表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
23/60

8.灯の家・宴会物語(二日目)・4

全7話構成の6話目になります。

「・・・・・・」

 少年の声には適度の張りがあり、とても良く通る声をしていた。

その歌声に耳を傾けていた仲間達は、しかし段々、少年が歌っているその歌詞が気になり始めていた。


「・・・星の舞踏会・・・」


「なんだって!?」 ギルティスが驚きの声を上げる。

「これって偶然? それともまさか・・・」 シンディが少年の方を見る。

「もしかして・・・」 ルヴィナはただじっと、歌の終わりを待っていた。


そして歌が終わり、客の反応を確かめるように見渡してから、少年は一礼する。

「十番、『歌姫』リシュリタ、及びロファ・サーフェのデュエットでお送りしました!!」

「ロファ!?」

ユニスはその一言に敏感に反応した。

「宴会やるのにおいらがいないなんて、メインのないディナーと同じだろう?」

少年は右手でマントをつかむと、それを一気にはぎ取った。

するとそこには既に少年の姿は無く、その代わりに『歌姫』リシュリタを抱えるロファの姿があった。

「『真打ち、最後に登場!!』ってね」

「ロファぁぁぁ!!」

ユニスが辛抱溜まらずステージに向かって駆け出すと、仲間達もそれに続いた。

「ロ、ロファ!?」 突然のロファの登場に、サラは呆然としていた。

「お久しぶりサラ。元気だったかい?」

ロファは気にせず、いつもの笑顔をサラに見せる。そこへ・・・

「ロファ!!」

 ユニスが勢い良くロファの首筋に飛びついた。

 リシュリタについては、咄嗟にサラに渡したので無事である。

「会いたかったよぉロファぁ!!」 ユニスは泣きながらしがみついていた。

「いい子にしてたかい、ユニス?」

少しだけ前にかがんで両足をしっかり地面につけてから、しっかりとユニスの小さな体を抱きしめる。

『ロファ~!!』

 仲間達もステージに上がると、ロファとユニスを囲む形で集まる。

「いつ帰って来たんだよ」

「宴会半ば位かな。驚かそうと思って黙ってたんだよギル」

「お帰りなさい、ロファ。やっと帰って来たわね!」

「迷惑をかけたねユウ。でも面倒は増えるよ、きっと」

「良く無事に帰って来たわね」

「日頃の行いが良いからねエリザ」

「待ってましたよロファ。あなたがいるといないとでは、宴会の盛り上がり様が違いますからね」

「その時はベネティアが一つ、ロケットパンチでも披露すればいいのさ」

「よぉ、久しぶりだなロファ」

「来てくれて嬉しいよディクスレイ」

「今頃来ても料理はないぜロファ。どうせ来るならもっと早くに来いよ!」

「大丈夫さ。さっきから少しずつ頂いていたよリュウ」

「相変わらず、人を驚かせてばかりね」

「君はより可愛くなったねシンディ。好きな人でもできたのかい?」

「本当に、全く変わらないのねキミは」

「変わったさ。少しだけ大人になったんだよレイナ」

「一体どの辺がだよロファ?」

「年下の友人の皮肉も許せる寛容さの辺りかな、カイ」

「道中お元気でしたかロファ?」

「ユエリーに心配してもらえるんだったら、風邪の一つもひくべきだったかな!」

「そんな事を言ってると、カイに睨まれまちゅよロファ」

「ならオルニカにだけ言うことにするよ・・・て、イテテ!!」

 ユニスは黙って、ロファを強くつねる。

「ご、ごめんなさい。わかりました、もう言わないから許してユニス!!」

「・・・ロファのバカ」

ユニスがつねるのを止めると、セレトとセレナ、その真ん中にルヴィナの三人がロファの前に立っていた。

「お帰りなさいロファ」

「ここの生活には慣れたかいセレナ?」

「・・・お帰り、ロファ」

「お、少し背が伸びたなセレト。さすがに育ち盛りだな」

そしてロファは、ユニスを離すと立ち上がり、深々と頭を下げる。

「・・・御面倒、おかけしました」

ルヴィナは僅かに微笑むと体をかがめ、ロファの両肩に手を置いて体を起こさせる。

「・・・お帰りなさい」

顔を上げたロファが見たもの。それはまさしく慈愛に満ちた母の顔であった。


「さぁさぁ、お次に参ります芸は・・・」

ステージ上では今、ロファが数々の手品を披露していた。

どの芸にも一段と磨きが掛かっていて、人々は皆、大いに盛り上がっていた。

「さぁて、それではお立ち会い」 ロファが柏手を一つ叩く。

「本日は、はるばるおいらに会う為だけに、はるか遠く各地からおいで頂き誠にありがとうございます」

そのとぼけた言い種に、会場は笑いに包まれる。

「ここにいるのはそんな熱烈なおいらのファンの方々ばかりですから、おいらとしても是非、お土産の一つも差し上げられればと思うのですけど・・・」

いかにも心苦しそうにして、ロファは頭を抱える。

「生憎、おいらが皆様に差し上げられるお土産と言えば、『おいらと過ごした夢のような時間』という、まさしくそんな『土産話』ぐらいしかございません」

会場では思わず呆れて、苦笑が絶えない。

「・・・ああいう事を平気でスラスラ言える所がロファらしいわね」

レイナは改めて、ロファの性格を確認した気がした。

「なればこそ、その土産話をより味わい深く、色鮮やかにする為にも、これからおいら、ロファ・サーフェが皆様に、『虹の麓』をご覧に入れましょう!!」

『虹の麓!?』

 その思いがけない一言で会場は一気にざわめいた。

「正確には、虹の麓にのみ棲むという伝説の『極楽蝶』をご覧に入れます」

 するとユニスが

「なぁにその『極楽蝶』って?」と質問する。

ロファはユニスの素朴な疑問に易しく答える。

「虹色に輝く羽を持ち、捕まえようとすると虹の滴となって消えてしまう幻の蝶のことだよ」

「本当にそんなのがいるのか? おいら聞いたこと無いぜぇ?」

リュウはいぶかしげに尋ねる。

しかしロファはそんな事は気にせず、却って自信ありげに笑った。

「いるかいないかはこれを見てから自分で判断しておくれ」

そう言ってロファはステージを降りると両手を広げ、そしてその両手から勢いよく水を噴きだたせながら踊り出す。

「これってただの『虹の舞』じゃあ・・・」

と、ユウががっかりしたその時、

「え!?」

虹色に輝く何かが、優雅な軌跡を示しながらユウの目の前を通っていった。

ロファはそのまま踊りながらテーブルとテーブルの間を通っていく。

すると、テーブルの側を通る度に、人々から歓声が上がる。

「うわっ!?」「なんだ!?」「今のは蝶か!?」

 気がつくと、ロファの周りにはいくつもの、虹色に輝く蝶の姿があった。

「水芸秘奥技『極楽蝶乱舞』!!」

 ロファはどこか楽しげに、そして誇らしげにそう叫んだ。


「綺麗・・・」 誰とも無くそうつぶやいていた。

それはとても魅惑的な幻想であった。

虹色に輝く蝶達は、ロファの周りを実に優雅に、かつ華麗に舞っていた。

その美しさには誰もがため息をつくしかなかった・・・。

「綺麗ですね・・・」 ユエリーもすっかり見入っていた。

「大した奴だよ、ロファは・・・」

カイはこの、偉大とも言える道化師に対して、素直に尊敬の念を抱いた。


「これがロファの、芸人としての実力・・・」

セレトは以前に『ライムライト』の芸を見た事はあったが、あの時のは芸とは呼べなかった。

だから今、セレトは初めてロファの芸を見たのである。

「セレナ?」

セレトは姉に声をかけるが、セレナはじっとロファの芸に見とれていた。


「やっぱり芸をしている時のロファが、一番生き生きとしているわね」

 レイナはディクスレイにそう話しかける。

「アイツはいつも、こんな生き方もあるんだと、俺達に示してくれる・・・」

 ディクスレイはそう言うと、静かに微笑んだ・・・。


「どうしましたオルニカ?」

ルヴィナは、オルニカが泣いている事に気付いて声をかける。

「な、なんでもないでちゅ! ただ・・・」 オルニカがすぐに涙を拭う。

「ただ?」 ルヴィナが優しく先を促す。

「ただ、勝手に・・・涙が出てきたんでちゅ・・・」

 そんなオルニカの気持ちは、何となくルヴィナにもわかった。

人は、美しいものを見ると時として、傷ついたように心が苦しくなる事があるという。

 今、目の前にある光景ほど、美しいがはかないものもそうはないだろう。

 ルヴィナはそう思いつつ、虹色の蝶の行方を目で追った・・・。


 しばらくすると、蝶は一匹一匹消えていき、ついには最後の一匹も消えていった・・・。

踊りを終えて、呼吸を整えると軽く一礼し、そして・・・

「ロファ!!」 ユニスの悲鳴が響きわたる。

 突然、ロファはその場に倒れ伏したのだった・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ