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第一章 過去編 第二話 2043年新潟市に到着

浜風に優しく撫でられながら隊商は旧時代に国道と呼ばれていた道を進んでいく。周辺には畑が見え、少し先に町の防壁が見えて来た。


「でも謙さんって3級っすよね?よくブン太を使役できましたね」

「それこそ運だよ。その時その場所に偶然俺が居た事が切っ掛けだからなブン太の場合はさっき言った幼生の飼育とかではなくある種の奇跡だよ」

「くぅ~。くぅ~」


(ん?よっぽど風が気持ち良かったのかブン太は寝ちゃったみたいだな。)


風がそよぎブン太の頭の羽が左右に揺れる。突然ビクンッっとブン太が反応した。

『ね、寝てないヨ!』

『お、おう。そんな事わざわざ伝えなくていいぞ』

『ちょっとウトウトしてただけだヨ』


凛々しく勇ましい横顔を謙信に向け、正面から見た顔はどこか抜けてて、とても可愛いく見える。今は手乗りサイズのブン太だが戦闘時には大型化し、狂暴極まりない暴威を奮う。魔素を利用した攻撃にも長け、更に近接戦闘も状況によってはこなす遠近共に可能な聖獣である。


「優斗も経験積んで3級から2級に上がる頃には従魔の一匹も連れているかもしれないな」

「まじっすか?!うーーっし気合入ってきたー!」


 探索者は探索者見習いから始まり、一定の功績が認められると探索者として等級が与えられる。等級は5等級から1等級まであり、最上位は一等級である。


優斗はまだ駆け出しの5等級である。要領良く死なずに行けば10年もあれば3等級に成れるだろう。2等級には運が必要だし、最上級である1等級になるには運以外の要素が必要になるだろう。謙信は現在3等級だが年齢的にも丁度良いと本人は思っている。

新潟市市民ギルドが認める2等級になる機会が無かった訳ではないが2等級になった事による世間のシガラミを考えると2等級以上は新世代に任してのんびり生きる事を選んだのである。


「探索者で一番大事な事は死なない事だぞ」

「うっす!」


新潟市が近づいてきた頃、新潟市の大門を見てソワソワとした優斗が背嚢から魔素計測器を出した。


防壁の大門にいる警備隊が此方を伺っているのを確認して謙信も背嚢のポケットから魔素計測器を出し指を当てて起動してみる。


========================

長野謙信 43歳

 

体内魔素容量:375

 魔素チャージ 85,760


探索者登録:3等級

特殊技能:なし

一般技能:なし

備考:魔獣オウギワシを従属


========================


 ◇◆◇


魔素計測器は第一開発段階(2029年初頭)では個人認証機能と明暗での体内魔素量の表示しか出来なかった。

それから17年経った現在では、新世代の特殊技能により技術革新が進み、今の様な文字と数字での個人情報を入力し、表示する事が出来るまでに進化した。機能に関しては全国共通とは言い難く、内部機能に関しては各都市毎の研究機関が独自に研究し少しずつ全国に普及している状況である。

大きさは旧時代で言う小型のスマフォサイズである。

体内魔素容量、魔素チャージ以外の入力操作は基本的にギルドでしか行えない。設定として非表示機能がある為、非表示にしたい情報は本人以外は見る事ができない。但し犯罪歴などは非表示にする事ができない。


簡単に表示内容について説明しておくが、体内魔素容量――戦闘力とも考えられている――とは身体能力、精神力、知能指数などの和を数値化した能力値と考えられている。だが、数値の正確な上昇方法は確立されていない。

例に挙げるなら魔物を1体討伐して1~10上がる時もあれば訓練、勉強などをした翌日に10上がる事もある。

一般成人男性で100~200であり謙信の375と言う数値は少し高い程度である。


謙信は3等級クラスでは下位だが、後に語る技能取得の影響で下がっている為、26年も探索者をしている割に数値は低いと言える。技能の表示には義務がない為、非表示機能はあるが謙信は自らの技能をギルドで入力して貰ってはいない。入力すれば技能に応じた任務が受けれるが43歳で得た能力で、今更英雄に成ろう等とは思っていない。




特殊技能とは一部の者が特殊な条件下で覚醒した時に得たスキルである。特殊技能は持っている事が稀である。


一般技能とは新世代が必ず親から継承した物や、鍛錬する事に因って得る事が出来るスキルである。一般技能の中には意識して発動するアクティブ技能もあるが、基本的には常時発動されているパッシブ技能が一般的である。


個々の取得条件は解明されていないが特殊技能、一般技能共に取得する事が可能とされている。一般的な取得方法は魔窟探索時に入手する技能玉ランダムスキルからの入手や特別な条件下での覚醒等である


但し、技能を入手する際には体内魔素を技能に応じて消費する為、体内魔素が取得技能に必要な容量に満たない場合は取得が不可能である。


技能取得の際の体内魔素消費については追々語る事になるだろうが、聡明な者なら気づいた事だろう。スキルを取得すると体内魔素容量が下がる為、運動能力や五感が弱体化(能力の劣化)するのである。


技能玉と呼ばれている物を使って技能覚醒を行う場合、使用前段階までの行動や能力が適用される事が多い為、一芸に秀でた専門職になる為に敢えて弱体化覚悟で使用するのが一般的とされている。その為、スキルを集め戦場で無双する事は現在不可能とされている。但し、親からの継承や今後の研究によっては特殊な技能を多数持った英雄が生まれるかも知れない。


属性と言うモノはあるが、一般的にまだ解明されていない。


魔素チャージとは旧時代で言う貨幣である。魔物を倒す事によって得た魔石――魔物が体内に貯めた魔素袋の中にある透明な石――を魔器(魔素測定装置)に翳す事により魔石に溜まった魔素を魔器に移す事が2046年では可能となっている。又、魔器同士での移譲も可能で暗黒時代に突入し、魔素研究で最も最初に重要視した研究分野でもある。


魔素チャージ開発以前は地域差もあるが基本的に物々交換や都市に於いては木札の様な物が使用されていた。魔素チャージの実用化により、生き残った人類は貨幣経済を再生し魔物への反攻を開始したのである。




◇◆◇


「やっと着いたっすね」


守衛に停車させられた隊商は臨検に来た守衛に各々魔器を提示し身分確認を行っていく。部分的に革で覆われたオレンジ色の制服を来た守衛が謙信に気づき、向け近寄ってくる。


「謙さん、随分久しぶりだなぁ!」

「おぉ、勇仁か。見違えたぞ?!」

「はは、謙さんにそう言われると何だか照れ臭いよ」


勇仁と呼ばれた青年は見た目20代後半であろうか、微笑みながら謙信に挨拶をして来た。

彼は謙信にとって数少ない友人の一人であり、元中目道場の門下生である。


「そうだ、勇仁。こいつを紹介しておこう。新人探索者の五十嵐優斗だ」

「って事は中目道場門下か。俺は勇仁だ。よろしくな!」

「は、はい。よろしくお願いしまっす!!」

「謙さん、今夜時間あるなら一杯どうだい?可愛い後輩におごってやりたいし」

「別にいいぞ。今日はこの後、優斗の魔窟探索に必要な物を買い揃えて朱鷺亭で寝るだけだったからな」

「了解。それじゃ、後で朱鷺亭に顔出すよ」


了承を得るや勇仁は早く仕事を終わらすべく他の護衛探索者の身分確認に向かった。


「ったく相変わらずせっかちな奴だ。ちゃんと仕事しろよ!」


謙信の元を離れて行く勇仁に小言を言いつつも自分が弥彦村に帰った後に新潟市に残していく優斗が早くも味方を得た事に安堵を覚える謙信であった。


「優斗良かったな。あいつは短気な所もあるが芯は優しいやつだから何か困った時には相談してみると良い」

「了解っす!」

「お前もここで自分を試すなら一人でも多く信頼できる仲間を増やしていくんだぞ」

「はいっす!仲間かー。やっぱり一人じゃキツイっすよね?」

「まぁな、一人で出来る事ってのは限度があるからな。勇仁は信頼できるから今夜聞いてみたらいいさ」


一人で出来る事の限度と自分で口に出した時、過去の情景が脳をゆっくりと流れていく謙信は昔を思い出し少しだけ悲しい気持ちになった。


「謙さん、どうしたんすか?」

「ん?なんでもないさ。さぁて明日の魔窟に備えて買い物行くぞ」

「は、はいっす!」


臨検を終えた商隊が門を抜け浜浦橋を渡って行くと数分後に新潟市に到着した。



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