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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
12/60

3.思いは時を超えて(3)

ご無沙汰しております。最近少し見に来てくださる方がいるようなのでちょっとだけ更新します。

「ここは・・・?」

 ロファはまわりを見る。どこまでも広くて上下左右がわからなくなる。

「待っていましたロファ」ロファの前に突然、一人の女性が現れる。

 年の頃なら二十歳前後。長い銀髪は後ろに無造作に流れ、夜着のように薄く、不思議な衣を着ている。その姿に思わずロファは目をそむける。

「・・・どうしました、ロファ?」不思議そうに首を捻る彼女。

 ロファはなるべく後ろを見ないようにしながら横を向く。

「あなたは一体誰だい?」ロファが赤い顔して尋ねる。

「私はシタールの心。・・・あの人の残した強い『思い』・・・」

「あの人?」ロファは心の中で決心して、相手と向かい合う。

「私の主人、ルイーゼの事です」彼女は静かな声でそう答える。

「約束の事を忘れてしまったのですか?」彼女がやんわりと聞いてくる。

 返事に困ったが、ロファは正直に頷くことにした。

 だが、彼女は別段怒ることもなく、黙ってロファを見ていた。

 すると、彼女はクスリと笑ってロファを抱きしめる。

 予想外の展開に、思わず慌てるロファ。

「落ち着きなさいロファ坊や。落ち着いて・・・」

 その声にロファは確かな何かをつかんだ。それは・・・。

「あなたは…あの時のお姉ちゃん!?」

 夢に取り違えた、現実の記憶。

 あの時、この街に両親と共にやって来て、はぐれてしまったあの時の・・・。


「どうしたの?」

 親とはぐれて泣いていたおれに、あなたはそう声をかけてきた。

「父ちゃんと母さんがね、いないの・・・」

 人見知りする子供だったのに、不思議とあなたは怖いと思わなかった。

「そう・・・。でも、だからって泣いてちゃダメよ。男の子なんだから!」

「だって・・・」そう言って泣きじゃくってた小さなおれ。

 すると、あなたは突然おれを抱き締めて、きれいな声で歌ってくれた。

 あやすように優しく、とても澄んだ声で・・・。

 その歌を聞いている内にだんだん悲しくなくなり、逆に勇気が出てきた事を今も覚えてる。

「お姉ちゃん、お歌上手だね!お名前は?」

 真っすぐにあなたを見てそう尋ねたら、あなたは少し哀しそうな顔をして

「・・・私はぼくの名前が知りたいな」と言ったんだ。だから、

「ぼく、ロファ。ロファ・サーフェ!」と馬鹿みたいに元気に答えたっけ。

 そしてあなたは

「ねぇ、ロファ」。私と一つ約束してくれる?」と言っておれの顔を覗き込んだ。

 その時のあなたの顔は、とてもきれいなのに何故か哀しそうにも見えたから、だから・・・

「うん、いいよ!」それを聞くと、あなたは優しく笑って、そして・・・。


「思い出しましたかロファ?」

「うん」彼女の腕の中でロファは軽く頷く。

「約束・・・かなえてくれますね?」

 返事は一つで十分だった。


 次の日、ロファがこの街に来て三日目になる。

 ロファはマジックの腕を披露した後の少しの休息の時間をシタールの練習の為に費やしていた。

 そして午後になって最初の休息のとき、一人の男がロファに声をかけてきた。

「こんにちは」

 男が軽く挨拶をしてくるので、ロファも、シタールを後ろに置きながら挨拶を返す。

「シタールですか?」質問に頷いてロファは尋ねる。

「何か用かい?」

 ロファが笑顔を見せると、男はマリウスと名乗り、要件を簡単に告げた。

「夕食をご馳走してくれるのは嬉しいけど、今日はムリなんだ。ごめんね」

「なぜ?」断られるとは思っていなかったようで、意外そうに尋ねてきた。

「今晩は、武器屋の息子のナジムくんと誕生パーティーの約束なんだ」

 そう言って明るく笑う。ロファはもう既に街の子供達と友達になっていた。

「だが、領主・フィオネル様直々のお誘いですぞ?」

 マリウスはしつこく食い下がる。ロファはそれにも構わず

「関係ないよ、そんなの。約束は約束だからさ」とはっきり言いきった。

 そんなロファに一瞬気色ばんだが、すぐ、穏やかに笑って丁寧に話しかける。

「なら明日はどうですか?」

「明日ならいいよ。喜んでいくよ!」

 ロファが笑ってそう答えると、マリウスは納得して帰っていった。


「そうか、関係ないか!」フィオネルは上機嫌で笑っていた。

 マリウスからの報告を聞いたフィオネルはロファの、その全てを平等に見る態度にいたく感服し、機嫌が良かった。

「マリウスにも損な役回りをさせてしまったな。許して欲しい」

 フィオネルがマリウスに頭を下げる。

「そ、そんな滅相もない!どうか頭を上げてください、若」

 マリウスが思わず慌てる。

「随分と立派になったのね。でも元気そうなのはなによりだわ!」

 イリスが嬉しそうに手をたたく。

「あなたの弟は大物ですよ」フィオネルがそう妻に笑いかける。

「そりゃあ、サーカス時代に私がビシバシ鍛えたんですもの」

 そう言って彼女は誇らしげに微笑む。

 そんな彼女にフィオネルも優しい笑みを浮かべる。

「明日か・・・。なら、せいぜいこちらも準備をしておくとしようか」

もしかしたら今日中にまた更新するかもしれません。しなかったらごめんなさい。

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