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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
20/60

8.灯の家・宴会物語(二日目)・1

全7話構成の3話目です

 二日目


カイとユエリーの二人は、ルヴィナとオルニカを伴って、仲間達の墓参りに向かい、他の面々は、まずリュウ、ディクスレイ、ギルティスの三人は男の子の、シンディ、レイナ、エリザ、ユウの四人は女の子の相手をしていた。

サラとユニスは、互いに手品の腕を競い合い、ベネティアは審査員として二人の相手をしていた。

セレトとセレナは観客となっていた。

 しばらくしてカイ達が帰ってくる頃には、日は中天に差し掛かっていた。

昼食は、天気もいいから屋上で取ることにし、みんなそれぞれに楽しく食事をすませた。

「ふぅ、うまかったぁ!」 リュウは満足そうにひっくり返る。

「お行儀悪いわよ、リュウ!」 シンディはそんなリュウに注意する。

「相変わらず、お二人とも仲が良いですね・・・」

ルヴィナはおかしそうにくすくすと笑う。みんなの顔にも自然と笑顔が浮かぶ。

「べ、別にそんな事は無いわ! ね、ねぇリュウ?」

「お、おう!!」

 二人は慌てて否定するが、あまり効果は無かった。

「あー、お兄ちゃん達、赤くなってるぅ!」 リュウの隣に座る少年が指摘する。

「ホントだぁ!!」 シンディの隣に座る少女もやはり指摘する。


 いいなぁ、あんな風に仲が良くって・・・。ロファはいつでも優しいけど、私のこと、子供扱いするんだもん! もっと対等に扱って欲しい!! 早く大人になりたいなぁ・・・。


「こら! 大人をからかっては駄目よ!!」

ユウは子供達を窘める。

「それにしても、やっぱりすごいわね・・・」

「何がですかレイナ?」 レイナの感嘆の声を耳にし、ユエリーが尋ねる。

「本当にこうやって、この『灯の家』で子供達の世話をしてるなんて、ちょっと信じられなくて・・・」

「そうだな。そういう意味ではルヴィナやギルティス達にかなわない部分もあるよな・・・」

ディクスレイも感慨深く納得する。

「俺達なんて・・・何もしてやれなかったよ。全てはルヴィナと、そしてロファの力さ!」

そう言ってギルティスは恐縮する。ユウ達も気持ちは同じ様だった。

「いや、ギルティス達も大したものさ。確かに最初はロファとルヴィナが中心だったかも知れない。しかし、二人だけでやっていたならこうまで立派にはなっていなかったさ」

カイは静かにそう言うと微笑する。

「そうですよ! いい加減に認めて下さいね。私は本当に、心から感謝しているんですから・・・。私にしても、もしロファが力になってくれなかったら、こんなに素敵な『我が家』が出来たかどうか・・・」

ルヴィナはそう言うと、旅先のロファの無事を祈って印を切る。

「そう言えば、この『家』の成り立ちって、私、聞いた事無いんだけど、ユニスは知ってる?」


あ、そう言えば! 私がこの『家』に来た時には、まだ名前はついていなかったけど子供達が何人かいて、ルヴィナが一緒に暮らしていたんだよね。だから今まで大して気にした事も無かったんだけど・・・。


 ユニスは黙って首を横に振る。

「私達もこの家が出来るまでの詳しいいきさつについては良く知りませんし、もし良ければ話してくれませんかルヴィナ?」 ユエリーも丁寧に頼み込む。

「参考までに是非、聞きたいでちゅね!」

 何の参考にするのか、オルニカも楽しそうに笑っていた。

するとルヴィナは一つ息をはき、背筋を正すと口を開く。

「そうですね。いい機会ですし、少しお話ししましょうか・・・」


 ルヴィナはまず、サラが企画した『宴会』から話し始めた。

そこで初めてルヴィナはサラ・ロファ・ユウ・エリザ・ベネティア、そして噂では、今は自分で作った劇場を営んでいるというエルヴァイラと出会った。

その『宴会』については、この場にいるサラ達五人の中では良き思い出となっていた。

そして『宴会』の途中でルヴィナは、酒の勢いもあってか、初めて会ったばかりのロファ達に『孤児院建設を手伝って欲しい』と頼み込んだ事が全ての始まりだった・・・。


「そうだったんですか・・・」

ユエリーは、この『孤児院建設』の活動がそんな昔からあったのかと驚いた。

「みんな大分酔ってましたし、私も言ってみるだけでも、と言う位にしか考えてなかったのですが・・・。特にロファなんて、すっかり千鳥足でしたし」

「ロファってあまりお酒に強くないもんね!」 ユニスが一人納得する。

 ルヴィナは少し苦笑すると、続きを話す。

「そんなある時、当のロファが私の所にやって来てこう言ったんです」


『このお金、この間話してた孤児院建設のために使ってもらえるかな?』


「そう言ってロファは5000GPもの大金を寄付してくれたんです」

「5000GP・・・!!」 リュウは驚いて口笛を吹く。

確かに、今の彼らにとって5000GPは大して高いものではないにしても、そんな気軽に右から左へと移せる額ではなく、まして当時の彼らではなおさら、無い。

「・・・・・信じらんねぇ」

しかしセレトは、ロファと初めて会った時のことを思い出す。

あの時もロファは、5000GP以上のお金を一言で『いらない』と言ってなかったか・・・。

「それで、ロファは何も望まなかったの?」 レイナは不意にそう尋ねた。

(何の見返りもなしで5000GPも払う人間がいるかしら?)

「・・・ロファの望みはただ一つ・・・」

(やはり何か要求したのか・・・) そう思うとレイナは少しがっかりした。

それはレイナにだけ限ったわけではなかったが、ユニスはロファを信じて続きを待った。

「・・・いつでも自由に孤児院に遊びに来てもいい、という事。ロファはそれだけを望みました・・・」

全員、その一言に『はっ』とするが、ロファらしいその『望み』が妙に嬉しくもあった。

(ホント、ロファらしい見返りね・・・) レイナは思わず微笑んだ。

「そしてロファは、その後も様々な形で手助けをしてくれました。まずはロファの寄付してくれたお金で日常に必要な物を揃えることが出来ました。ロファ自身は街に行き、宣伝の為に『灯の家』という、この家の名の由来にもなった一人芝居をして、その時に知り合った貴族のウォルタンスさんに、この家の援助も頼んでくれたりもしました」

「この家の名前って、ロファの芸からきてたんだ!」

シンディは意外な由来に少し驚いた。

「私もね、手伝った事があるんだよ!」

そう言って、ユニスは誇らしげに胸を張る。

「まぁ、そうなんですか?」 ユエリーは素直に感心していた。

「すごいでちゅ!」 オルニカもユニスの方を見て驚く。

「ロファの腕も落ちたもんだな。こんな子供にまで手伝ってもらっているようじゃな・・・」

カイはそっぽを向きつつ、ぽつりと言った。

「ユニス、子供じゃないもん!!」 カイの一言に、怒り心頭のユニス。

「そういう事を言ってる内は、まだまだ子供さ」

カイも、やれやれといった感じで答える。

「・・・・・ひっく」 ユニスの顔がくしゃくしゃになり、目に涙がたまる。

「お、おい、ちょっと・・・」 カイが制する前に、ユニスは大声で泣き始めた。

「ウワァァァン!!」

「こ、こら泣くな! 泣くなよ、おい!!」

みんなの視線が痛い。特にユエリーはルヴィナと共に慰めながらも、カイをきつく睨んでいた。

「わ、悪かった。俺が悪かったよ! お前も子供じゃないし、ロファも大した奴だよ。だからもう泣くな!!」

「そのとうりさユニス。アイツは大した奴だぜ。それと、レディは人前で大きな声を出して泣くもんじゃあないな。そうだろう?」

ユニスが顔を上げて声の主を見ると、ディクスレイは、大柄な体に優しい笑顔を浮かべていた。

「ごめんなぁ、ユニス。カイの奴って、いつもこんな口の利き方しか出来なくってさぁ。悪気はない筈だから許してやってくれよ、な?」

リュウが手を合わせ、片目を閉じて謝る。

カイの側ではコールもくぅん、くぅんとすまなそうに鳴いていた。

「・・・うん、わかった」 ユニスは目を真っ赤にしながらも頷く。

「いい子ですね、ユニス」

ルヴィナが静かに頭を撫でるのを、ユニスはそのまま受け入れた。

「あのさ、一件落着した所で続きを話して下さいよ」

 セレトは、早く聞きたくてうずうずしていた。それは他の子供達にしても同じ事であった。

「はいはい・・・」 ルヴィナはそんな子供達を見て、優しく微笑む。

「その後も、ロファは活動を続けていたのですが、近くの街に行った時、ロファはそこで大変な目に遭いました」

「大変な目?」 ユエリーが僅かに緊張する。

「一体何があったんだそこで・・・」

今のカイは苦笑まじりの顔ではなく、仲間のことを本気で気にしている、そんな顔をしていた。

ユニスはそんなカイの変わり様に対して、大いに驚いていた。


 ・・・やっぱりこの人もロファのお友達なのね。口では悪く言ってても、本当はロファが好きなんだ。


 ユニスはなんだか嬉しくて、思わず笑顔になる。

そんなユニスを後ろから軽く抱き寄せて、ルヴィナは言った。

「ここにいるユニスを助けるために、ロファはたった一人で冒険者四人を相手に戦ったんです!」

「ロ、ロファが戦ったぁ?」

「う、嘘ぉ!?」

「あのロファが戦うなんて・・・。ちょっと信じられないですぅ」

リュウは驚き、シンディは信じられず、サラはまさか、と言った感じで俯いた。

「相手の程度にもよるけど、仮にも冒険者相手で、しかも正面から当たったら、一対一でも負けるのに・・・」 レイナはロファの実力をそう評価した。

「あの時に言っていた事は本当だったのか・・・」

「しかもユニスを助ける為にだったなんて・・・」

セレトとセレナは顔を見合わせて、ロファと初めて会った時のことを思い出していた。

「私はその二日前までここにいたのですが、その街の方がロファの事を知らせてくれて、ちょうどその時、『灯の家を手伝いたい』と言って来ていたギル達もいたので、五人でその街に向かったんです・・・」

「そしてわたくし達が着いた時には、ユニスは捕らえられ、ロファはまるでボロ雑巾のようでしたよ」

ルヴィナの説明にベネティアが補足する。

「俺達もその時の事はよくわからないんだ。何せロファは重傷、ユニスに聞いてもロファに対してのラブ・コールだったもんでな」

「そ、そんな事なかったもん!!」

ユニスは顔を真っ赤にしてギルティスに反発する。

「それでギルティス達には先に帰ってもらい、私達は、ロファのケガが軽くなってから、三人で帰りました」

「あのね、ロファ、その一週間前にも同じ人達にいじめられててね。それでもロファ、そのまま芸をしてたから、もうボロボロになってて、二日も眠ってたんだよ! 私、心配して・・・、『お願い、目を開けて!』って、ずっと祈ってたの・・・」

 ユニスはあの時の、ロファを失うかもしれない、という身も凍りつきそうな恐怖を思い出し、再び泣き出してしまった。

 仲間達は改めて、ユニスにとってロファは特別なのだと実感すると共にケガを負いながらも芸をして、一度負けた相手にも再び立ち向かうロファの姿に、彼の精神力の強さを垣間見た。

「その後、ロファのケガも治って、孤児院名も決まり、さぁこれからって時に、ロファは再び旅に出たのよ・・・」

エリザが少々呆れながらそう言った。

「事件から二週間位たった頃にね・・・」

 ユウも僅かに怒気を含んだ声で言った。いまだに二人は納得しかねていた。

 後の三人については、ルヴィナは『約束』だから、ギルティスは『男の友情』、ベネティアに至っては『達観している』と、それぞれの理由から、一応、納得はしていた。

「それでその後、『北』に向かう途中で私達と出会ったって事になるのかぁ」

セレナは、その運命の不思議さに心の中で感謝していた。

「でもロファって、何しに『北』に向かったのかしら?」

シンディのその一言は、素朴ではあったが核心を突いたものであった。

しかし、この疑問に答えることは誰にも出来なかった。

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