
「心配しましたよロファ。突然倒れるんですから・・・」
ルヴィナは安心したせいか、ルヴィナは鋭く言い募る。
「ごめん、ルヴィナ。ちょっと疲れがたまってただけだから。もう大丈夫!」
ロファはベッドの上でガッツポーズを取る。
「本当に大丈夫ですかぁ? 無理してないですかぁ?」
しかしサラはまだ心配そうだ。
「平気だってサラ。・・・ただ、やっぱりまだ少し眠いからさ。もう少し寝る事にするよ」
「そうですか。それじゃあ私達は外に出ましょうか・・・。ユニスも今夜の夕食の下準備を手伝ってくれませんか? 久しぶりのロファの為に、体に優しく美味しいスープを作りたいんです」
「わかったわ! それじゃロファ、夕食になったら起こして上げるからね!!」
ユニスは張り切ってそう告げる。
「ありがとう、ユニス」
張り切るユニスの頭を撫でると、ロファは静かに目を閉じた。
ルヴィナ達は、なるべく音を立てないように部屋を出ていった。
そして足音が遠くに消えると、ロファは目を開き、ぽつりと呟いた。
「・・・何とか『我が家』にたどり着いたよゼルダ」
ロファは顔だけを窓の外に向けた。
「あと半年も時間は無いけれど、きっと俺の『運命』を変えてみせるさ・・・」
久々に極度の緊張による寝不足から解放され、ロファは深い眠りの床についた。
「・・・どうやら無事に着いたようだな」
一人、アトーレ山中で星を眺めながら、ゼルダはそう口にした。
「さてと・・・。ロファよ、お前の持つその強さ。しっかりと見せてもらうぞ。見事変えて見せろ!お前自身の『死の運命』を、お前のその『心』で・・・」
そうしてゼルダは、彼女の家でもある小さな山小屋の中に入っていった。
満天の星空は天高く、その下で暮らす人々の姿を見守っていた。
天の星達は知っているのだろうか?
半年後に生きているのは、果たしてどちらのロファ(・・・・・・・)なのかを・・・。




