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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
15/60

4.心はいつもあなたと共に(1)

新作もサルベージも余裕がないため残っていたデータのあるものを先に投稿することにしました。

この話は全3部です

 アルムトゥバル山を北に・・・。

 とりあえず第一目的地であるドミナ湖を目指し、旅を続けている道化師のロファ・サーフェ。

「はらへったぁ・・・」 弱々しく一人つぶやくロファ。

(・・・・・)

「もうおいらヘトヘトだよぉ」

(・・・・・)

「リシュリタ?」

(・・・・・)

 返事はない。

「おーい、リシュリタぁぁぁ!」

(・・・・・)

 やはり返事は無い。

「わーん、リシュリタがいじめたぁ!!」

(誰が、いつ、あなたをいじめましたかロファ?)

 その声は疲れ果てたロファの頭の中に響いてくる。

 もうかれこれ二時間程、ずっとこの繰り返しである。

さすがの『歌姫』リシュリタの声にも疲れ(!?)の色が見える。

「だってさぁ・・・」

 すぐスネるロファ。

「リシュリタを抱えるのにも疲れてきたよ。ねぇ、少しダイエットしない?」

「いいかげん怒りますよ!!」

 ロファの抱えてるシタールの弦が心なしか、ぴん、と張ったような気がする。

 リシュリタもまた女性であった。たとえ体がシタールでも・・・。

「あ、街だ!」

 リシュリタの怒りもどこ吹く風でロファは叫んでいた。

「メシィィィ!!」

 側に知り合いがいたらまず、他人のふりをされそうな叫び声を上げて、ロファは街に向かってダッシュする。

(まったく、仕方が無いですわね・・・)

 そんなリシュリタのつぶやきも今のロファには届かなかった・・・。


「うん、うまぁい!!」

 ロファは骨つき肉をくわえていた。

「生きてて、ほんっ・・・・・とうによかったぁ!」

(もう、ロファったら・・・)

 リシュリタは他の客の確かな視線を感じて恥ずかしくなった。

 ロファが食事に夢中になっている間、リシュリタと荷物は一緒に隣のイスに置かれていた。

 すると突然机の下から手が伸びてきて、その手がリシュリタと荷物の二つをしっかりとつかむ。

(・・・・・ロファ!!)

 リシュリタの警告にロファが振り向いた時にはもう、彼女も荷物も店を出て行ってしまった。

 シタールである『歌姫』リシュリタも、そしてただの荷物も当然、一人で動けるはずが無い。となると・・・

「もしかして、ドロボウ!?」

 ロファは静かにそう反応した。


「やったわね、セレト!」

 年の頃なら十四・五の、顔立ちの整った少女が隣に座る少年の肩をたたく。

 街はずれにある、ここ数年間、誰も住んでいないような、そんな古めかしい屋敷の広間にリシュリタはいた。

「あったり前さ、セレナ!」

 少女と同じ顔立ちをした少年が、着ていたフードを床に置く。

 二人とも動きやすそうな格好のシャツとズボンを着ていた。

 セレナは腰まで届く長い髪を後ろで束ね、セレトはショートカットであった。

「やったぜセレナ! あいつこんなに持ってやがった」

 荷物の中からサイフを取り出して中身をあさるセレト。

 ロファはかるく5000G以上持っていたので彼らにしては大きなエモノであった。

「このシタールも年代物みたいね。細工がとってもきれい・・・。ちょっと、売るのが惜しいかな?」

 リシュリタを膝に載せて寂しそうにつぶやくセレナ。

 そっと弦を弾くと、美しい音色が辺りに響く。

「そんなの、なんてコトねーよ。これでこんな生活ともおサラバさ!」

 セレトがそう言って笑おうとした時、

「こんにちはー!」

 玄関の扉が開いて、どこか抜けた声が響き渡る。

「誰だ!?」

 セレトが咄嗟に振り向く。セレナも用心深く身構える。

「一目でラヴリィな道化師でございますです、はい」

 そう言って妙にペコペコしながら、ロファが屋敷の中に入って来る。

「て、てめぇさっきの・・・」

 セレトが慌てる。

(ロファ!!)

 リシュリタが思わず歓喜の声を上げる。

 ロファはにこやかに笑いながら二人に近づく。

「まぁまぁ、そんなに怖がんなくてもいいから。もっと肩の力を抜いて・・・」

 そう言ってロファは右手を上下にパタパタさせる。

 しかしセレトは、より一層警戒を強め、腰に手をやり、

「荷物を取り返しに来たんだろうがそうはいかねぇ!!」

 と言って、腰のショートソードを引き抜く。

(お願い、逃げてロファ!!)

 リシュリタの悲痛な叫びがロファの心に届く。

 しかしロファはリシュリタに微笑みかけるだけで逃げようとはしない。

「暴力は止めておけ。(おいらが)ケガをするから・・・」

 まじめな顔で不真面目な本心を押し隠し、優しく声をかけるロファ。

「なめるな!!」

 ショートソードを腰の辺りで構えて駆け出すセレト。

(いやぁぁぁ!)

 思わず意識を閉ざすリシュリタ。

 だが、その攻撃をロファは軽く横によけてかわす。

(あの時の『実戦』がものを言ったな・・・)

 そう思いながらロファが口にするセリフは

「君じゃあ、おいらにはかなわない。こう見えてもおいら、冒険者数人を相手にたった一人で渡り合った男だぜ!」

(えっ!?)

 その意外な一言に、驚きの声を上げるリシュリタ。

 ロファは不敵な笑顔を浮かべつつ、

(ボロ負けしたけど・・・)

 とまたも本心を隠して『真実』を語る。

 ほとんど手口は詐欺師同然である。

「そんなの関係ねぇ!!」

 威しに屈せず、今度は振りかぶって迫って来るセレト。

「仕方ない・・・」

 ロファは諦めて、戦闘用の非常『芸』を手の中に仕込む。

 そしてロファは、全力で駆けて来るセレトの足元に向かって、

「水芸ランタン油バージョン!!」

 油を撒いた(笑)。

「わっ・・・!」

 油に足をとられ、勢いよく転んで頭をぶつけるセレト。

「はい、そこまで」

 倒れたセレトの首筋にダガーを突き付け微笑むロファ。

(ロファ!!)

 リシュリタの声にも落ち着きが戻る。

「くっ・・・!」

 セレトがロファにのしかかられて微かに呻く。

「セレト!!」

 セレナがリシュリタを放り投げてセレトの側に近づくのと擦れ違いに、ロファはセレトから離れてリシュリタの側に行く。

「大丈夫かい、リシュリタ?」

 ロファが優しい声でリシュリタを抱える。

(よかったぁ、ロファが無事でぇ・・・)

 リシュリタは泣きそうになりながら、ロファの腕に抱かれていた。

「お金はいらないよ。『リシュリタ』さえ無事ならそれでいい。もし何か用があったらさっきの店においで。しばらくはあそこでタダ働きだから・・・」

 そう言って、少しうなだれながらダガーをしまうと、リシュリタを抱えながらその場を立ち去ろうとした。

「金なんかいらねぇよ!・・・おれは負けたんだ。とっとと突き出すなり殴るなりしろよ!!」

「君、そういう趣味の人?」

 ロファは思わず後ずさりしていた。

「ち、ちげぇよ!」

 体を起こしつつ赤面するセレト。

「お願い! ・・・セレトを、セレトを突き出したりしないで!!」

セレナは両手を広げてセレトを庇う。

「セレナ!」

 そのセレナの必死な様子にロファは、指で頭を掻きながら、尋ねる。

「ねぇ、ひとつ聞いていい?」

「な、何よ?」

 脅えながらも、正面から向き合って逃げようとはしない。

「おいら、そんなに怖く見えるかい?」

 ロファは、余りの悲しさに泣き出す寸前だった・・・。


「大人は信用できない」

 セレトは開口一番、そう言った。

「子供なら良いと?」

 ロファがまじめな顔してそう尋ねる。

「少なくとも大人よりはな」

 ロファの、その雰囲気にのまれてぼそっとつぶやくセレト。

 しかしそれがまずかった。

「・・・わかった」

 一言そう言うと、ロファは立ち上がって、ズボンの裾を膝までたくしあげる。

 そしてその瞬間・・・

 しゅるん!

 そんな感じでロファの足が縮み、たくし上げたはずのズボンの裾が足首の所まで下がっていた。

「きゃあぁぁぁ!!」

「ば、化け物!!」

 セレナとセレトは、目の前で起きた奇怪な出来事に対して、二人抱き合って脅えていた。

 足だけを縮ませ、他はそのままというかなり怖い状態で、いかにも傷ついたというフリをするロファ。

「一応、これも芸のひとつ何だけどなぁ・・・」

 そう言って今度はひじまで袖をまくし上げると、両腕を縮めるロファ。

「秘技『ライムライト』成功!」

 そしてとびきりの笑顔を見せるロファ。

「あ、あなたって一体?」

 セレナが恐る恐る尋ねる。

「ぼくぅ、ろふぁ・ちゃーふぇ。ちゃんちゃい(三才)でちゅ」

「張り倒すぞ!!」

「もう張り倒されたんですけど・・・」

 ロファはひっくり返ったまま文句を言った・・・。

予約が上手くいかないので続けて投稿しました

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