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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
22/60

8.灯の家・宴会物語(二日目)・3

全7話構成の5話目になります。

 そして夕方・・・

『灯の家』の庭とも言える元・校庭は、今ではすっかり野外ステージに変わっていた。

 ルヴィナたっての希望により司会はサラが務め、街の人達にも、これを機会に交流の場として解放することにした。

 今、人々はそれぞれに酒を味わい、料理を楽しみ、会話に花を咲かせていた。

するとステージ壇上に、くるくると回りながらサラが登場する。

そして中央まで来て止まると、始まりの挨拶を告げる。

「は~い皆さん、準備はいいですかぁ?」

サラの一言に、会場が一気に盛り上がる。

「それでは皆さん、景気良く参りましょう!!」

サラはグラスを取って高くかかげる。

「かんぱぁい!」『かんぱぁい!!』

 『灯の家』初の『宴会』は、こうして幕を開けた。


「盛り上がってるわねぇ」 レイナは軽く一口、ワインを飲んで言う。

「たまにはこういうのも良いな」

ディクスレイもテーブルの料理を美味しそうに食べていた。

「おいら、毎日こうだったら、ここに通い詰めるのにな」

リュウは先程から、ものすごい勢いで料理を消化していた。


「セレナ、これ美味しいよ」

「・・・あ、ほんとう。おいし~い!」

いつの間にか仲良くなっていたシンディとセレナは、テーブル上のデザートに歓喜の声をあげていた。


「・・・これ、うまいぜ」

「あ、ありがとう、カイ」

顔を赤くし目線を逸らしつつも、ユエリーの好みにあった料理をわざわざ小皿に取り分けて差し出すカイ。

 ユエリーの顔も赤かったが、それは酒のせいだけではないだろう。


「あ、ギル。私にもそれ取って」

ユウが小皿に料理を取っていたギルに声をかける。

「お前なぁ・・・。あんまり食うと太るぜ」

そう言いつつもしっかり小皿に取ってやるギルティス。

「大丈夫よ。ちゃーんとこの後、運動するもの」

「それってお前、もしかして・・・」

その時、ステージ上に再びサラが現れると彼女は

「かぁくしげ~たいか~い!」と叫んだ。


「一番、ユニス・アストーリア。手品をしまぁ~す!」

会場は可愛らしい手品師の登場に沸き立ったが、『家族』達は今、重大なことに気付いていた。

「ユニスって、アストーリアという名字でしたのね・・・」

ルヴィナは感慨深げにそう呟いた。

 彼らは誰も、ユニスの下の名前を知らなかったのである。


「二番、リュウ・ディルト。軽業やります!」

リュウの軽業は、決して人を楽しませる形のものではなかったが、その動きは力強く、躍動感に溢れていて、その余りの見事さに会場はまさに、拍手の嵐。


「三番、エリザ・アマラス。剣舞いきます!」

エリザは腰の剣を抜くと、ゆっくりと舞い始める。

エリザは暇な時にはよく、ソードダンサーたるユウから直に手ほどきを受けていた。

エリザのそのあでやかな美しさに思わずため息が漏れる。


「四番、ユウ・リィランド。ダンスを披露します!」

「ああ、やっぱり・・・」 ギルティスの予想は当たっていた

本家本元たるユウは、その優雅な動きと艶のある流し目で、会場の男どもの視線を釘付けにする。

「ギ、ギル、落ち着いて・・・」

「離せ、セレト! はなせぇ~!」

セレトはステージに上がろうとするギルティスを必死に捕まえていた。

「ちくしょう~お前らぁ、そんな目つきでユウを見てんじゃねぇ~!!」

「あらあら・・・」 レイナはその様子を目の端にとらえて苦笑する。

「本当にあの二人、仲が良いんですねぇ・・・」

ユエリーは少しうらやましそうにそちらを見て、ルヴィナに話しかける。

「私は、ユウやユエリー達がうらやましいですわ」

ルヴィナは小さくため息をつく。

「え?」

意外なその一言にルヴィナの方を振り向くが、そこにはいつもと変わらぬ優しい笑顔が浮かんでいるだけだった。


 宴会が始まって一時間が過ぎ、時刻はすでに夜七時。

会場は今や絶好調であった!!


「カぁラオケーたいーかい~!!」 サラが、本日の企画第二弾を発表する。

「ふっ、わたくしの番ですね!!」

そう言ってステージに立ったベネティアの体が、変形を始める。

「うおっ! なんだなんだ一体!?」

ギルティスはベネティアの変形を初めて見るので、ひどく動揺していた。

「どうなってんだぁ!?」 それはどうやらリュウも同じ様だった。

そして変形が終わると、そこには一台のカラオケマシンが登場していた。

「一番、ルヴィナ」

いつの間にステージに上がっていたのか、ルヴィナはマイクを片手に歌い出す。


「・・・・・・」


「わあっ!!」

ルヴィナの、そのしっとりとして聞く者の心をつかむ歌声は、会場全体を包み込み、ユニスはすっかり聞き惚れていた。


ルヴィナって、こんなに歌が上手だったんだ・・・。


 ルヴィナが歌い終わると、会場に拍手の渦が巻き起こる。

「二番、レイナ」

 続いてステージに上がったのはレイナだった。


「・・・・・・」


酒の勢いもあってか、軽くスッテプを踏みながら、小気味良く歌う。

レイナの歌声に人々はどこか、さわやかな気分になっていった。


 レイナお姉さま、すてき! とってもかっこいい!!


「・・・三番、ギルティス。いきま~す!!」

ステージ上のレイナに指名され、すっかり調子に乗りながらギルティスが歌う。

「頑張って、ギル!」 ユウは大きく手を振って、ギルティスを応援する。


「・・・・・・」


さっきまでの気さくな彼はそこにはなく、一転して引き締まった顔つきを見せるギルティス。

「ギル・・・」

ユウは、ただ呆然と、ギルティスの立つステージを見ていた。


 すごぉい!! へぇ、ギルってこんな顔も出来るんだ。

なんだか怖いくらいなのに、不思議と・・・かっこいい!!


 ギルティスの気迫の歌声により、会場は一気に引き締められた。

「ギル、かっこいい! 愛してるぅ~!」

ユウはすっかり惚れなおしていた。

「よーし、勝負だ! かかってこい、カイ!!」

「お、俺かよ!?」

 ギルティスの突然の指名に、飲んでいたワインでむせるカイ。

「指名は絶対ですぅ~!」 すかさずサラが注釈を入れる。

「わかったよ! ったく、なんで俺が・・・」

「頑張って、カイ」 振り向くと、ユエリーが優しく微笑んでいた。

ユエリーの応援を背中に受けて、カイはステージに上がる。

「四番、カイ」

 そしてマイクを片手に持つと、ゆっくりとした口調で言葉をつむぐ。


「・・・・・・」


意外に優しいこの声は、聞く者をして、リラックスさせていく。

だが、その歌詞はと言えば・・・


わぁ、カイさんってだいたーん! これってやっぱりユエリーお姉さまとの事よね。いいなぁユエリーお姉さま。・・・いつかロファも、こんなラブ・ソング、私に歌ってくれないかなぁ・・・。


「・・・僕が側にいるから・・・」

最後のフレーズを口ずさむと、カイは静かにマイクをおろす。

「いいぞぉ、色男!」「憎いね大将!」「今夜はハンバーグだ!」

 会場は今、異様な熱気に包まれていた。

「カイもなかなかやるじゃないか」

ディクスレイはそう言って楽しそうに笑う。

「良かったでちゅね、ユエリー」

いつの間にか側に立っていたオルニカにそう声をかけられて、思いっきり顔が赤くなるユエリー。

「そこ! 何か吹き込んでるだろ、オルニカ? 次はお前が行け!」

目ざとくカイがオルニカを見つけ、指名する。

ただ単にユエリーを見ていて、たまたま気付いただけかも知れないが・・・。

「あたしがでちゅか!?」 仕方なくオルニカはステージに上がる。

「五番、オルニカ。歌いまちゅ!」

元気良く登場した愛らしい少女に、思わず人々の顔もほころぶ。


「・・・・・・♪」


元気な発声と可愛らしい歌声に、オルニカ可愛さ全快であった(笑)!!


 とぉっても不思議ねオルニカって・・・。私でも『可愛い』って思えるのに、ロファよりも年上なのかも知れないなんて・・・。


最初から最後まで、オルニカはテンションを下げる事なく元気に歌いきった。

「どうもでちゅ!!」

オルニカのそんな一言と同時に何故か「カワイイー!」「抱きしめたーい!」「こっち向いてオルニカー!」という女性陣の黄色い声(?)が飛んだ。

「なんだなんだ?」 リュウはその様子を少しだけ怖いと思った。

「それじゃあ次はディクスレイにお願いしまちゅ!」

 そう言って、オルニカはディクスレイを指名する。

「わかった」

ディクスレイはすっと席を立つとステージに向かい、マイクを受け取る。

「六番、ディクスレイ。いくぜ!!」

ステージ上に現れた長身の若者をしげしげと眺めていた人々は、その第一声にビクッとした。


「・・・・・・」


 調子の良いテンポに合わせて響いてくる、ディクスレイのシャウトが心地よい・・・。

若者らしい歌声が、人々の疲れを吹き飛ばしていく。


 なんだか、一見すると不器用そうなのに、とっても上手に歌うんだ・・・。


「サンキュウ!」

 マイクを持つ手を天に突き出すようにして、ディクスレイは叫ぶ。

 会場はすっかり興奮のるつぼだ。

「よーし、次はシンディが歌えよ」

 そう言ってマイクをシンディに向ける。

「え~、あたしも!?」

シンディが少し困った顔をする。

「大丈夫だってシンディ!」

 シンディが振り返ると、リュウは明るい笑顔を見せる。

「リュウ・・・」

シンディはリュウの、そんな優しさが嬉しかった。

「もうみんな酔っぱらってるから、いくら下手でも平気だって・・・」

シンディは思いっきりリュウの顔面に拳をめり込ませた。

「・・・リュウのバカ!!」

 シンディはステージに上がってマイクを受け取ると、ゆっくり深呼吸をする。

「七番、シンディ」

シンディは心を落ち着かせると、はっきりとした声で歌い出した。

「いってぇ~。シンディの奴、おもいっきり殴りやがって・・・」

「自業自得だろ」

顔を押さえてうずくまるリュウに、カイはぽつりとつぶやく。

「なにぃ~。カイ、てんめぇ!」

「静かになさい二人とも!! シンディがいま歌っているんですよ!!」

今にも口げんかを始めかねない二人を、ユエリーがきつくたしなめる。


「・・・・・・」


この曲も、軽快な音楽ではあったが、シンディの熱い歌声にとても良くあっていた。

ステージ上で歌うシンディの横顔が、時々大人びて見える・・・。


私と四つしか違わないのに、なんだかとっても大人に見えたりする・・・。


「・・・うまいな」

歌が終わると、リュウは一言、素直にそう言った。

「どうもありがとう!!」

 もちろん、リュウの声が聞こえていたわけではなく、ステージ上のシンディは、彼女に向けられる声援にたいして礼を言う。

「さてと、私も歌ったんだから、当然次は・・・」と言って、シンディがユエリーの方を見る。

 視線に気付いて、ユエリーはシンディの方を振り向く。

「私、ですか・・・?」

シンディはにっこりと微笑んで、頷く。

仕方なく心の中で観念して、ユエリーはステージに向かう。

「・・・大丈夫さ」

カイは、ユエリーにだけ聞こえるような小さい声で、そう言った。

 ユエリーは礼を言うようかの様にカイに対して微笑むと、ゆっくりとステージに上がっていった。

「八番、ユエリー。歌います」

 会場はこの、匂い立つような美女の登場で、一気に静かになっていった。


「・・・・・・」


曲調は再びゆっくりしたものに変わり、澄んだ歌声が会場に響きわたる。

 しかもこの歌詞はまた・・・


 ユエリーお姉さまもすごぉい!! ユエリーお姉さまとカイさんは、強い絆で繋がっているのね! いいなぁ、うらやましい・・・。


「・・・・・・♪」

歌が終わり、優雅に一礼をするユエリー。

今まで、ユエリーの歌う、静かで強いラブ・ソングを聞いていた人々は、一斉に拍手を送った。

「それでは、残るはあと一人ですわね」

ユエリーは、まだかすかに頬を赤らめながら、にっこりと笑って言った。

「え!? でも、あと誰かいましたかぁ?」

困った顔をしてやってくるサラに、ユエリーは黙ってマイクを渡す。

「はい、最後」 しばし呆気にとられてしまうサラ。

「そう言えば・・・。確かにサラには司会を頼んでいたので、サラ自身は何にも出ていませんでしたね」

ルヴィナはその様子を遠くから見ていて、そう思い当たった。

「・・・わかりましたぁ。不肖、サラ。歌わせてもらいますぅ!」

さすがは名司会。張り切って宣言するとサラは、胸の前でマイクを握り、体全体でリズムを取って歌い始める。

肩まで伸びた髪を左右でまとめたリボンが踊るように揺れる。


「・・・・・・」


何とも小刻みな調子の曲でありながら、不思議とサラにはそれが合っていた。

さすがに前回『あんこたより』で優勝した程の実力者。難しい曲でもなんなくカバーする。


 へぇ、サラお姉ちゃんってすっごく歌が上手なんだぁ・・・。料理はあんなに下手なのに・・・。


「ありがとうございましたぁ!!」

観客は全員総立ちで拍手をしていて、優勝は決まったようなものだった。

その時である

「お姉ちゃん、僕も歌いたぁい!」

突然、何処からともなくそんな声が響きわたる。

ステージ上のサラの側には、いつの間にか、一人の小さな少年が立っていた。

ボロボロのマントに身を包み、帽子を目深にかぶったその少年は、どうやら長い旅をしてきたようで体中が埃にまみれていた。

サラはその風体よりも、大魔法師のユエリーとは比べられないにしても、一応、魔法士の称号を持つ自分が、こんな小さな子供の気配に気付かなかった。その事の方が気になってはいたのだが・・・。

「ねぇ、ダメ?」

すがりつくようにこちらを見上げる少年の、その不安げな瞳に思わずサラの理性はどこかに消える。

「もちろん、いいわよ!」

「やったぁ!!」 少年は嬉しそうに飛び跳ねる。

サラは一瞬、『しまった』と思いもしたが、すぐにその考えを頭の中から打ち払う。

何故かあの少年には、不思議と懐かしい気持ちにさせられるから・・・。

「あ、そうだ! 僕、お名前は?」

サラはステージ中央に立つ少年に駆け寄ってそう尋ねる。

「・・・まだわからないかい、サラ?」 少年は不意にサラの顔を覗き込む。

「えっ!?」

 少年はいたずらに成功した時のように笑うと、マントの下から大分使い慣らしたシタールを取り出して、軽く調子を確かめると歌い始める。

「あ、あのシタール!?」

セレナは確かにそのシタールに見覚えがあった。あの花の模様は・・・。

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