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千夜狩猫アーカイヴス  作者: 千夜狩猫
ロファ・サーフェ・アーカイヴス
1/60

1.そして未来は輝いている(1)

この作品は運営の指摘を受け一部を訂正・変更し再投稿したものです。

作者にとっては20年以上前の作品になりますがお楽しみいただければ幸いです。

もっとも作者が自分で気楽に読むために投稿したものなので内容がわかり難くてもそこはご了承ください(笑)

 町の中の人だかり・・・

 それは普通なら五つぐらいに分けられるかもしれない。


 1.有名人がいる

 2.事故・事件が起きている

 3.誰かが説教、もしくは宣伝している

 4.目玉商品・お買い得品の販売

 5.歌を歌っている、芸をしている


 の五つである。

 そしてその枠を飛び越えるという事は、軽業に多少の覚えのある道化師ことロファ・サーフェにも不可能なようだった。

『かわいいおまえ達、忘れないでおくれ』

 しゃがれた声を出しながらロファは、まるで目の前に大切な誰かが座っているかのように微笑みながら、頭を撫でるしぐさをする。

『たとえおまえ達が遠く離れる事になっても、帰る場所はここにある』

 両手を空に広げ、少し目線を高くする。まるで天井を見据えるかのようにして・・・。

 彼は今、芸をしていた。ロファが自分で創作した一人芝居『灯の家』である。

『さぁ、ヒルデ母さんが呼んでいる食事にするとしよう。温かいスープがわしらを待っているからね・・・・・』

 そう言うとロファはゆっくりと立ち上がるり、子供達を促すようなしぐさをして数歩後ろに下がると振り返って一礼する。

「これにて街頭一人芝居『灯の家』を幕と致します。最後までどうもありがとうございました!」

 途端に見物客から拍手が沸き起こり、おひねりも飛んでくる

 その様子にロファは、自身初めての芸とも言える『芝居』が成功した事を確信して懐から、まるで手品のように大量のチラシを取りだして大声で叫んだ。

「どうかお集まりの皆さん、帰らずにそのままで少しだけおいらの話を聞いてください!」

 その声に立ち去りかけていたお客達が振り向く。

 ロファが一人一人に手に持っていたチラシを配って回る。そのチラシには落ち着いた感じの綺麗な字でこう書かれていた。


『孤児院開設のお知らせ』


 街の人達が一通り目を通した事を確認するとロファは話し始める。

「実は今度、お手元のチラシに書かれている場所で、おいらの知り合いの司祭様が孤児院を開く事になりました!

 ですがまだはっきりとした目処が立たず、人手も足りてません」

 人々はそのまま話を聞いている。

「それでもしこのチラシを見て、少しでも孤児院に協力しても良いという方がいたら、是非その場所に行って彼女、ルヴィナ司祭のお手伝いをしてあげてください。お願いします!」

 町の人々がざわめく。

 お互いに顔を見合わせるがその顔にはありありと『興味なし』という気持ちが読みとれた。

 ロファは必死に説得するが、所詮は芸人風情の言う事に耳を貸すものは無く、全員その場を去っていった。

 去っていった後もロファは『灯の家』や水芸をしながら舞う事で虹を生み出すお得意の『虹の舞』等で人を集め、大量にあったチラシが半分以上無くなる程に何度も多くの人々を説得したが結局は徒労に終わっていた・・・。


 だがそれでも諦めずに今日何度目かの『灯の家』を演じていた時にそれは起こった。

 見物客の一人で、冒険者らしい男たちの中でも明らかに戦い慣れていそうな男がロファを指さしてこう言った。

「ろくに戦闘の役にも立たない芸人のくせに偽善者ぶって甘い夢ほざいてんじゃねぇよ!芸人は芸人らしく小銭でも稼いでせいぜい司祭様とやらにでも貢いでろ!」

 最後の言葉が終わる前にロファは動いていた。

 だがその男が言うように、戦う力などありもしない芸人一人では戦い慣れている戦士一人を含む冒険者四人に敵うはずもなかった。

「今の言葉取り消せぇ!」

 最後までロファはそう叫び続けていた。


 気がつくと、ロファは目の前に子供の顔を見ていた。

 薄汚れてはいるが女の子のようだ。

 何故かかつて仲間達と共にその重い運命から守ろうとした少女の事を思い出す。

 頬がつめたい。少女はロファの顔を濡れた布切れで拭いていた。

「気持ち良い・・・」

 腫れた頬に冷たい布切れはとても心地よく、ロファは再び瞼を閉じて眠りについた・・・。

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