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第2章 保安官と賞金稼ぎ

登場人物


ユージン=マクガヴァン

エイリッシュランド系のガンマン。

愛用の白銀のリボルバーを腰に携えている。魔術弾を操るガンマン。20歳。


レイカ=プレシェット

ユージンの前ではドSの女王様だが、基本的に女の子らしい一面を持つ。移民。合衆国の市民権を得る事を目標にしている。黒髪のロングヘアー。ユージンに首輪をつけて、飼い犬みたいに可愛がる。

23歳


ジャクソン=スミス保安官

ケープアイランドの保安官。治安維持の為職務を遂行する。


合衆国の地名

Galahan State

聖教徒により開拓された新興国。

ゲオルグランド本国と新大陸の玄関であり、初期に開拓されたStateである。魔術に優れ、国を繁栄させている。

最大都市…プリグリムシティ

North Union(北部連合)の本拠地。聖教徒の礼拝堂がある。


ケープアイランド

Galahan State最大の港町。移民が訪れる最初の街。


「じゃあ下船しましょうか」

 レイカは優雅な足取りで手荷物を抱えて、階段を降りている。僕は唯一の荷物であるズタ袋を持って、彼女の後を着いていく。

 船を降りると賑やかで効率化された港町の景色が広がっていた。機械化されたガントリークレーンが絶えず荷物を運搬して、大量の荷馬車と鉄道網が新大陸の各地に物資を供給している。

 工場から立ち上る黒煙は焙煎されたロックオイルの香りを街中に漂わせ、僕をクラクラさせる。

 同じ移民の人達だろうか、大きな荷物を抱えた家族連れや労働者が続々と街並みに消えていく。

「ねえユージン、お昼ご飯は食べた?」

「まだ食べてないよ、まずはお店に入って落ち着こうか。」

「ポトフ屋さんに連れて行ってくれるの?」

 そうだ‥僕は彼女にポトフをご馳走しなきゃいけないんだった。

 でも初めて来た街のレストランなんて、当然知らない。

 しかも、ポトフって何だろう?

 僕の故郷ではポテトが主食だし、料理の知識なんて無い。まあ、レストランに行けばなんとかなるかな。

「こっちだよ、レイカ」

 僕達は近くのレストランに入る事にした。席につくとメニューが置いてあるので、ポトフを探してみる。

「ポトフ無いね‥」

 メニューには1つだけ載っている。

「ポテトandビーンズ」

 これってメニューなのか?

「うわあ‥美味しそうな料理だね♪」

 レイカは瞳を輝かせ、期待に胸を膨らませている。

「ポトフは品切れみたいだよ‥ごめんね」

「いいよ♪それより早く食べようよ!」

 僕らはポテトandビーンズをそれぞれ一つずつ注文すると、しばらくして料理が運ばれてきた。

「これがポテトandビーンズ‥」

 大皿に塩茹でされたポテトが丸々二つと、インゲン豆の缶詰をそのまま出しただけの簡素な一品だった。

 美味しくなさそう‥これじゃスラムの食事と大差ないよ。

 高貴なLadyにはとてもお薦め出来ない‥そうだよね、レイカ?

「ユージン食べないの?」

 レイカはモリモリとポテトにかぶり付いている。

 ジーザス‥僕が恋した女性はお芋の貴婦人だったよ。

「ユージン‥私の事をイモ女って思ってるでしょ」

「そんな事思ってる訳ないよ!ただキミの大きなお尻がポテトみたいにゴツゴツしてるなって‥」

「グサリ」

 ハハハ‥ジョークだよ

 彼女の正確無比なナイフスローが僕の額に突き刺さっていた。

「ご馳走でした♪」

 結局レイカはポテトを二つとインゲン豆の大半を食べてしまい、僕はインゲン豆を3粒だけ食べさせて貰えた。

「これは躾なのよ、悪さする飼い犬にはしっかり罰を与えないといけないわ‥理解できた?」

「はい‥」

 彼女を怒らせると怖いようだ。

「さて、ユージン?私達はドレイ契約を結んだわけだし、当然その内容を把握してるわよね?」

「いや‥僕はどうすれば良いの?それに奴隷制度はNorth Unionで禁止されてるはずだよ‥」

「それは私も知ってるわ、奴隷制度は許されないし、聖典において廃止されるべきよ。ただ奴隷制度と私が言うドレイは別物よ。」

「どういう事?」

「首輪を着けてるよね、触ってみて」

 首輪は苦しくない程度に緩めてあるが、外す事は出来ないようだ。

「それは戒めよ」

「戒め?僕は罪なんて犯してないんだけど‥」

「人はね生まれながらに罪を背負って生きているの。大半の人達はその事実に気付いていないけど、ある時ふと理解するものよ。」

「よく分かんないや」

 僕はオーバーアクションで首を竦めてみせる。

「つまりドレイとは私の為に尽くす‥それだけ理解して貰えばいいわ」

「分かったよ‥とは軽々しく言いたくないんだよね」

「どういう意味なの?」

「口先だけでは何とでも言える‥本当に理解してるなら行動で表したいんだ」

「ふーん‥そうなんだ、流石傭兵だね」

「傭兵みたいな危険な仕事しか無かったんだ。別に好き好んで、選んだ訳じゃないよ」

「そっか‥君も大変だったんだね」

「ねえ‥ユージンはどうして移民してきたの?」

「それは‥あんまり話したくないかな」

「どうして?」

「あんまり昔の話はしたく無いし‥それに希望が持てる話をしたいんだ」

「希望か‥うん、そうだよね♪」

 彼女らしい曇り一つ無い笑顔に戻ってくれた。

「じゃあこれからどうしようか?」

「そうね‥まずは、街の中を見て回らない?」

「良いね、折角来た街だし、まずは色々情報を集めよう」

 僕らは店の外に出て街の中を探索し始めた。店の入り口に看板が置いてある。

「バウンティハンター募集中‥ユージンは賞金稼ぎに興味ある?」

「うん、正規の戦いが無い間は賞金稼ぎで食い繋いでたよ。」

「そっか‥じゃあ後で受けてみても良いかもね」

 そんな事を話していると、後ろから規律正しい声で呼び止められた。

「君たちは見ない顔だね‥もしかして移民?」

 振り返るとカウボーイハットの保安官が話し掛けている。

「はい、僕達はさっき到着したばかりの移民です。」

「それなら入国審査を受けてもらおうかな。この国は基本的に自由の国だが、当然責任も伴うよ。着いてきなさい」

「はい‥行こうか、レイカ」

 僕らは保安官の後を追って、事務所に到着した。

「げへへお姉ちゃんだあ‥こっちに来なよ」

「気にしないで、奴はさっき引き渡された賞金首で柄が悪いから」

 保安官事務所は小さな牢獄も併設されていて、郡の警察のような機能を果たしている。

「この部屋に入って」

 保安官の執務室らしく、Galahan Stateの国旗が誇らしげに掲げられている。

「さて本題に入る」

 保安官は落ち着いた動作で、リボルバーを抜き僕の心臓に狙いを定めている。

「なんのつもりですか?」

「貴様は傭兵だろう?しかも魔術弾を操るガンマンだな‥」

「何故そんな事が分かるんですか?」

「ガンベルトから魔力を感じる‥何しに私の街に来た?」

「僕は‥敵じゃありません」

「そうよ‥ユージンは悪者なんかじゃないわ!」

「貴婦人‥お静かにお願いします。私にはこの街の治安を守る義務がある‥得体の知れない奴は排除する。」

「なら‥仕方ない!」

 魔力限定解除‥サイコラグ!

 ガンベルトから供給された魔力を纏わせたリボルバーを解き放ち、保安官のリボルバーに狙いを定める。

 僕の方が速い‥先に撃てる!

「駄目よ!ユージン!」

 彼女の鬼気迫る声に、引き金から指先が離れる。保安官は僕を捉えたままで、引き金を引かない。

「何で撃たないんですか?僕がリボルバーを抜く瞬間に撃てましたよね?」

「サイコラグか‥中々ユニークなスキルだね」

「何故分かる‥」

 僕は魔力を使う際に言葉を発しない。相手に能力がバレるのを恐れているからだ。

「周囲を観察してごらん」

 保安官の言う通り部屋の四隅を見てみる。

「あれはカメラか?」

 発売されたばかりのライカ製のポラロイドカメラが部屋を囲むように配置されている。

  おそらく魔術を検知できるように改造されているのだろう。

「そうか‥ここは取調室なんですね。」

「そう‥魔術師の能力を暴く為の部屋だ。そして何よりも大事なのは、君が私の武器に狙いを定めてい事だよ。少なくとも殺しを楽しむ奴では無いようだ。名前を聞こうか‥白銀のガンマン」

「ユージン=マクガヴァン」

「私はジャクソン=スミス。ようこそ合衆国へ」

 常に悪意と対峙するには知恵と勇気が必要ということなのかもしれない。保安官は自らを危険に晒して、僕の能力を暴いた。

「もし僕が銃を撃ったら、どうするつもりだったんですか?」

「保安官は凶弾に倒れていたかもね」

 嘘だ‥この人はそんな博打は打たないはずだ。

 きっと何が起きても無事になる仕掛けを隠してるはずだけど、深く詮索するのは止めよう。

「あっカメラがあるね♪パシャパシャ♪」

 レイカは部屋の隅に置いてあるカメラの存在に気付いたらしく、楽しそうにエアシャッターを切っている。

「御婦人のお名前は?」

「私はレイカ=プレシェットだよ」

「Missレイカですね、驚かせてごめんね」

 ジャクソン保安官は構えたリボルバーを下ろして、腰のガンベルトに収めた。

「さて、お二人に忠誠の誓いを立てて貰おうかな」

「忠誠の誓い?」

「ユージンは私に忠誠を誓っているよ、ほら♪」

 レイカは首輪を掴んでグイと引っ張ってくる。

「首苦しいから!優しくして‥ご主人様」

「…個人の性趣向には理解を示すよ」

「誤解されてるから!レイカ!」

「はーい…」

 首輪から手を離してくれた。

「話を元に戻すよ。今から宣誓文を朗読するから復唱して下さい。」

「もし断ったら?」

「そうだな…故郷に帰って貰うしか無いね。」

 いつだって選択する権利なんて無かったし、心にも無い事を話すなんて日常茶飯事だ。

「保安官に従います。」

「では宣誓します。私はここに宣誓する。私がこれまで市民であった外国の国家、または主権に対する忠誠を完全に放棄することを宣言します。聖典と法律に支配され、真の信仰を果たします。国内外のすべての敵に対抗するために武器を所持して自由と独立を守ります。神よ、我々を導いて下さい。」

「先生…覚えられません」

「ごめんね、紙を渡すからこの通りに読んでね」

「ありがとう♪」

 僕らは紙を見ながら、忠誠の誓いを朗読した。

「これでセレモニーは終わりだよ」

「次に永住権について説明します。永住権を得るためには、国家に奉仕してもらう必要があります。」

「奉仕って具体的には?」

「手段は問われないけど、君は傭兵だから戦いで活躍すれば良いかな。この国には未だに聖典と法律に従わないアウトローが沢山居てね。彼らを取り締まる為に賞金首の制度があるんだ。」

「バウンティハンター…さっき看板で募集してたよね。」

「まずは賞金首の確保依頼を受けて貰おうかな。国家の依頼を沢山達成すれば、永住権を得る事が出来る…どうかな?」

「永住権か‥」

 新大陸で生きていくには国籍が必要だ。身分が保証される事は人間らしく暮らす上で大切な事だと思う。

「レイカはどう思う?」

「私も賛成だよ♪お仕事を沢山頑張ろうね♪」

「決まりのようだね。」

 保安官は机から書類を取り出して、僕らに渡してきた。

「ソイツが君の獲物だ」

 WANTED バリーレイダーズ一味

 罪状 駅馬車強盗

 生死は問わない

「分かったよ、この依頼を引き受ける。」

「奴らはこの先のドゥラホーン渓谷をアジトにしているから、そこへ向かってくれ」

「はーい♪じゃあ行ってきまーす♪」

レイカは首輪の鎖を掴んで、スキップしながら僕を引きずっている。

お読み頂き、ありがとうございます。


毎週金曜日の19時に続きをアップロードするので、良ければお楽しみください♪

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